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朝鮮問題はとくに重要だと石原莞爾は言います。近代文明は急速に発展し、経済力の増進めざましきものあるも、朝鮮民族の心理は必ずしも合邦に賛同するに至らぬこと、満州国に反対する人々が、「満州国もやがて第二の朝鮮となる」というのが常であることでも明らかである。
ことに第一次欧州大戦後、民族自決の波に乗じ、独立要望の空気激烈を極め、有為の青年は多く共産主義に走り、多数の犠牲を見たのである。現実は彼らの所信をくつがえし、従来の民族自決に対して疑的とならざるを得なかった。
かかるときに満州事変が勃発し、在満日本人が満州を民族協和の独立国たらしめるべく主張し、内外の反対と闘って、その主張に邁進した。これを見て朝鮮民族の先覚者は、ここに30年の夢から醒め、満州建国の精神に全幅の賛 を表するに至ったのである。
このことを回想するとき、われらは常に感激の涙を禁ずることができないのである、昭和維新、即ち東亜連盟の瞬光をこの半島同胞の勇敢な転向のうちに発見し、われらは無限の自信を与えられたのである。今次事変の初頭、朝鮮同胞の示した涙ぐましい熱意は、この先覚者の自覚が広く大衆のうちにも潜在していた結果であると信ずるものである。
朝鮮民族のこの大飛躍は、彼らが身命を賭して30年間苦闘した尊い体験を待って始めてなし得たところである。悲しいかな、苦労を知らぬ日本人は、民族の誇りと文化に対する自由とを尊重せられるならば、日本民族に劣らざる日本国民たるべしとの朝鮮民族の決意、信念をなかなか理解することができず、今日なお民族といえば、ただちに民族闘争、独立運動と盲信し、昭和維新、即ち東亜大同の中核問題である「民族協和」なる新しい観念に対しては深い関心を示さず、折角転向した半島同胞の先覚首を窮境に追いやり、その立場を失わしめんとしつつあるのである。全く困るのは日系官僚群だ。
これが満州国の進展をめちゃめちゃに阻害している。日本内地、台湾、朝鮮、満州国、北支その他いたるところを通じて共通の悩みは、日本が明治以来インテリを濫造したことにある。そして、このインテリのストックが朝鮮、台湾、満州国、北支へといたるところヘ非常な圧力で流れて行き、しかも彼らは指導者の地位を獲得しようとして、満州国のような業務多端で猫の手も借りたいくらいのところへ来ても、官僚的な企画をする。
.. 2021年09月13日 05:07 No.2284001
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