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■--北海道新聞の社説紹介
++ 山崎久隆 (社長)…1496回          


  規制委の運転期間延長容認に対して
  「規制委の独立性見えぬ」と批判
 (たんぽぽ舎共同代表)

 2月15日付け北海道新聞の社説を紹介します。

----------
「原発60年超容認 規制委の独立性見えぬ」より

 規制委が運転開始30年を超える原発は最長10年ごとに安全性を審査して
認可する新しい制度の概要を決めた。
 運転期間の規定は、規制委が所管する原子炉等規制法から削除する
法改正案も了承した。経済産業省所管の電気事業法に移す。
 60年を超える運転を容認する大転換であり、推進側の都合に合わせて
ルールを変えるものだ。
 採決では委員5人のうち1人が反対した。重要な案件を多数決で決め
るのは極めて異例である。
 原発の活用に向けて今国会で運転延長に関係する法律の改正を目指す
岸田文雄政権と、歩調を合わせるかのように決着させた。
 東京電力福島第1原発事故後に推進と規制を分離した制度を根幹から
揺るがす。
 規制委の決定は拙速だと言うほかない。
 決定を再考し、改めて委員全員で議論を重ねるべきである。
----------
 規制委の議論の在り方についても批判しています。(山崎)
----------
 反対した石渡明委員は、会合で「科学的、技術的な新知見に基づくもの
ではない。安全側への改変とは言えない」と指摘した。
 石渡氏は地質学が専門で、原発の審査では地震や津波など自然災害対策
を主に担当している。
 山中伸介委員長は、福島事故後の審査で焦点となっている分野の専門家
である石渡氏の指摘を、根本から意見が食い違っているとして排除した。
これでは科学的な議論を尽くしたとは言えまい。
 賛成した杉山智之委員も「せかされて議論してきた」との認識を示した。
山中氏は記者会見で「法案のデッドライン(締め切り)があるので仕方
ない」と述べた。
 岸田政権が十分な議論のないまま運転期間延長を打ち出し、法改正を
急いでいることが圧力になっていたのではないか。
 規制委もこうした日程ありきの姿勢では、老朽原発の審査において電力
需給逼迫(ひっぱく)などを理由にした推進側の圧力から独立性を保て
るのか、疑問を禁じ得ない。
.. 2023年02月19日 07:29   No.2692001

++ 山崎久隆 (社長)…1497回       
 山中氏は法改正などの根拠に、運転期間に関して「意見を述べる立場
にない」とした2020年の規制委見解を度々持ち出す。
 厳格に審査をするので延長するかどうかは関係ないとの考え方だが、
科学への過信ではないか。石渡氏が「しっかり規制すると言っても、具
体的になっていない」と批判したのももっともである。
 原発の規制行政を進める上では国民の幅広い理解が不可欠だ。規制委
は丁寧な説明と審査を尽くしていかなくてはならない。
----------引用終了

 こうした、きちんとした批判に規制委は答えることなく、規制委は2月
13日の月曜日に臨時の会議を設定し、挙手採決という今までしたことのな
い方法で方針を決めてしまいました。
 「社説」に引用されているとおり、石渡委員の主張は、運転期間は「利
用政策との見解」は作成経緯にも疑問があり、金科玉条のように使うべき
ではないとして、運転期間を炉規法から外し電気事業法に移すことにも安
全側に立った政策変更でもないし、そもそも炉規法から外すことは規制委
の守るべき法律である。科学的な理由、より安全側に変える、はっきりし
た理由がない限り、変更すべきではないとの意見でした。
 どちらの意見がまともかは、論を待つまでもないことです。

.. 2023年02月19日 07:37   No.2692002
++ まっさき千尋 (中学生)…48回       
「思い起こせ3・11 産地は訴える−原発政策の大転換をめぐって」
 | この国は滅びるね 非常識極まりない再稼働
 | マイナーでも農業が大事
 | 村上達也前東海村長に聞く (上)(2回の連載)
 └──── (『農業協同組合新聞』客員編集委員)

