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■--アフリカ大陸分裂の証拠「地溝帯」
++ 島村英紀 (社長)…689回          


プレートがいずれ2つに分裂、紅海やスエズ運河に影響も
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その411
 └──── (地球物理学者)

 アイスランドの地割れを覗き込んだことがある。日中だったが、底が
見えない。人が落ちたら助からない深さだ。幅は数十センチメートル
から3メートルあまりだ。おそるおそる近づいたが、とても怖かった
のを覚えている。
 日本にはあり得ないが、プレートが生まれているアイスランドには
このような場所が多い。

 ところで、この初夏に、アフリカ・ケニア南西部で高速道路が突然、
損壊する被害が出た。地震のときに生じた地割れだ。地震は、それほど
大きなものではなかったが、地割れの幅は数メートル、長さが数キロ
メートルにわたって延びていた。
 幸い人も車も落ちなかった。だがこの長くて深い地割れは人々を
怖がらせるのに十分だった。
 日本でも、地滑りの現場などで地割れは見えることもあるが、
そもそもこんな長さで直線的に続いていることはない。

 ケニアには「地溝帯(ちこうたい)」と呼ばれる場所がある。
アフリカ東部を南北に3000キロメートルも走る帯だ。北の紅海から、
エチオピア、ケニア、タンザニア、ウガンダの5カ国にまたがる長大
なものだ。
 この地溝帯が生んだビクトリア湖などの湖もある。ビクトリア湖は
アフリカ最大の湖で、水面は7万平方キロメートルにも及ぶ。琵琶湖の
100倍もある広大なものだ。

 この地溝帯に沿ってアフリカプレートはいずれ「ヌビアプレート」と
「ソマリアプレート」の2つに分裂する。
 5000万年先には完全に分かれると考えられている。アフリカプレート
はアフリカ大陸だけではなく、その周辺海域をカバーしている大きな
プレートだから、紅海やスエズ運河も分かれて別のプレートに
なるわけだ。

 アフリカの地溝帯は、およそ3000万年前にエチオピア北部から
始まって、その後、南方向へ年2.5〜5センチメートルの速さで伸びて
いったと考えられている。
 分裂の動きそのものは人々が感じる速さではない。
 だが、新たな断層が形成されるときは今回のように地震や地割れが
起きて人々に知覚される。
.. 2021年09月16日 05:32   No.2288001

++ 山崎久隆 (社長)…1176回       
「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」
 | 約1000年前に発生した房総半島沖の巨大地震によって
 | 九十九里浜地域が浸水
 | 産総研の調査で確認された1000年前の巨大津波 (上)(2回の連載)
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

◎ 1000年前の巨大津波が九十九里浜海岸に

 2011年3月11日以後、日本の沿岸各地において津波堆積物に関する
調査が活発に行われるようになった。
 その成果の1つが、9月3日(日本時間)にネイチャー・ジオサイ
エンス誌に発表された。
 産業技術総合研究所などが房総半島、九十九里浜海岸で1000年前の
巨大津波の痕跡を発見した。
 津波堆積物をボーリング調査で調べた結果、海岸線から内陸に3キロ
以上も浸水した形跡を発見した。

 津波堆積物は地層の中2箇所で見つかり、そのうち古いほうは推定
される津波発生時期の記録が見つかっていない「未知の津波」と
考えられる。
 この規模の津波が発生する地震モデルを解析したところ、フィリピン
海プレートと太平洋プレートの間のプレート間地震を想定した場合、
マグニチュードが8.5で10メートル動いた場合に起こりえると
推定された。

 他にも、いくつかのモデルが提唱されており、そのうち最も少ない
すべり量では、フィリピン海プレートと太平洋プレートの間のプレート
間地震が良く合うという。
 最大のすべり量を計算した場合は、相模トラフと日本海溝のプレート
境界を20メートルあるいは25メートル滑らせた場合に発生する津波に
相当するという。

