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■--東電本店に核物質防護に係るマニュアルがない…など
++ 山崎久隆 (社長)…1186回          


  柏崎刈羽原発のID不正使用と核物質防護設備の損傷放置について
 | 9月22日の東電報告書に見る重大な劣化と安全神話の発現
 | 東京電力に核物質を扱う資格はない (その2)(4回の連載)
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

5.東電本店に核物質防護に係るマニュアルがない…

 報告書には重大な事実が記載されている。本店に核物質防護に係る
基本マニュアル等が存在しないというのだ。
 各発電所や現場管理施設において「それぞれの発電所長の権限で制定
した核物質防護規定運用要領や、これに基づく出入管理要領や警備
要領等」があるだけ。
 ではそれはいったい何を元に事業所のマニュアルは
作成されているのか。
 基本文書がなくては、本店原子力管理部を始めとした法務担当及び
規制委員会とのやりとりをする本店勤務職員には管理規程の内容や
運用を認識する機会がない。

 つまり核物質防護上の問題が生じた場合、「基本に立ち返る」元が
ないので、3.11のような事態になった場合に、当時、本店原子力
業務部が現場の状況を把握できなくなったことと同種の事態が生じる。
 3.11の経験があるにもかかわらず、このような体制が続いてきた
深層原因を掘り下げるべきだが、そうした視点での調査はされていない。
 なぜ、そのような体制が作られてきたのか、それは本店では発電所の
統制をする気がないからだ。する能力もないのだろう。
 東電体質とは、こうしたところにも現れている。

6.お題目だけの核物質防護活動

 報告書には「核セキュリティ文化の醸成に係る活動」などと書かれて
いる。
 しかし、計画立案や行動計画を策定し報告することしかされていない。
 これらに例えば設備の劣化などの具体的な報告事項やセキュリティ
システムの機能喪失などを想定した実施計画などが制定されていた
とは考えにくいので、今回のような事件が起きた場合、これらを
見ても、生じた事態への対処が正当なものかどうかまで判断できる
ような存在ではないと思われる。
 行動計画とはいったい何か、計画には核物質防護の劣化、破壊という
事態にどのように対処するかを網羅しているのか、そうした実態が
報告書には記載されていないので、何のために何を調べたのか良く
分からない代物になっている。
.. 2021年10月06日 05:05   No.2303001

++ 山崎久隆 (社長)…1187回       
7.本店での核物質防護活動主体の欠落

 また、核セキュリティ対策部会の活動について本店では「原子力・
立地本部長を委員長とし、核セキュリティに関する活動が有効に
行われていることを確認」とされているが、これは会合が開催頻度は
年1回以上開催されたという以上に、どのように「有効に行われて」
いたか不明だ。
 また、「核セキュリティ管理に関する重要事項、管理状況、
活動計画と実施状況、その他」としているが、ここに侵入監視システム
の劣化について報告があったのか。具体的な記載がないため全く
不明だ。本店のこの組織も機能していない。

8.経営トップには報告が行かない規定?何のための組織か

 さらに、重大なことが書かれている。
 「核物質防護業務に関するレビュー・報告」(報告書18頁、以下同じ
報告書の当該箇所を示す)において「運用要領において、社長および
原子力・立地本部長に対して、不適合等の報告を行うことは規定されて
いない。」と記載されている。
 いかなる理由で経営層に伝えないのだろうか。

 「核物質防護業務は、職制および職務権限規程上、発電所の分掌と
され、業務に関する責任と権限は発電所長が有している。
 社長、原子力・立地本部長には、核物質防護業務に関する具体的な
定めはなく、社長は会社業務の執行を統括、原子力・立地本部長は
本部内の統括および総合調整と規定されている。」という。

 ここでも、3.11の教訓が全く生きていない。
 原発の安全性にかかわる重要事項について報告されていなかったと
抗弁し、刑事裁判でも株主代表訴訟でも責任を免れようとした勝俣恒久
元会長以下の旧経営陣の主張と何ら変わりない。

