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農業も漁業も盛んで風光明媚な島の人々を追い立てた地震と火山 | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その416 └──── (地球物理学者)
スペインもポルトガルも欧州本土には活火山はない。大西洋にポツンと 離れた、それぞれの領土の島にあるだけだ。これらの島々はマグマの上に ある火山島なのである。 9月からスペイン領のカナリア諸島・ラパルマ島のクンブレビエハ火山 (標高2426メートル)が噴火を続けている。 1200軒あまりの家屋や教会が溶岩に押しつぶされていて、もっと増える のではないかと怖れられている。85000人が暮らす島だが、幸いいまのとこ ろ人的な被害はない。 溶岩の通り道を変えようとコンクリートの障害物を置いた。だが溶岩の 比重はコンクリートよりも大きいので簡単に浮かせて動かしてしまった。 噴火は、1949年と1971年で、半世紀ぶりだった。首相と国王夫妻が相次 いで訪れた。国にとっての大事件なのだ。 噴火には火山性地震の予兆があった。1週間前から群発地震が発生して 数千回が発生。最大でマグニチュード(M)4近くの揺れが記録された。 この予兆があったから6000人以上の避難が間にあった。噴火後は、地震が 減って、噴火前の3日間は1日100回以上だったのが、噴火後は1日数回 になった。 同じく大西洋の孤島、アゾレス諸島もマグマの上にある島だ。こちらは ポルトガル領だ。アゾレス諸島は7つの島からなるが、どれも火山島だ。 島には地震観測所があり、私が行ったとき、日本式の大森式地震計が動 いていた。 じつは、アゾレス人はアゾレス諸島よりも米国に多い。現在の島民数の 4倍、100万人にもなる。島では食えなくて流出した人々がいかに多かった かを物語っている。 なぜ、気候も良く、農業も漁業も盛んで風光明媚なこの島では暮らせな かったのだろう。 これはたびたび噴火に悩まされたせいだ。島の人々を追い立てたのは地 震と火山だった。ここには地震も噴火も多い。なかでも1957年から続いた 激しい地震と、すさまじい噴火のおかげで、多くの人は島に見切りをつけ ざるを得なかった。
.. 2021年11月07日 06:00 No.2331001
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