《取材のねらい》
 岸田首相は、安倍元首相の国葬を国会や国民の声を広く聞くことなし
に、閣議決定だけで実施し、世論の反発を招いた。岸田首相は12月に入
り、臨時国会を閉じてすぐに同じ手法で原発政策の大転換を図ることを
決めた。さらに、巨額防衛費の財源を増税で賄う方針を独断で決定し、
国民や野党だけでなく、自民党内でも大炎上した。
 東京電力福島第一原発事故から11年余り。未だに国の緊急事態宣言は
解除されず、原発周辺の7市町村には人が住めない地域が残り、避難民
が3万人近くいる。国の賠償基準は昨年暮れに見直しされたが、補償問
題は依然として片付いていない。汚染水の処理問題も、これからが本番だ。

 この福島の事故以来、政府は原発再稼働などに慎重な姿勢を示し、
原子力は「依存度を低減する」、「新増設や建て替えは想定していない」
というのが、従来の政府方針だった。
 あの安倍内閣ですら原子力政策の転換をしないで来たのに。
 それなのに、国会でまともな審議をせず、原発事故で被害を受けた現
地の声も聞かず、岸田政権は唐突に今回再稼働の推進や新設などと転換
に踏み切った。

 では、政府は原発政策をどのように変えようとしているのか。その新
たな方針は、果たして政府の意図通りに進むのか。また、被害を受けて
いる福島県や、原発を抱える隣の茨城県の生産農家や自治体関係者らは
どう受け止めているのか。両県の生産農家や自治体関係者、識者の声を聞く。

前東海村長村上達也さんに聞く

 この国は滅びるね 非常識極まりない再稼働
 マイナーでも農業が大事

.. 2023年02月19日 07:49   No.2692003
++ まっさき千尋 (中学生)…49回       
− 東海村は我が国の原子力発祥の地です。日本原子力研究所ができた
時、村上さんは中学二年生。当時、原子力に対してどう考えていましたか。
村上:戦後の打ちのめされた貧しい農村地帯で、輝かしい未来を夢見て
いた。大学を卒業し、村に戻ってきた時は、もう原子力の街になってい
た。村政自体が原子力政策推進のためのものに化していることに抵抗感
は持っていたが、あまり関心は持たなかったな。

− 村長になったのが1997年9月。2年後にJCOの臨界事故が起き、
犠牲者が2人出ました。その時の対応はどうだったんですか。
村上:出張先から急いで戻り、すぐに対策本部を立ち上げた。放射線の
値が下がらないというので、近くの人を避難させなくてはと考えました。
しかし、村単独で決めるのはどうかと考え、県や国に問い合わせたけれ
ど対応があいまいだったので、責任は自分で取る、私の首をかけるから
と腹を決め、周辺350メートルの人たちを舟石川コミセンに避難させました。

− JCOの事故が契機で、原子力に対する考え方ががらり変わった。
村上:村長になる前に旧動燃(現日本原子力研究開発機構)の火災事故
が起き、原子力の安全対策が村政の最重要課題だと思っていました。
村長になる時、前任者から原発の3号機、4号機を作れというのが引き
継ぎ事項だった。私は、東海村に必要なのは研究所だと思っていたので、
あまりいい顔をしなかった。そこへJCOの臨界事故が起きて、原子力に
対する考えが変わった。

− JCO事故の時、損害はどうだったんですか。
村上:農産物が特にひどかった。売れなくなった。臨界事故のニュース
が流れたので、東海村だけでなく、茨城県全体が被害を受けた。農産物
だけでなく、他の商品にも影響が出たね。 (下)に続く

(『農業協同組合新聞』1月25日号より了承を得て転載)

※筆者の先崎(マッサキ)さんの「サキ」のつくりは(立)です。
  メールの制限のため、変更しています。

.. 2023年02月19日 07:58   No.2692004
++ 山崎久隆 (社長)…1500回       
小型モジュール原子炉(SMR)を導入する意味はどこにもない (下)
 | 「電力を安定供給できるわけでもない」
 | 「早く建設できるとは限らない」
 | 「使用済燃料問題は何も解決しない」
 | 「SMRは軍事技術である」
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

