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終戦直後、まだ占領軍が来る前に、身も心も打ちひさがれてぼろぼろになった日本人に、小さな明かりを灯し、生きる勇気を与えた論文は、この石原莞爾論文以外にないでしょう。読売報知も大阪毎日、毎日新聞も、東條内閣を批判し、憲兵と特高にマークされながらも正論を曲げなかった石原莞爾に、敗戦国日本人の心構えや救いを求めています。
また憲兵も特高も石原莞爾を監視していましたが、それでも石原莞爾は東亜連盟の運動方針を、語り続けました。8月30日、石原莞爾は午後二時の列車で上野を発ち宇都宮についた。翌31日は雨になった。東亜連盟関東地区大会は宇都宮の三楽園で開催され、雨の中を「敗戦は神意なり」と声を大にして講演しています。
青森生まれで、終戦後は石原莞爾の講演を、関西、四国、九州で同行した白土菊枝はのちに『将軍石原莞爾』を出版しますが、この日は高崎市から宇都宮に出て、石原莞爾の講演を筆記した。「当日の会場は聴衆の熱気で、外壁は勿論、窓枠や扉まで撥ね飛ばされんばかりに、ウオーン・ウオーンと唸り声でも飛び出しそうな塩梅でした」と語っている。
以下は白土氏の記述です。この日、石原は講演の冒頭で、「負けてよかった!」といって続けた。「勝った国は今後益々軍備増強の躍進をするであろうが、日本は国防費が不要になるから、それを内政に振り向ける。戦争がもたらした国土荒廃は10年で回復する」
「戦争術の発達は、間もなく今の軍備も、役立たずにしてしまう。大掛かりな軍隊組織もいらなくなる。科学兵器の発達は、今後の原子爆弾のように飛行機で運び、投下すると急いで逃げて帰らぬような手間のかかるものではなくなる。小さなマッチ箱程度の爆弾、域は体内に隠してしまえるキャラメル位の大きさになる。たった一人が敵地深く侵入し、主要個所を爆破するというような戦争になるから、武器の製造も個人の町工場で十分なのだ」
そして、「どうです皆さん!何も悲観することはありませんよ。後のカラスが先になる。敗れた日本が世界史の先頭に立つのですよ!」と予言し励ましている。「町工場で武器製造できる」ことといい、「小さなマッチ箱程度の爆弾」といい「10年で国土は回復する」予言といい、「後のカラスである日本が経済大国になったこと」といい、敗戦後の日本は予言者石原莞爾が語ったとおりになったのです。
.. 2022年01月17日 05:09 No.2382001
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