 核物質防護の劣化、破綻は、即原発の安全性低下、重大事故や破壊に
つながるから、めずらしく規制委も事実上の運転停止命令をだした。
 これは福島第一原発事故前の、地震や津波情報が経営層に届いて
いなかったことになっていることと同種の体制が必要だったのに、
それに備えていないとの判断だ。

.. 2021年10月06日 05:16   No.2303002
++ 山崎久隆 (小学校低学年)…7回       
 もっとも、実際には3.11前に津波対策の欠落は経営層にも認識
されており、防潮堤の建設や運転を止めての対津波対策は認識され、
経費も想定されていたが。
 ところが東電は、そうした対策をしていない組織が、3.11以後
10年も維持されていた。この一点だけでも原発を動かす資格はない。

9.これは知らないことにすれば責任を逃れるための方便

 といっても、実際には経営陣は3.11以前に福島第一原発の津波
対策の不備を認識していた。
 刑事、民事裁判でこれらを追及され、証拠や証言を突きつけられても
頑として認めようとしていないが、被告人質問などで実は認識していた
ことが分かってきている。
 一連の規定や事務分掌や取扱い手順などは経営層にとって「公表でき
ないことは社内であっても誰にも伝えない」といった規定を設けて、
責任の分散と回避を狙った姿勢に見る。
 そうした東電体質が問題を大きく深刻化させている。これは福島第一
原発事故の「廃炉作業現場」でも起きている。

.. 2021年10月06日 05:22   No.2303003
++ 熊本一規 (高校生)…51回       
中国電力が10月5日夜に
 | 調査(上関原発ボーリング調査)中断を発表
 | 中国電力代理人が新たに「和解条項」を持ち出すも
 | 「反論及び質問書」で論破されて破綻
 | 一般海域占用許可を出した山口県にも責任
 | 一般海域占用許可の再申請は当分なし
 | 連載「権利に基づく闘い」その24
 └──── (明治学院大学名誉教授)

◎ 中国電力(以下、「中電」)が10月5日夜にボーリング調査の
中断を発表しました。
 調査期間は3ヶ月(7月7日〜10月6日)もあるのに、最終日の
前日夜になって「中断」を発表するとは、実におかしなことです。
 最終日になって「調査期間の間、何もできませんでした」と発表
するのは恥ずかし過ぎるので、最終日前日の夜に「中断」とした
ものでしょう。
 2019年以来、中電は3回のボーリング調査を試みたものの、いずれも
何もできずに中断したことになります。
3回の調査中断を整理すると次のようになります。(注2)

◎ 2019年・2020年調査の論拠は、「2000年補償契約に基づいて補償
したので調査は適法」で、大瀬戸聰上関原発準備事務所長(注1)が
作成したものです。
 これは、「2000年補償契約の際に、2019年(2020年)のボーリング
調査実施を如何にして予測できたのか」等を質問項目とする反論及び
質問書(2019年12月16日)で論破されました。

 2021年の調査の論拠は、「2014年に裁判所で中電と祝島漁民が合意
した和解条項に基づき、祝島漁民には不作為義務(埋立や調査等を妨害
しない義務)がある」というもので、中電代理人が作成したものです。
 これも、「損失補償を欠いた違法な調査に対して不作為義務はない」
を主たる内容とする反論及び質問書(2021年9月10日及び10月1日)で
論破されました。

.. 2021年10月07日 05:06   No.2303004
++ 熊本一規 (高校生)…52回       
◎ 3回とも何もできないまま中断したことについては、一般海域占用
許可を申請した中電にも、占用許可を出した山口県にも責任があります。
 許認可等は公民関係(公共機関と事業者の関係)において出される
ものですが、民民関係(漁業者等の権利者と事業者の関係)において
違法性がなく、事業が確実に実施できることを確認したうえで出さな
ければならないのに、山口県が確認を怠って出したため、中断する
羽目に陥ったからです。
 中断は、中電にとってのみならず、山口県にとっても落ち度
なのです。(注3)