     (上)は、2/15【TMM:No4696】に掲載

◎ SMRだけで遠隔地や小規模の国に電力を安定供給できるわけでもない

 小型原子炉、例えば30万kW級の原発の場合、建設にかかる費用、運転
やメンテナンスにかかる費用は、100万kWの3分の1で済むわけではない。
 8.8万kWのモジュールをいくつも内蔵して稼働させるSMRの場合、
一つ一つのモジュールには通常の原子炉と同様の安全基準や安全設備が
必要なので、その分の費用がかかる。
 そのうえ運転中の原子炉は、遠隔地や小規模国の変動する電力消費量
に合わせて出力調整をしなければならず、SMRだけではいかなる地域
の電力も安定供給はできないため、安定化用の予備電源や補完電源設備
が必要になる。

 すなわち、安定供給を維持するためには、SMRと同程度の規模で、
火力などの代替発電システムが必須であり、その費用をSMRの導入・
維持管理費に計上すると、建設するべき設備は、SMR+火力または水
力等調整可能な電源となる。

◎ 軽水炉より早く建設できるとは限らない

 原発の建設のための審査には、立地選定・評価、環境影響評価、運転
した場合の供給計画などを立てなければならず、これらの時間はSMR
であっても変わらない。
 また、原発の全体構造を支える基礎工事や、冷却システムを海水冷却
とした場合の海水系の設計建設は軽水炉と変わらない。

 SMR建設が軽水炉より短くて済む可能性があるのは、既に建設され
ていた原発の設備を、その原発が廃炉になった場合に流用できるような
ケースくらいであるが、これは建設前の調査等、立地に関わる時間が短
縮できるかもしれない程度である。
 軽水炉の場合の圧力容器や格納容器、蒸気発生器や再循環系の取付な
どのところは短縮できるとしても、SMR固有の設備の建設、設置に関
わる時間が明確ではないため、早くなる保証はない。

.. 2023年02月22日 04:50   No.2692005
++ 山崎久隆 (社長)…1501回       
◎ 使用済燃料問題は何も解決しない

 原発である以上、使用済燃料の問題は残り続ける。
 この燃料体はおそらく軽水炉のそれよりも長期間、強制的な冷却シス
テムで管理しなければ危険である。
 SMRで長所とされる、燃料交換を少なくする運用をするには、濃縮
ウランの濃縮度を現在の4%程度から更に上げる必要がある。
 すると、体積当たりの発熱量が大きくなり、使用済燃料プールで長期
間保管し続ける必要がある。これを安全に貯蔵する方法は、現在のとこ
ろ確立していない。
 高温の燃料を長時間保管する技術は、リスクのあるプール保管以外に
現在は存在しない。安全に貯蔵管理する技術がないところにはSMRを
建設できない。

◎ SMRは軍事技術である

 現在、世界で最も多くの小型原子炉を運用しているのは米軍である。
 原子力空母、原子力潜水艦、原子力巡洋艦など、数百の原子炉を建設
し、運用してきた。
 しかしその多くは解体することも困難で、ハンフォードの処分場に貯
蔵されたままである。

 ソ連や米国では、原子炉部分をそのままの状態で投棄するか、あるい
は潜水艦に穴を開けて沈ませるなどの海洋投棄を行ったものさえあった。
 現在、米国ではハンフォードの廃棄物処分場に140基を遙かに超える原
子力艦船の原子炉がそのまま密封管理されている。

 SMRは高効率を目指せば高濃縮(20%弱)ウランを使わなければな
らない。このような高濃縮ウランは、現在は軍事用として扱われる。
 SMRはその構造からも、軍事転用をされると原子力動力艦のエン
ジン開発技術に直結するので、核拡散問題が発生する。

 実際に、現在原子力艦船を運用している国は核兵器国に限られており、
非核国ではドイツと日本が原子力船を建造し運用試験を行ったが、いず
れも失敗に終わっている。

 各国がSMR技術を世界中に輸出すれば、そのまま核武装を含む核の
軍事利用へのハードルを大きく下げると共に、地域の緊張を激化させる。
 日本でも原子力潜水艦を保有したがっている政党が存在していること
を考えると、極めて危険な導入への布石として、政府民間一体となった
SMR研究を進めることが考えられる。
 「原子力の平和利用」などは、いまや核戦力保有の「イチジクの葉」
程度の意味しかない。
          「脱原発東電株主運動ニュース」

