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石原莞爾が語る。近頃は東京市内に排英の立看板が林立しているが、英国を向こうに廻して日本が本気に戦うなら、ソ連および米国と手を握らねば駄目だ。英国の対日外交はソ連の陸軍力と米国の海軍力、中国の抵抗力の三つを操っての外交だからだ。外務大臣が、日本の外交は道義外交であるなどといっているが、外交に道義はない。
外交はあくまで駆引きだ。あくまで手練手管で行くのが外交だ。外交に負けたとき道義外交などといってみたところではじまるものでない。但し、中国との問題は、即ち東亜の問題に関する限り外交抜きでなければならない。これは内輪の問題だからあくまで誠意であり、これには既転引きは絶対禁物だ。
最近の日本を見ると、外交問題で国民を煽動している。これは陸軍内部の軍閥のやっていることらしい。これは厳に慎しむべきである。外交は断引きだから、例えば英国を打たんとする場合には、英国と一時手を握らねばならぬかも知れない。あるいはソ連を打つために一時ソ連と手を握るかも知れない。
だから、外交問題で国民を煽動するとは何万人もの津田三蔵をつくるようなことになり、到府が自ら煽動した国民から逆に強迫されて、節度を失するようなことになると大変である。ドイツのヒトラーなどは日本の迷惑などは少しもおかまいなしだ。ユダヤ人をドシドシ国外に迫放して上海へ送っている。
今日、英国に対して日本人が、英国は日英同盟の誼みを忘れて不屈き千万だなどというが、相手を利用するだけ利用して、価値がなくなれば切り捨てるのが外交だ。また今日、ドイツのヒトラーと軍事同盟でも結ばねば、日本の危急存亡にかかわるかのように陸軍の中には主張する者がいるが、これくらい馬鹿げた欧米依存はあるまい。 私は、支那事変に関する勅使の中に「惟フニ積年ノ禍根ヲ断ッニ非ズンバ」と仰せられた積年の禍根とは、日本人の侵略思想と、蒔介石氏の欧米依存、この二つを仰せられたものと拝察する。日本は蒔介石の重慶政府に対して英米依存が怪しからんとしきりにいいながら、自らはドイツのヒトラーに依存しようとするのではないのか。
.. 2021年08月29日 09:04 No.2273001
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