|
原発を撃つな? 師岡カリーマ(文筆家)
遅ればせながら、昨年調査報道サイトTansaに掲載された、中川七海氏 による「双葉病院置き去り事件」を読む。 福島原発事故の直後に避難が難航し、命がけで救出に奔走した人々の努 力も空しく、近隣の病院の患者や介護施設の入居者45人が亡くなった事件 を刻々と追った、強力なルポルタージュだ。 災害時、そこに原発があることで生ずる巨大な負担と犠牲。毎日のよう に報道されるウクライナのザポロジェ原発の危機的状況からもわかるよう に、戦場も然(しか)りだ。 防衛相は、日本の「周辺には相当数の弾道ミサイルが開発・配備され、 ひとたび発射されれば極めて短時間で我が国に到達」との危機感のもと、 「反撃能力」も視野に入れた防衛力強化の重要性を強調した。防衛費も大 幅に増える。 そういう「厳しい安全保障環境」を前提としながら、その国土に原発を 増やすという矛盾に、私はどうしても納得できない。 過去の戦争を反省し、専守防衛を徹底し、近隣国との平和的外交に砕心 し、何も悪いことをしていない日本にミサイルを撃ち込んでくるような非 常識な国でも、原発をよけてくれる良識は期待できるのだろうか。 第一、 ミサイルを撃たずとも原発に工作員を送り込まれてサボタージュされたら? 「だから抑止力だ」の便利なひと言で、そんな不安も一蹴されそうで 不安だが。 (9月10日東京新聞朝刊23面「本音のコラム」)
.. 2022年09月11日 09:08 No.2569005
|