.. 2023年02月22日 05:00   No.2692006
++ 先崎千尋 (幼稚園生)…1回       
「思い起こせ3・11産地は訴える−原発政策の大転換をめぐって」
 | この国は滅びるね 非常識極まりない再稼働(東海第二原発)
 | マイナーでも農業が大事
 | 村上達也前東海村長に聞く (下)(了)
 └──── 先崎千尋 (まっさきちひろ)
           (『農業協同組合新聞』客員編集委員)

− 3・11の時は、東海第二原発は大丈夫でした。
村上:奇跡的だね。あとでわかったんだけれども、日本原電は一週間前
に防潮壁を120cm高くし、津波より50cm高かったので助かった。

− 3・11の時、村長は陣頭指揮をしたが、一番困ったのはどういう
ことでしたか。
村上:電気は来ない。水道も久慈川の取水口や配管が壊れ、止まっ
ちゃった。道路もズタズタで車が走れない。ガソリンも買えない。
皆毎日の生活に困っていた。

− 村上さんは後で出た本の中で、「生かされなかったJCO事故の
教訓」と書いています。
 具体的にはどういうことを指しているのでしょぅか。
村上:日本の原子力政策の根本が狂っている。推進機関しかなくて、
規制機関がないことだ。
「ブレーキのない機関車を走らせている」と国と国会に文句を言った。
当時アメリカは原子力規制委員会があり、三千人のスタッフを揃えて
いました。

− 原子力は「国策」だと言われてきました。
村上:権力で「国策」と言って、批判を圧殺してしまう。その上、「日
本は科学技術大国」だと言い続けてきた。こういうのは「夜郎自大」。
自分がうぬぼれているだけで、科学精神のない国で原子力を推進してい
く恐ろしさ。これは日本人の特性だと思っている。

− 東海村は2000年に村の総合計画「とうかい21世紀プラン」を作りま
した。この計画は村民参加で作られましたが、その四本の柱は環境、福
祉、教育、農業でした。環境を柱に据えたのは熊本県水俣市で開かれた
環境自治体会議に参加したことがきっかけでしたね。
村上:水俣に行って、吉井正澄市長や水俣病患者らに直接会い、まちづ
くりの基本に環境を据えなきゃならないと目覚めました。

− 東海村で農業はマイナーな産業だが、それを柱の一つに入れたのは。
村上:農業は生命の根源だし、農業をやっているという精神、農業を
育てていく精神があれば、東海村も健全であり、万全であると思ったね。


.. 2023年02月25日 07:48   No.2692007
++ 先崎千尋 (幼稚園生)…2回       
− その延長としてファーマーズマーケット「虹のなか」を作った。今
では6億円近い売り上げになっています。
村上:観光客目当ての道の駅ではなく、そこに住んでいるじいちゃんも
ばあちゃんも自分の作ったものを売れる。買う人も近くの人。それが
ねらいだった。

− 日本原電の東海第二発電所の再稼働についてはどう考えていますか。
村上:再稼働させるなんてめちゃくちゃだと思っているんだけどね。
  会社はもう11年以上電気をまったく売っていない。それなのに会社
は残っている。
 民間だったらとっくに倒産している。それを他の電力会社が年に1000
億円も支援し、存続させている。10年以上も運転していない原発を動か
すとなると、これは怖いね。会社の中がカチカチになっている。車の
ハンドルでもそうだけれど、遊びがないと事故を起こす。
 さらに、周辺に100万人もの人が住んでいる。地震大国でもある。それ
を動かそうとするのは非常識極まりないことです。
 避難計画づくりも同じ。バカげたことを、カネと時間と労力をかけて
やっているなんて。避難計画なんか要らない。即刻廃炉にすれば済む
ことです。

− 最後に、岸田政権の原子力政策の転換についてお考えを聞かせて
 ください。
村上:私は岸田さんに、まず東日本大震災の時の原発事故についてどう
考えているのかを聞きたいね。
 地震列島で、しかも人口が稠密なところで原発を動かすことについて
はどうなのか、そういうものを何にも示さないで原発立国みたいなこと
を言うというのは、私は世界の笑い物だと思うな。
 国民の議論がなく、ウクライナ戦争に紛れ、目先のエネルギー問題の
ために原発を推進するというのは、自分のため、経産省の役人のためだ。
 岸田には常識がない。原発については気がおかしいのじゃないかとす
ら思っているよ。
 これだけ国民がなめられているのに、世論が猛烈に反発していないの
も問題。この国は滅びるね。
− ありがとうございました。

