|
「沈黙は野蛮だ」 「たかが電気のためになんで命を危険に晒さなければ ならないのか」…坂本龍一
鎌田 慧(ルポライター)
大江健三郎さん。そして坂本龍一さん。おふたり続けての計報は、打 撃が大きい。 坂本さんは福島原発事故の前の年、千駄ケ谷の区民会館でひらかれた 六ケ所村(青森県)の核燃料再処理工場への反対集会に参加された。 だから、原発反対でも「筋金入り」だった。 わたしの友人の高橋悠治氏(作曲家、ピアニスト)が、若いときから の坂本さんと懇意だったこともあって「さようなら原発」運動の呼びか け人をお願いして、2011年7月、代々木公園での「さようなら原発」17 万集会で発言して頂いた。大江さんや瀬戸内寂聴さん、沢地久枝さんも 同時に登壇した集会である。
「NO NUKES」のTシャツを着た坂本さんは、この公園は42年 前、18歳の時、日米安保改定反対の集会以来と言って「たかが電気のた めになんで命を危険に晒さなければならないのか」。「福島の後に沈黙 しているのは野蛮だ」と続けた。被曝労働者や子どもたちの健康と命に 想いを馳せた発言だった。 坂本さんは発言するだけではなく、若い音楽家たちに呼びかけ、豊洲 PITでの「NO NUKES」コンサートを主催されていた。 まだ71歳。この早すぎる他界は認めたくない。ニューヨークとはメー ルで交信していたが、こちらの老齢をいたわる優しいメールだった。 まだまだ活躍してほしかった。 (4月4日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
.. 2023年04月05日 05:32 No.2726001
|