◎東海第二原発の地震、津波対策にも大きな影響が

 この論文のもう一つの波及効果は、東海第二原発の地震と津波評価に
与える影響だ。
 九十九里浜海岸に内陸3キロもの浸水域を残す津波を発生させた
地震が、東海第二原発にどのような影響を与える可能性があるのか、
今のところ何の評価もされていない。
 今回の論文に掲載された津波は、東海第二から見ると南から押し
寄せることになるだろう。そうすると、東海第二の他にも東海再処理
工場にも同程度以上の津波が襲いかかる想定になる。

.. 2021年09月28日 05:12   No.2288002
++ 山崎久隆 (社長)…1177回       
再処理工場は海側に常陸那珂火力と国際港湾「常陸那珂港」がある
ので、ここの船舶やコンテナも同時に流されれば、それらが再処理工場
にも東海第二原発にも襲いかかる。
 そうした危険性については、「起こりないこと」として規制委も全く
無視している。
 大型船舶や30メートル級の鋼鉄コンテナが次々に衝突すれば、防潮堤
も建屋も破壊される可能性がある。
 こうしたリスクを再審査する必要がある。

 東日本太平洋沖地震は、本来想定されるべき地震だった。
 2011年以前には、日本海溝沿いで大規模な地震と津波が発生する可能
性は、地震調査研究推進本部により指摘され、これが「長期評価」とし
て2002年には明らかにされていた。
(震本部地震調査委員会 三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期
評価について 2002年7月31日)
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/kaikou_pdf/sanriku_boso.pdf

◎ 三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)
の記述は、
------------------------
 プレート間のM8クラスの大地震は、三陸沖で1611年、1896年、
房総沖で1677年11月に知られている。
 これら3回の地震は、同じ場所で繰り返し発生しているとは
いいがたいため、固有地震としては扱わないこととし、同様の地震が、
三陸沖北部海溝寄りから房総沖海溝寄りにかけてどこでも発生する
可能性があると考えた。

 房総沖の1677年11月の地震については、石橋(1986)は、地震の規模を
M6〜6.5と推定しており、もう少し陸寄りに発生した地震である
可能性を指摘している。
 しかし、阿部(1999)から、津波地震であることは、確実と思われる
ので、1611年、1896年の地震と同じような地震であるとして扱うこと
とする。

 このような大地震の発生頻度は、過去400年間に3回発生している
ことから、この領域全体では133年に1回の割合で発生すると
推定される。
 ポアソン過程を適用すると、この領域全体では今後30年以内の発生
確率は20%程度、今後50年以内の発生確率は30%程度と推定される。

.. 2021年09月28日 05:19   No.2288003
++ 山崎久隆 (社長)…1178回       
 また、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの特定の領域での発生頻度
は、断層長(約200km)と海溝寄りの領域全体の長さ(約800km)の比を
133年に乗じ、530年に1回程度の発生頻度であると推定した。
 ポアソン過程を適用すると、特定の領域では今後30年以内の
発生確率は6%程度、今後50年以内の発生確率は9%程度と推定される。
------------------------
 というものだった。

◎ 地震本部の警告に対して何の対策もせず、漫然と福島第一原発
事故を起こすに至った東電の当時の経営陣に対して、刑事裁判としては
「双葉病院の入院患者等に避難行動を余儀なくさせ死に至らしめた、
業務上過失致死傷罪」。
 また株主代表訴訟では、地震対策を取らず、少なくても22兆円もの
被害を生じる原発震災を引き起こし、その賠償責任を負うことから、
経営陣への賠償責任も問う「会社への損害に対する損害賠償を求める
株主訴訟」がそれぞれ提起されている。

 なお、論文の日本語解説は産総研のホームページに
「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2021/pr20210903/pr20210903.html
 として掲載されている。
 是非、原本を読んでいただきたい。

.. 2021年09月28日 05:25   No.2288004
++ 島村英紀 (社長)…692回       
房総半島を襲った未知の大津波
| 「三重点」で起きた大地震が原因か
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その413
 └──── (地球物理学者)

 いままで首都圏を襲ってきた房総沖の大地震の歴史は、房総半島の
海岸段丘の隆起から分かっていると思われていた。海岸段丘が大地震の
たびに飛び上がって土地が増えていったからである。
 大きな地震ほど段丘の面積が大きい。具体的には1923年の関東地震(
マグニチュード(M)7.9)、その前は1673年の元禄関東地震
(Mは推定8.2)。
 その前は約2900〜3000年前、約4400〜5000年前、約6200〜7000年前。
 地震はいずれもフィリピン海プレートが首都圏の下に潜り込むことに
よって起きるものだと考えられてきた。