(『農業協同組合新聞』1月25日号より了承を得て転載)
 ※(上)は、2/18【TMM:No4699】に掲載
 ※筆者の先崎(マッサキ)さんの「サキ」のつくりは(立)です。
  メールの制限のため、変更しています。

.. 2023年02月25日 07:58   No.2692008
++ 山崎久隆 (社長)…1502回       
.稼働中原発は7基…川内2、玄海3、4、大飯3、4、高浜3、
 | 美浜3、(川内、玄海は九州電力、大飯、高浜、美浜は関西電力)
 | 関電は再稼働した直近3基の全てでトラブル発生
 | 2023年2月24日現在の原発稼働状況
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

電力会社 号機  状態  運転開始日 停止日 出力(万kW)
関西電力 美浜3 運転中 2022.09.03 82.6
大飯3 運転中 2022.12.18 118
大飯4 運転中 2022.07.17 118
高浜3 運転中 2022.07.26 87
高浜4 点検停止中 2023.01.30 87
四国電力 伊方3 点検停止中 2023.02.23 89
九州電力 玄海3 運転中 2022.12.12 118
玄海4 運転中 2023.02.07 118
川内1 定期検査中 2023.02.16 89
川内2 運転中 2022.06.11 89
合 計 10基 運転中7基  停止中3基    730.6/995.6

*運転開始日は営業運転開始の日なので原子炉起動の日とは
一月程度違いがある。
*運転可能な10基の原発のうち稼働中は7基(70%)、
 その出力は995.6万kWに対して730.6万kW(73%)
*関電は再稼働を計画した直近3基の全てで原子炉の起動前後で
トラブルを発生させ全てで遅れを出している。
 岸田政権の再稼働促進政策のあおりを受けているのではないか。
*高浜4号機では、1月30日午後3時21分、原子炉中性子束急減の
信号でスクラム(緊急停止)した。原因は不明。

.. 2023年02月28日 05:26   No.2692009
++ 山崎久隆 (社長)…1503回       
本日の「GX法案」の閣議決定に抗議する
 | 東電福島第一原発事故からわずか12年で忘れ去る
 | 原発にのめり込めば第二・第三の過酷事故は避けられない
└──── (たんぽぽ舎共同代表)

 東電福島第一原発事故から12年が経とうとしているいま、岸田文雄
政権が原発推進へと大転換を図ろうとしている。そのための束ね法案「
脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法
等の一部を改正する法律案」(以下、GX法案)を2月28日に閣議決定
した。

◎断じて認められない閣議決定

 原発を最大限利活用するために、原子力基本法、電気事業法、原子炉
等規制法、再生可能エネルギー促進法、原子力発電における使用済燃料
の再処理等の実施及び廃炉の推進に関する法律(旧「原子力発電におけ
る使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」から変更)、再生可能エ
ネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法の5本の改正を一つの改
正法案にまとめた「束ね法案」である。

 一つ一つの論点が分かりにくく、例えば再エネ特措法には賛成でも原
子炉等規制法には反対といった対応ができない。
 こうしたまとめ法案では、議論はほとんと深まらず、一括審議、一括
採決で数の暴力で押し切ってくる。これを果たして「わかりやすく説
明」などできるだろうか。もとよりそんなことは微塵も思っていないこ
とだけは良く分かる。

◎本来必要な対策がないGX法

 GX法案には原子力を除くと具体性は乏しい。
 例えば昨年発生した東電管内の電力ひっ迫騒ぎは、電力改革の失敗が
大きな原因であり、原発はほとんど関係なかった。今後発生する可能性
のある東西の電力需給バランスの欠陥に伴う電力ひっ迫を解消するに
は、何はともあれ東西の連携を強化し、例えば1000万キロワットほど連
携能力を構築すれば問題はなくなる。
 当面は、ピンポイントで東電と中部電力の間の連携を強化すれば達成
できるのだが、現在の計画のままだと2027年に300万キロワット規模に拡
張できるだけである。
 それこそ国費を投じて速やかに建設し、その費用を電気料金から回収
すれば良いだけのことだ。しかしGX法案にはそうした具体的な対策は
ない。