 新聞報道(10月6日朝日新聞)によれば、中電は「一般海域占用
許可の再申請を県にすぐに出す予定はない」とのことですが、論拠を
失ったのですから当然です。
 もしも、中電が再申請するようなことがあれば、今度は、中電の
責任のみならず山口県の責任も厳しく問う予定です。

注1:大瀬戸聰氏は、文書作成後、異動になったため、
   正確には「前所長」。
注2:上関原発ボーリング調査に関し、中電の出した文書、及びそれら
   に対する「反論及び質問書」は、筆者のホームページ
   ( こちら )に掲載しています。
注3:山口県の落ち度は、一般海域占用許可の「利害関係人」を共同
   漁業の免許を受けているだけでボーリング調査によって何の損失
   も受けない山口県漁協としていることに起因していますが、
   この点については、2021年10月1日付け反論及び質問書を参照。

.. 2021年10月07日 05:13   No.2303005
++ 山崎久隆 (社長)…1193回       
下請けの改善提案を握りつぶす「福島の二の舞」…など
 | 柏崎刈羽原発のID不正使用と核物質防護設備の損傷放置について
 | 9月22日の東電報告書に見る重大な劣化と安全神話の発現
 | 東京電力に核物質を扱う資格はない (その3)(4回の連載)
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

10.職員向け核物質防護活動の貧困と劣悪さ

 報告書でおそらく唯一、実態を正しく伝えていると思われるのが、
職員啓発、活動実態の記述だ。
 「核セキュリティ文化の醸成に係る具体的な活動として、原子力部門
において、主に以下の取り組みを実施している。」として、「
核セキュリティポスターの作成と掲示(本社、発電所)」「経営層に
よる核セキュリティ文化醸成活動のメッセージ発信(四半期毎)
(原子力・立地本部長、発電所長、原子力運営管理部長による持ち回り
で実施)」「防災安全Gからの核セキュリティ情報の発信
(四半期毎)」「eラーニング(年1回)」としている。

 これらは一般企業や国、地方自治体のセキュリティ部門においても
実施されている程度のことであり、特に前半3つには意味がない。
 これが不十分であることは、日常化している情報漏えいやシステム
侵入事案で明確になっている。
 そのため物理的分離(いわゆるクラウド化)や二要素認証(2つの
全く異なる方式によりシステムに接続できるセキュリティ方式)など、
対策を求められている。
 一方、原発の核セキュリティが「その程度のトレーニング」(実質
eラーニングだけ)しかされていないことに驚く。
 なぜ、このレベルで問題ないと考えていたのか、理解不能だ。
 本来ならば、核物質防護訓練の実働試験を、原発の過酷事故を想定
した緊急事態訓練と同等以上のレベルで抜き打ちで行う訓練が必要な
性質のものだ。

11.内部監査に欠陥

 報告書には「内部監査」について記載があるが、最も頻繁に行って
いるのは「不適合発生時にグレード、水平展開(未然防止処置)要否、
リスク、不確実性を評価。
 その後完了までのモニタリング」を週一回ペースで実施していると
ある。
 この監査でIDカード不正使用問題がどのように扱われたのか具体的
な記述はない。
 また、侵入監視システムの劣化についても、報告がどのように扱われ
ていたのか不明だ。

.. 2021年10月09日 06:54   No.2303006
++ 山崎久隆 (社長)…1194回       
 「原子力特別監査」もあるのだが、それについても記載がない。
 つまり、内部監査をすり抜けていると思われるが、その経緯が全く
記載されていないため、原因に迫れていない。
 これでは調査になっていないし、監査も機能していない。
 なお、「原子力特別監査」の経過と結果についても、本店経営層には
どのように伝えられていたのかについて明確ではない。