 海岸段丘からはその間には大きな地震はなかったように読みとれる。
 だが繰り返し起きる海溝型地震なのに間隔が開いていたのは
不思議だった。
 海岸段丘の隆起は、房総半島南西部の館山(たてやま)でも、南東部
の千倉(ちくら)でも同じように見られたから、首都圏を襲ってきた
房総沖の大地震に一般的なものと考えられていた。
 しかし、同じ房総半島でも付け根の東側、九十九里浜(くじゅうくり
はま)ではこのような海岸段丘は見られない。

 そこで海岸近くの陸上約140カ所を掘ってみたらリストにはない
大地震が見つかった。海の砂が3キロ以上内陸まで上がっているから
大きな津波とそれを起こした大地震があったのに違いない。
 海の砂が上がっている地層は2つ見つかった。
 新しい方は江戸時代の既知の地震のものだが、古い方が約1000年前の
知られていなかった津波だった。鎌倉時代から平安時代のことで、
当時はこの辺に人がほとんど住んでいなかったから古文書も残って
いない。
 房総半島の南部に大きな海岸段丘を残さなかったことから、津波が
とくに大きかったが、地震は津波ほどは大きくはなく、陸上の隆起も
限られたものだった。
 さてこの地震はどういうものだったろう。

.. 2021年09月29日 05:23   No.2288005
++ 島村英紀 (社長)…693回       
 じつは南北に走る日本海溝から枝分かれして相模トラフが
延びている。
 房総沖は、日本列島が載るプレートの下に、日本海溝から潜り込む
太平洋プレートと相模トラフから潜り込むフィリピン海プレートが
あって「三重点」になっている。この両方のプレートとも首都圏の下に
入っている。

 三重点の大地震はまだ分かっていないことが多い。世界でも三重点は
そう多くなく、地震も限られていることが大きい。
 この新しく見つかった約1000年前の津波は、この三重点で起きた
大地震である可能性が大きい。ひとつのプレートが潜り込むときは
海底面が上がって津波を起こす。陸上も隆起する。

 しかし、二つのプレートが潜り込んでいる三重点では大きな海底面の
沈降が起きて大きな津波を生む。
 こうして津波が大きくて、その割には隆起が大きくはない地震が
三重点で起きたということだろう。
 もちろん震害も大きかったに違いない。この地震の大きさはM8.5と
推定される。
 10万人以上の死者を出した関東地震よりも大きい。
 この地震は繰り返す。
 いまこの地震が襲ってきたら大被害を生むに違いない。
 首都圏を襲う大地震のギャップがひとつ埋まり、地震の候補が、
またも増えたことになる。

 (島村英紀さんのHP こちら
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より9月17日の記事)


.. 2021年09月29日 05:32   No.2288006
++ 山崎久隆 (社長)…1179回       
産業技術総合研究所HPより
 | 「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」の抜粋
 | 約1000年前に発生した房総半島沖の巨大地震によって
 | 九十九里浜地域が浸水
 | 産総研の調査で確認された1000年前の巨大津波 (下)
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

 なお、論文の日本語解説は産総研のホームページに
「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見」
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2021/pr20210903/pr20210903.html
 として掲載されている。
 以下は、その抜粋。是非、原本を読んでいただきたい。

◎概要

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)活断層・
火山研究部門、海溝型地震履歴研究グループ、澤井祐紀上級主任
研究員、行谷佑一主任研究員らと、カナダ・サイモンフレイザー大学
Jessica Pilarczyk助教は、産総研地質情報研究部門、アメリカ・サザン
・ミシシッピ大学、筑波大学、東京大学、アメリカ・バージニア
工科大学、シンガポール・南洋理工大学、アイルランド・メイノース
大学、イギリス・地質調査所との共同研究で、千葉県九十九里浜沿岸に
おいて歴史上知られていない津波の痕跡を発見し、それが房総半島沖で
発生した巨大地震によるものであるとの結論を得た。

