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軍事大国化進める岸田政権を批判する (上) 日米安保のNATO化許してはならない 「死せる安倍、岸田を走らす」
山口大学名誉教授 纐纈 厚
◎ 軍事大国化は安倍の遺訓なのか
安倍の遺訓とばかりに、岸田政権下で軍事大国化が急ピッチだ。 その有様は、言うならば「死せる安倍、岸田を走らす」の感がある。 安倍政権時代から現在まで、日本の軍事大国化は三段階に分けること ができる。
第一段階は集団的自衛権行使容認と新安保法制による「戦争のできる 国家日本」への転換、第二段階は安倍が「ダイヤモンドセキュリティー」 と呼んだ「日米豪印戦略対話(クアッド)による多国間軍事同盟の本格 起動、第三段階は防衛費倍増や敵基地攻撃能力の保持、さらにはクアッド と北大西洋条約機構(以下、NATO)との接合による「アジア版 NATO体制」の構築である。
最終的には、NATOプラスインド太平洋同盟による対中国・対ロシア 封じ込め軍事戦略の立ち上げが意図されていると見て良いだろう。 従って、現在は第二段階から第三段階への途次にあると言える。 これら諸段階は直線的に進むというより、重層的な動きとして立ち 現れる。 これら全ての段階で日本の防衛政策は、アメリカの軍事戦略の枠組み の中で設定され、政策化される。 そしてロシアのウクライナ侵略戦争によって、この段階の展開に拍車が かかっている。
現段階での注目点は、防衛省が8月31日に提出した2023年度予算の概算 要求で、5兆5947億円を計上したこと。 同額は、本年度当初比3.6%増に相当する。 加えて、金額を明示しない100項目もの「事項要求」を盛り込んだ。 そのうえで年末にかけて増額幅が決定されていく段取りとなる。 経常費に1兆円規模の増額となる可能性がある。 要するに、6兆5000億円前後となる計算だ。
今年3月、防衛省防衛研究所が公表した「東アジア戦略概観2022」 は「現在の比率と中国の国防費の今後の伸びを考慮すれば、3分の1の 水準を維持する防衛費の水準は10兆円規模になるという考えもあり 得る」(同書241頁)と記述する。 中立的な立場にあるべき公的な研究機関が、様々な議論が起きている なか、防衛予算の増額を後押しするような記述は問題である。
.. 2022年10月06日 07:39 No.2587001
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