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探査機キュリオシティー、 | 大小の「事故」に見舞われながらも表面を調査 | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その458 └──── (地球物理学者)
あとから打ち上げた火星探査機「インサイト」が有名になったが、 その陰で「キュリオシティー」が探査を始めてから10年たった。 ともに米国NASA(航空宇宙局)が打ち上げたものだ。 インサイトは2018年11月に火星のエリシウム平原に着陸。火星の赤道 に近くて比較的平坦な場所だ。同機は地球物理学的な探査を担い、 ナゾだった火星の中心には溶けたコアがあることが分かった。地震計を 使った火星深部の調査はインサイトの独壇場だった。
これに対してキュリオシティーは地質学的な表面の調査で、やはり 赤道付近にある「ゲールクレーター」に着陸した。 最大の成果はゲールクレーターに数千万年以上にわたって液体の水が あったことを明らかにしたことだ。液体の水は有機物などとともに、 生命に不可欠な物質だ。このクレーターにはかつて湖が存在し、湖の 大きさは時代によって変化していたことが分かった。
そのほか、この10年間で、岩石と砂のサンプルを41個分析し、火星の 衛星フォボスとダイモスの太陽面通過を観測したり、将来の有人火星 探査に備えて火星表面の放射線量を測ったりした。
インサイトの寿命は太陽電池を電源にしているが埃のために3年余だ が、他方、キュリオシティーは原子力電池を使っているから10年たって も使えるので、あと3年の延長が決まった。この原子力電池はプルト ニウムが崩壊するときの熱を利用するものだ。 原子力電池を積んでいるとはいえ、プルトニウムの崩壊が進むに つれて1日に活動できる量は最初よりも短くなった。このため探査機が 毎日使う電力量を計算し、なるべく複数の作業を並行して行うように している。
キュリオシティーは10年間で約29キロメートル走行し着陸地点から 標高にして625メートル登った。10年では少ないと思うかもしれないが 人間がまだ知らない土地ではこんなものだろう。
.. 2022年09月09日 05:16 No.2568001
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