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水に流す思想を排除 福島第一原発事故の核・汚染水を太平洋に捨てない方策あり 沈思実行(132) 鎌田 慧
◎福島原発事故で発生した核汚染水が、太平洋の大海原に放出されよう としている。第一原発用地を埋め尽くした、一千個以上のタンク内、130 万立方mもの汚染水を、東京電力は敷地内から海底に穿ったトンネルを 通じて排出する計画だ。 おもな放射性物質は「ALPS」(多核種除去設備)で取除いて「処 理水」とする、と言い繕っているが、トリチウムなどはそのまま放流す る。汚染水は昼となく夜となく、発生しつづけている。
◎これから30年以上放出しつづけられる。トリチウムはベーター線核種 だから、ガンマ線測定では検出できず、燃焼などの前処理が必要だ。 だから消費者には検出できない。漁業関係者には根強い批判があるの だが、国は「風評被害」の補償金を支払うという。 しかし、環境悪化はカネで解決できない。
◎マーシャル諸島をはじめとする、太平洋諸島でも不安が強まってい る。日本漁民だけの問題ではない。加害者が根源的な悪を水に流して 解決した、というのは不合理だ。
◎昨年12月。「これ以上海を汚すな!市民会議」の国際シンポジウム( オンライン)で米・エネルギー環境研究所長のアージャン・マクジャニ 工学博士は、海洋や生態、核物理などの専門家と東電の公表データーを 解析。 放出する水が安全というには、サンプリング量も監視する放射性物質 の種類も少な過ぎる。「生態系への影響調査の不備や、海洋放出ありき で他の有力な代替案が十分検討されていない」と指摘。 「あらゆる選択肢を考え、リスクを最小限にする方法を科学的に検証 すべきだ」と述べた(「東京新聞」ウェブ版)。
◎国家や企業の行為によって、多数の被害者が泣き寝入りするのは、 民主主義社会ではありえない。 「黒い雨裁判」で広島地裁判決(20年7月)は、放射線被害の認定 は、「影響を否定できない状況にあったことが示されれば十分」とした。 核汚染水放出は30年を超えて行われる。30年後に判断するのではな く、放出はせず、安全に留め置く方法を考えるしかない。 (週刊「新社会」2023年1月25日1292号 8面より了承を得て転載)
.. 2023年01月28日 10:05 No.2675004
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