 ※原子力特別監査とは、内部監査室の原子力監査グループが実施して
いる監査。
 20年度は「原子力運営管理部」に対して「柏崎刈羽原子力発電所
再稼働及び安定運営に向けた技術・知識の維持向上への取り組みに
関する業務、並びに文書管理や教育・訓練等について、品質保証活動を
適切に実施しているか確認した。」
 指摘事項としては「マニュアルに規定されている文書の一部において
承認・保管が実施されていなかった。
 対応状況:承認を得ていなかった文書は、会議で審議・了承されて
いたことから、当該文書を会議の議事録とともに保管することとした。
 今後,同様の不適合が発生しないように当該文書の承認・保管に関
するプロセスを見直す予定。」と記載されている。(東電2020年度上期
内部監査室原子力監査グループ活動状況報告より)

12.IDカード管理とシステムの欠陥

 報告書では、これまでは「IDカードを個人単位で収納する」ことを
推奨するに留まっており、施錠管理の要求はなく、また、IDカード
不正使用を想定した対策も含まれていない。」としている。これでは
無管理状態と同じ。
 今時、セキュリティ対策が必要な部署で、こんなずさんな管理が
行われてるところはないだろう。

.. 2021年10月09日 07:01   No.2303007
++ 山崎久隆 (社長)…1195回       
 また、ID不正使用について35頁には驚くべき事が記載されている。
 「生体認証エラーの発生状況事案が発生した2020年9月を含む、
2020年7月〜9月の柏崎刈羽における生体認証エラーの発生状況に
ついて調べたところ、本事案があった6、7号機Bゲートは1ヶ月
あたり約64,000人の入域者があり、生体認証エラーは1ヶ月あたり400件
以上発生している。この場所を担当する社員見張人にとって、生体認証
エラーは平均すると1日に10件以上発生している日常的な事象だったと
推察される。一方、生体認証再登録に関しては号機別データが無いが、
全体で月平均45件発生しており、1日1件程度発生していたことが
分かる。」

 これでは生体認証システムとしては成立していない。欠陥であり、
既に破損しているといえるレベルだ。
 このため安易にIDカードの「再登録」へと流れてしまい、今回の
不正使用職員に対しても、他人のカードに、持ち込んだ職員のデータを
上書きする「再登録」処理がされてしまった。
 このカードをそのまま正規の持ち主のロッカーにこっそり返した
ため、翌日、正規の持ち主のカードが不正とされてエラーが出て事件が
発覚していた。
 装置の故障が何故これまで改善、改修等が行われなかったのか。
 「なお」以降に理由らしきことが書かれているが、事実として改修
していなかったいきさつを述べているに過ぎず、改修が遅くなっても
良いとした判断の根拠が書かれていない。本当の理由ではなく間違った
判断経過を記載しても、原因究明にはならない。

13.下請けの改善提案を握りつぶす「福島の二の舞」

 報告書35頁には「本事案を含め、IDカード写真と本人の照合に
失敗し、他人のIDカードでAゲート通過を許してしまった事例が13例
確認されている」「2015年10月に事例が発生した際には、原防所長(
警備担当業務を請け負う「原子力防護システム株式会社」の現地所長)
から防護管理GM(東電の役職名でグループ・マネージャー、課長級)
へ「委託見張人の人定確認は人間工学上の限界にきているとの認識を
持っており、生体認証(機械システム)導入が必要」との提案が
なされた。」との記載があるが、この「現場からの提案を無視した」
ことが大きな問題として新聞にも報じられた。