 産総研はこれまでに、過去に発生した津波の痕跡を調べるための
地質調査を日本各地で行ってきた。
 特に2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降、その破壊領域の
南方の海域に面する千葉県九十九里浜地域においては、掘削調査により
過去の津波の痕跡である津波堆積物を2層発見した。
 また、放射性炭素年代測定により、2層のうち古いほうの津波
堆積物は約1000年前に堆積しており、歴史上知られていない津波の痕跡
であることが分かった。

.. 2021年09月29日 05:42   No.2288007
++ 山崎久隆 (社長)…1180回       
 房総半島沖には、太平洋プレート、大陸プレート、フィリピン海
プレートが1カ所で接する「プレートの三重点」が存在する。
 約1000年前の津波堆積物の分布を再現するために津波浸水シミュレー
ションを行ったところ、これらのプレート境界のうち、フィリピン海
プレートに対して太平洋プレートが沈み込む領域が破壊された場合、
比較的小さなすべり量でも九十九里浜地域を大きく浸水させる津波が
発生することがわかった。
 この結果は、従来考えられてきた相模トラフや日本海溝に加えて、
房総半島東方沖の海底下に位置するフィリピン海プレートに対して
太平洋プレートが沈み込む領域が巨大地震・津波を起こす場所として
注意すべきことを示している。
 なお、研究の詳細は、2021年9月2日(イギリス夏時間)にNature
Geoscience誌に掲載される。

◎研究の経緯

 本研究の対象地域である九十九里浜地域は、太平洋プレート、大陸
プレート、フィリピン海プレートが1カ所で接するプレートの三重点に
隣接する地域であり、各々のプレート境界で形成されている日本海溝、
相模トラフ、伊豆・小笠原海溝の周辺で発生する地震・津波の脅威に
さらされている場所である。
 これらの海域の沿岸における代表的な津波被害として、1677年の延宝
地震(延宝五年)と1703年の元禄地震(元禄十六年)によるものが
古文書等に記録されているが、これより古い時代の地震・津波の発生
履歴は明らかにされていなかった。

論文情報
掲載誌:Nature Geoscience (2021)
論文タイトル:A further source of Tokyo earthquakes and
Pacific Ocean tsunamis.
著者:
Jessica E. Pilarczyk, Yuki Sawai, Yuichi Namegaya, Toru Tamura,
Koichiro Tanigawa, Dan Matsumoto, Tetsuya Shinozaki,
Osamu Fujiwara, Masanobu Shishikura, Yumi Shimada, Tina Dura,
Benjamin P. Horton, Andrew C.Parnell, Christopher H. Vane

.. 2021年09月29日 05:50   No.2288008
++ 永山一美 (中学生)…34回       
お隣の韓国で原子力発電所事故を映画に
 | 日本で起きている福島第一原発事故を見ているよう
 | 皆も本当は事故が発生することが
 | わかっているのになぜ再稼働?!
 └──── (たんぽぽ舎ボランティア)

・月契約で配信鑑賞ができる映画サイトで『韓国:パンドラ /Pandora』
を観ました。
 韓国が舞台の映画で、福島第一原発事故がモデルで、原子力発電所の
事故を描いたものです。
 大まかなあらすじを引用すると「…韓国で史上最大級の地震が
発生し、建設から40年を超えた「老朽化原発」で事故が発生。原発
職員らが命がけで事態収束に挑む姿を描いている」というものです。

・公開12日目に観客動員300万人(韓国映画振興委員会調べ)を突破した
ようです。
 第1回マカオ国際映画祭でパク・ジョンウ監督は「これを機会に
エネルギー資源に関する議論が各国で起こり、世界がより安全で
住みよい場所になれば。と製作への思いを語っている」との事です。

・この映画の柱となるのは「巨大地震の発生」「地震に伴う原発冷却
装置故障」「メルトダウンを把握しつつ、国民や地元住民には情報
隠蔽」だと思います。
 いずれのシーンも、原発過酷事故を体験した日本人や、地元の皆さん
には、まるで、当時を見るような錯覚を起こさせるものばかりでは
ないでしょうか。

