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日本独自の建築技術 | 「心柱制振」スカイツリーにも応用 | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その453 └──── (地球物理学者)
五重塔や三重塔は背が高く、いかにも地震に弱そうだ。だが、五重塔や 三重塔の木塔は全国に500以上あるが、火災で消失したことはあっても、 地震で倒れたことはない。1995年の阪神大震災でも多くの家屋やビルが倒 れたが、兵庫県内にある15基の三重塔は1つも倒れなかった。県内には五 重塔はなかった。 これは地震に何度も遭った経験から来た建築の知恵と言うべきものだ。 じつは塔の中心にある「心柱」(しんばしら)がまわりから浮いた作りに なっている。この浮いた心柱が、地震や強風に遭ったときに塔の揺れを抑 える方向に働くのだ。 心柱は檜(ひのき)のことが多いが、五重塔は高さがあるので5本、6 本継ぎのこともある。 心柱の周囲は吹き抜けになっていて、階段さえもなく、各階の庇(ひさ し)とは直接つながっていない。心柱が他の構造と接しているのはいちば ん上の屋根の部分だけである。塔の中心に心柱があり、頂部に長い相輪が 取り付けられている。ある階の庇は下の階の庇に間接的に乗っているだけ で、構造は階ごとに独立している。つまりこれら木塔は「緩く」作られた 構造物なのである。 五重塔の総重量は1000トンを超える。各階の庇は上にいくほど、小さく 軽くなっている。このことは地震対策に大事な役割を果たしている。大き な地震が来ると、重量が違うために各階がずれて揺れる。各階は地震のと き、しばしば逆向きに振動し、各階の揺れは塔全体としては打ち消しあう のである。 この木塔に使われた建築技術は、朝鮮半島にも中国大陸にもない日本独 自のものだ。仏像、仏具、陶磁器など多くのものが仏教とともに朝鮮半島 から渡ってきたが、木塔の建築技術だけは受け継がなかった。仏教は6世 紀後半に伝わったといわれているが、頻繁に地震が起きる国には、建築技 術としては別の建築様式が採用されたのだ。 世界一古い木造建築物は奈良・法隆寺だ。1300年前に建てられた。
.. 2022年07月24日 07:49 No.2529001
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