.. 2021年10月09日 07:09   No.2303008
++ 山崎久隆 (社長)…1196回       
 改善提案は5年も前にされたらしいが、これが放置された理由は何か。
 「ただし」以降にそれらしきことが書かれているが、これもまた「
個人の感想レベルの話」であり、理由になっていない。
 「予算の関係上、システム導入時期は不明確、それまでは過去の
対策を徹底する」は、個人の感想レベルの話であり、組織の決定事項
ではありえない。
 組織として判断する、しない(この場合は判断しないを)選択した
理由を明らかにしていない。

 これは、東電が津波対策の必要性を認識していた2008年当時、防潮堤
などの建設工事にかかる費用見積もり等を握りつぶして土木学会原子力
委員会に対策の必要性評価を丸投げし、2011年を迎えた時の状況と酷似
していてぞっとする。
 これでは福島の教訓どころか何度も同じ間違いを犯しているという
ことだ。
 また、この提案が、どのレベルまで伝えられていたのか。「上司に
伝えられず」となっているだけで、誰までで止まっていたということ
すらわからない。こうした東電体質が如実に示されている。

.. 2021年10月09日 07:16   No.2303009
++ 山崎久隆 (社長)…1197回       
東電の入域管理や核物質防護担当者もずさん、
 | 柏崎刈羽原発の再稼働は不可能に
 | ID不正使用と核物質防護設備の損傷放置について
| 9月22日の東電報告書に見る重大な劣化と安全神話の発現
 | 東京電力に核物質を扱う資格はない (その4) (了)
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

14.IDカードの定期更新をしていない

 報告書40頁には「IDカードの写真が古い、不鮮明等で人定確認しにく
いことがあった。」との記載がある。およそ考えられない記述だ。
 この種のIDカードは一般に年に一度以上のサイクルで更新すべきもの
だが、そうなっていないのはあまりにもずさんだ。
 そのため劣化した写真で本人確認ができなくなったという。いやしかし
そもそもIDカードの写真がそう簡単に劣化するだろうか。まさか紙の写
真を張り付けたり挟んだしてはいないだろうね。全くいつの時代の話だろ
う。こうした行為は、簡単に偽造されたり盗まれたしてしまう。もはやセ
キュリティシステムとは言えない。

15.IDカード不正使用の聞き取り調査がひどい

 個人がどのように考えて行動したのかの報告も想像を絶するものだ。
 「IDカード不正使用者:運転員A」の聞き取り調査の回答では、
「IDカードを紛失した事実を隠したかった。」「自分の行為の影響を軽
く考えていた。その時は重大さに気付かず、何とか引継に間に合わせたい
という思いで一杯だった。」とのことだが、紛失した場合、本来最初に考
えて対処しなければならないことは、自分のIDカードが盗まれ、誰かが
なりすまして入域し、核物質の摂取や発電所の破壊行為がなされるのでは
ないかとの懸念である。
 そういうことに思いが至らないから、事態はおかしな方向に進展してい
った。
 他の運転員へのアンケートでは、問題を起こした社員に限定されるかの
ような回答が多々あったようだが、おかしい。
 これは個人の問題ではなく組織的なリスク管理の問題である。
 社員教育の実態が露呈した結果ではないか、IDカードを紛失すること
が、如何に発電所のみならず市民を危険にさらすことになるかの、リスク
管理が全くできていない。やはり「そんなことは起きるはずがない」との、
安全神話がまかり通ってる。

.. 2021年10月10日 08:09   No.2303010
++ 山崎久隆 (社長)…1198回       
16.東電の入域管理や核物質防護担当者もずさん

 入域ゲートには下請けの原防職員以外にも東電の社員が見張人としてつ
いている。その人物は「東電運転員が嘘を言うわけがないと思いこんだ。」
と思ったのだという。しかし警備担当者は、そもそも性悪説に立たなけれ
ば警備などできない。たとえ総理大臣だろうと、入域許可証を持たなけれ
ば入れないとの姿勢で臨むのが警備担当者だ。
 また、防護管理GMは管理職にもかかわらず「Bゲート故障対応が何度
も発生し、都度修理対応していることは気にかけていた」としつつ、これ
自体が重大なセキュリティの劣化と捉えていなかった。設備の故障などは、
最優先で対処しなければならないのに、原防との契約上の問題が生じたり
したこともあってか、対処が全くできていない。東電の現場管理にも驚く
ほどずさんな対応が多発している。

