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佐渡金山の悲惨 鎌田 慧(ルポライター)
新潟県の佐渡金山が脚光を浴びたのは、それまでユネスコの世界文化 遺産登録への推薦をためらっていた岸田首相が、安倍元首相など右派 議員の声をよく聞いて、つまりは決断したからだ。 長崎県の軍艦島(端島)が「明治日本の産業革命遺産」として登録 される際も韓国から物言いがついた。 戦時中、鉱山、道路建設、鉄道敷設などの難工事に植民地朝鮮半島 から労働者を強制連行して働かせたのは事実だ。 歴史の遺産を語るならその悲惨も反省をこめて伝える必要がある。 過去を抹殺して自分たちの栄光だけを顕彰するのは、傲慢にすぎる。 アウシュビッツの空間に立つと、犠牲者の苦痛ばかりか新しい時代に むかう祈りを感じることができる。 30年ほど前、佐渡金山はまだ操業していた。 最先端の切り羽で若い2人の労働者が、削岩機で穴をあけ爆薬を 詰める作業をしていた。坑外に、連行されてきた無宿人たちの墓が あった。ほかにたくさんの罪人もいた。 朝鮮人は最初「募集」だったが、のちに「徴用」などになった。 佐渡では1000人以上が働かされていた。 わたしがお会いした勤労課外勤だったという人物は「特高」のような 役割だったと言った。 在日朝鮮人史に詳しい関西大非常勤講師の塚崎昌之氏は、徴用は徴兵 制度を利用して拡大されたと「わだつみのこえ」(153号)に 書いている。 (2月8日朝刊23面「本音のコラム」より)
.. 2022年02月09日 05:32 No.2399004
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