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人を幸せな気分にする物質「オキシトシン」を投与することによって人にどのような影響があるかという実験は、世界で実施されています。2005年英科学誌ネイチャーに発表された実験は、以下の通りです。 健康な男子学生を対象に、受託人への「信頼感」をもとに、投資額を決めさせる投資家ゲームを行ないました。対象は、オキシトシンスプレーを嗅いだ者と、偽薬を嗅いだ者の2グループです。結果、オキシトシンスプレーを嗅いだ者は多くの金額を投資する傾向にあり、偽薬を嗅いだ者は、少額しか投資しない傾向が見られました。 受託相手を人間ではなくコンピュータにした場合は、2グループとも少額投資しか行わなかったのです。この結果より、オキシトシンスプレーを嗅いだ者は、相手を信頼したことで大金を投資し、偽薬を嗅いだ者は相手を信頼せず慎重になったことで投資額を少なくしたことが分かりました。 また、両者ともコンピュータ相手には少額の投資になったことで、オキシトシンは投機欲を高めてはいないことも分かりました。つまり、オキシトシンを投与すると人への信頼感が高まるという結論が出ました。オキシトシン経鼻スプレー製剤は既に欧州では認可されており授乳促進の目的で使用されています。 日本では約10年前から、オキシトシン分泌量と病気との関係性や、投与治療の可能性が研究されています。オキシトシンは、9アミノ酸からなる小さい生理活性ペプチドです。視床下部の神経細胞で合成され、分娩時の子宮収縮やその後の母乳分泌などを制御する末梢性の作用をもつほかに、ストレス緩和や社会性などを制御する中枢性の作用も示します。 このことから「愛情ホルモン」と呼ばれることもあります。「オキシトシンの分泌を制御するタンパク質を発見!」東京理科大学ニュース資料より。人間も動物的本能によって、基本的には他者を敵対視することで身を守ってきた哺乳類です。 しかし、つがい、出産、愛着などの行動に関わるときには、体が自然とオキシトシンを生成し、相手を敵対視せず接近行動が可能になると見られています。人間は、自分の思考、情動、目的を他者と共有したときにもオキシトシンが放出されることで、心地よさや安心できるつながりを感じるようです。
.. 2021年10月18日 08:20 No.2316001
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