・分っているのにやめられない(何かのCMの様ですが)、なんと怖い
事でしょうか。色々な利権に手を染めると、人はこのような、
扱いきれないとわかっている危険なものまで手放せなくなるのか。
 なぜそれを繰り返すかのように再稼働を推進していくのか。
 今一度、しっかり立ち止まって考えるべきだと思いました。
 そして10年前に、みんなで一生懸命に学んだ放射能についての知識
が、だんだんと薄れてきていることに、個々が気付き、また新たに
学びなおさなければいけない、その学びの場が今こそ必要なのでは
ないか、と痛感しました。

.. 2021年10月01日 17:00   No.2288009
++ 島村英紀 (社長)…694回       
「火山の塩」は食べないで!
| 微量の重金属と放射性物質も含有し、人体に有毒
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その414
 └──── (地球物理学者)

 塩は大事なものだ。なければ身体を維持できない。古代ローマでは
兵士の給料を塩で払っていたし、塩を通貨として使っていた例もある。
 上杉謙信が敵対していた武田信玄に塩を贈ったのは有名な話だが、
このように塩は大事なものだった。美談として伝わっているが、武田
信玄は塩を贈ったことを利用して、じつは儲けたという。
 人間には限らない。陸鳥のアオバトは、ふだんは海岸から遠く離れた
山の森に棲んでいるが、毎日のように何十キロも飛んで来て海水を
飲む。多くの野生動物も、どこに塩があるかを本能的に知っていて
集まってくる。

 塩はいまは安くなったが、人口の35%が飢えているアフリカ・コンゴ
には貴重なものだ。
 5月に噴火したニーラゴンゴ火山(標高3470メートル)の泥流や
火山灰には白いものがいっぱい混じっていた。舐めると塩辛い。人々は
喜んでこの「塩」を採取した。

 コンゴ政府はこの夏に、ニーラゴンゴ火山の溶岩流に含まれる「塩に
似た物質」について、食用に適さないので摂取しないよう警告した。
「一般的な食塩ではなく有害なので、摂取を厳禁する」とある。
ケイ酸質だが、微量の重金属と放射性物質も入っているという。
 5月の噴火では32人が死亡し、多数の家屋が破壊されて45万人が家を
追われた。この火山は過去たびたび噴火していて2002年には約150人、
1977年にも600人以上の死者を出している。

 火山から出てくる人体に有毒な重金属は多い。
 たとえば鹿児島・桜島からは銅、亜鉛、カドミウム、鉛、水銀が出て
くる。どれも日本の鉱山や工場で重大な公害事件を起こした重金属だ。
火山によっては、このほかの重金属の六価クロム、セレン、鉛、ヒ素、
フッ素、ホウ素などが出てくる。
 海底にある熱水鉱床も火山と同じマグマ起源のものだが、こちらも
コバルトや各種のレアアースなどが出てくるものが多い。人体に直接
取り込んだら有毒だが、資源としては有用なものが多い。資源小国の
日本にとっては大切なものだ。

.. 2021年10月09日 07:23   No.2288010
++ 島村英紀 (社長)…695回       
 そもそも鉱山や熱水鉱床から産出される金属はマグマが運んできた
ものなのだ。
 エネルギー資源にも乏しい日本だが、地下でマグマが生んでいる
地熱埋蔵量は世界有数だ。地熱発電はもっぱらマグマの熱を利用する。
 日本でいままで地熱発電があまり行われてこなかったのは国立・国定
公園の中で掘削や開発事業をしてはいけないという自然公園法の制約
と、温泉が枯れるのではないかという温泉業者の反対によるものだ。
 日本で発電が可能な場所の8割は国立・国定公園内にある。

 しかし事情が変わった。環境省の2012年の指針は小規模な発電設備の
建設を認め、公園の外から公園の深部に斜めに掘削する方法を容認する
方針も加えた。
 これにより地熱発電は3倍以上に広がる。これから地熱発電は盛んに
なるだろう。
 ところで地熱発電が盛んになると、硫化水素や、砒素などの重金属と
いった種々の有害なものが上がってきてしまうという厄介な問題が
ある。
 火山は噴火して害を及ぼす。だが、地球の奥深くから金属を運んで
くるものでもあるのだ。

.. 2021年10月09日 07:32   No.2288011


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