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海外では、ワークプレイス・インシビリティという職場での非礼な対人逸脱行為の研究がされています。その行為とは、例えば、不快な冗談のネタにする。自尊心を傷つけたり、失礼なことを言う。相手の話を遮って自分の意見を述べたり話をする。無視したり、質問に答えないというような言動を指します。
「対人逸脱行動の分類からみた職場不作法」(櫻井研司著・日本大学経済学部准教授)では、研究論文を織り交ぜながら職場不作法を「加害者の攻撃意図が必ずしも明白ではないが,社交的規範に反した職場での非礼な対人逸脱行為である」と定義しています。
例えばある労働者が、特定の同僚に対して不適切な冗談や見下した言動を繰り返す。共同作業の貢献を認めない。重要な職務情報を伝達しない。などという行為を行った場合、職場不作法に該当します。
そして、このような比較的軽度な対人攻撃は、上司にわからない。法による規制がない。暴力行為やセクハラと比べて加害者の罪悪感が薄い。といった特徴を有するため、高い頻度で起こる傾向があります。
職場不作法の問題は頻度の高さだけではありません。職場不作法は、対人関係の増悪を招き、暴力などの深刻な職場の対人問題へ発展することもあります。また、チーム内で起こる職場不作法が上司に報告されることは稀なものの、円滑なコミュニケーションを阻害し、チームの生産性を低下させます。
相手を冗談のネタにする時、発する側はジョークやユーモアのつもりで、相手を傷つけたり攻撃したりする意図はないと自分では思っているのですが、実際には、相手や周囲にダメージを地味に与えているのです。
櫻井氏が株式会社OKANと2020年に実施した「人材定着・職場推奨度とその要素についての共同調査」では、インシビリティの経験頻度が離職リスクを大幅に増加させる結果が見られたとのことです。
統計学的に、インシビリティの経験頻度が5段階評価で1段階高まるほど離職意図が高い「ハイリスク群」になる可能性が2.17倍に高まると報告されています。職場で冗談、冗談という会話が聞こえた時は要注意です。
.. 2022年12月20日 07:08 No.2652001
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