.. 2023年03月01日 04:45   No.2692010
++ 山崎久隆 (社長)…1504回       
◎原発の危険性だけが具体化する

 そして法案の本命は、原発の再稼働促進と更なる運転期間延長だ。
 現在の40年+20年でも十分危険なのに、さらに「長期運転停止期間」
なる概念を作り上げ、それを足して運転期間を引き延ばすという。

 一例を挙げる。
 東海第二原発は震災の日に止まった。辛うじて過酷事故にはならな
かったが、津波により一部の海水ポンプが浸水したことから、もっと
高い津波、例えば福島第一原発に襲来した規模のものが襲っていたら全
電源喪失にもなりかねなかった。
 その原発は、2018年11月27日で運転開始から40年経っていた。ところ
が運転延長20年を規制委が許可したため、現時点では2038年11月27日ま
で運転可能になっている。

 しかし安全対策工事などは未だ完成していないだけでなく、地元の6
市村とは運転の合意はないうえ、14市町村が策定することになっている
原子力防災計画は9自治体で策定されていない。
 このような原発を動かすことはできない。そのまま2038年を過ぎれば
廃炉になる。

 ところがここで新たな「長期運転停止期間」を追加するとしたら、あ
と11年以上も運転期間が延びる。今も動いていないので、日々伸びてい
る。運転期間が確定しないのである。
 今後再稼働をしたら、その段階から27年は運転可能だと考えられるのだ。
 老朽原発を使い倒すことが、いかに危険なことか。
 安全を犠牲にしても原発を動かす、これのどこが「(福島)事故への反
省と教訓を一時も忘れず」(GX実現に向けた基本方針より)などと
言えるのか。

◎安全を最優先するには廃炉しかない

 そもそも、運転期間を40年と制限したのは原発の安全規制を最優先す
るためだった。そこに20年の延長を認めてしまったことが、安全低下に
繋がるとして厳しい批判が規制委に集まった。
 震災前も原発の運転はおおむね60年を限度としてきた。しかし40年目
にさしかかった福島第一原発1号機がメルトダウンし爆発した。
 その後の新規制基準により、これまで24基が廃炉になった。

.. 2023年03月01日 04:53   No.2692011
++ 山崎久隆 (社長)…1505回       
 延長申請をしても通らないと考えたか、対策工事に莫大な費用がかか
りすぎるため断念したのか、おそらく両方だと思われる。しかし一定の
役割は果たし、危険な老朽炉を廃炉にすることができた。
 しかし4基の原発が運転延長申請をして、全てが許可されている。
 これが安全規制を侵食している。
 これに加えて更に不定期に運転期間延長が可能になるとしたら、規制
をしていることにはならないのである。
 法案は廃案にするべきである

 原発の再稼働だけでなく、再処理工場の稼働も改めて推進するとして
いる。
 さらに高レベル放射性廃棄物処分についても、新たな仕組みで自治体
に押しつける方法を見いだそうとしている。
 これらを強権的に進めようとする姿勢には、強く反対する。

◎ 規制と推進が分離されず、一体化されようとしている。
 規制委員会では、これまで5人の委員が一致することが前提で様々な
決定がされてきたが、運転延長に規制委が関与しないとの方針には石渡
明委員が反対を表明したが、多数決(4対1)で押し切った。

 現在では規制庁のトップ3人が経産省から異動してきていた。
 また、昨年7月には委員会ではなく規制庁の役人が経産省側と打ち合
わせという名の意見交換と実務面のすりあわせが密かに行われていた。
 これらは規制委側に問題とされることもなく、そのまま新・新規制基
準の策定会合が現在行われている。

 このような推進側に取り込まれた規制委は、存在価値さえ失っている。
 このような体制で危険な原発を止めることなどできようもない。
 直ちに法案を廃案とするべきである。

.. 2023年03月01日 05:01   No.2692012


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