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トマホーク500発購入
鎌田 慧(ルポライター)
「敵基地攻撃能力」と口走ってしまった。すぐに「反撃能力」と言い 換えた。 露骨な言い方を和らげる話法というよりは、本質を隠すマヌーバー( 大衆操作)。11月下旬になって「政府有識者会議」は、「我が国の反撃 能力の保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠」との報告書を 岸田首相に手渡した。 そのあと首相は大手を振って「反撃能力は抑止力」というように なった。 敵基地攻撃能力は、そのものズバリ、直截(ちょくせつ)的な表現だっ たが、これでは憲法ギリギリの「専守防衛」の枠を跳びだす。そこで 知恵者が「反撃能力」との糖衣剤。
なにしろ、政府有識者会議は元駐米大使や元防衛次官などのほかに、 読売新聞社長、日経新聞顧問、元朝日新聞主筆などのマスコミ人で構成 されている。 「侵略」が「聖戦」、「退却」が「転戦」、「敗戦」が「終戦」、 「臨時工」が「非正規社員」。現実の悲惨を言い換える報道が歴史を 突破してきた。
「敵」のミサイル基地をたたくために導入されようとしているのが、 米軍需産業が製造する巡航ミサイル「トマホーク」。棍棒(こんぼう)に 石を括(くく)りつけた戦斧(せんぷ)が語源だが、いかにも恐ろしい。 当面500発購入する。誘導する宇宙衛星も数10基必要になる。10兆円 以上に倍増する防衛予算で賄われる。 日本は平和国家をやめ、戦争強国に変貌する。戦争進備を止めよう。 (12月6日「東京新聞」朝刊23面「本音のコラム」より)
.. 2022年12月08日 05:12 No.2642001
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