17.防災安全部長も存在意義が問われる対応

 発電所での最高責任者と思われる防災安全部長は「所員に対し、核セキ
ュリティに関するメッセージを発信していたものの、現場の理解度や実践
状況まで把握できていなかった。」という。これではそもそも任務放棄に
当たる内容だ。
 発電所を運営して何十年もやってきて問題はなかった、といった安全神
話が蔓延している。 「現場の理解度や実践状況」などは、定期的に現場
に出て何人かにヒアリングを行っても把握できる。部長の確認行為が実施
されていない。
 東電社員の上から下まで、何ら責任のある対応を持たない体質は、昨日
今日醸成されたものではない。深刻な劣化は3.11以前から蔓延し、今
も継続中だ。

18.下請けへの圧力もまた…

 入退域警備は、原子力防護システム株式会社、通称「原防」の社員が行
っている。
 これを「委託見張人」と報告書では記載している。
 委託見張人は「東電社員に対して違和感があっても言いづらいという意
識がある。」「東電運転員から過去にクレームを受けたケースを記憶して
おり、遠慮があった。」と答えている。下請け軽視の姿勢が見て取れる。

.. 2021年10月10日 08:16   No.2303011
++ 山崎久隆 (社長)…1199回       
 こうした下請け軽視は、あらゆる安全リスクを生み出す元凶だが、それ
が福島第一原発事故を経てもなお解消されていない。
 労災事故の発生もこうした姿勢が背景にあることは多いと言われている
が、核物質防護の場面でもあるということは極めて深刻だ。
 社員教育で欠落しているからそうなる。これについては再発防止などで
も触れられていない。
 手順を守るといったところに内包されてしまっているのだとしたら大間
違いだ。

 また、別の委託見張人の答えはさらに深刻だ。
 「名前は知らないが、よく見かける東電運転員であると認識していたの
で、東電の制服を着たテロリストといった可能性は考えなかった。」(イ
ンサイダの存在の無視)。
 これを疑わなければ警備の仕事は務まらない。むしろ内部の人間がそう
した行為をするほうが多い。
 「制服にはIDカード記載と異なる当人の名前が刺繍されていたが、何
度か同様の状況があったため、異常と捉えなかった。」これこそが防護の
劣化代表例である。これを異常と捉えることは初歩的対処だ。

 「今回のようなケースで、協力企業の制服だったら、通過は認めず、社
員見張人に相談した。」こうした社員への忖度は大きな劣化そのもの。
 ここに「東電社員のIDがすり替えられて詐取されたのではないか」
(潜在的なアウトサイダの存在)といったさらに高次のセキュリティ劣化
を想定して、当該職員に確認をすることをしなければ、警備の仕事になら
ない。そうした意識づけがないことが問題だ。
 また、東電社員はこうした対応になることを見越して、名前の違うID
カードを所持し、自分の制服を着てゲートを通ろうとしたものと思われる。

19.柏崎刈羽原発の再稼働は不可能に

 この現状は、原発の再稼働どころのレベルではない。防護すべき核物質
が大量に保管されている柏崎刈羽の管理を東電に任せてよいのかといった
レベルの問題だ。
 再稼働以前に、現在の核物質防護体制を立て直せるかどうか、深刻な問
題であるのだが、その危機感さえ感じられない調査手法などについて、大
いに疑問がある。
 これについて公聴会を開催し、地元だけでなく東京などの消費者にも説
明をする機会を設けるべきである。
 いったいどのように理解を求めるつもりなのか。
 さらに追及していく必要がある。 (了)

.. 2021年10月10日 08:25   No.2303012


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