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感染拡大最優先 斎藤美奈子(文芸評論家)
昨年来のコロナ禍を振り返り、新聞の世論調査をたどると、民意は 政府より冷静に判断していたことがうかがえる。 昨年7月、22日から始まるGOTOトラベルに民意の7割は反対 だった(朝日74%、毎日69%)。 しかし、政府はGOTOを決行。第2波は開始2週間後の8月7日に ピークを迎えた。 12月、三たび感染が拡大する中、GOTOの延長に民意の7割は反対 していた(読売77%、毎日67%)。 しかし政府は年末までGOTOを停止せず、第3波は1月8日に ピークを迎えた。1月、五輪の中止か再延期を求める声は8割に達して いた(共同通信80%、朝日86%)。 この傾向は多少増減しつつも6月まで続き、開催が決定された7月 でも民意の7割〜8割は開催を不安視していた(朝日68%、 共同通信87%)。 しかし五輪は決行された。市民の反対がなければ無観客にすらなら なかっただろう。 第5波は今なおピークアウトの気配がない。 こういうのを世間では「だから言わんこっちゃない」と表現する。 17日の会見で菅首相は「感染拡大を最優先にして考えていきます」 と述べた。 言い間違い?いやいや首相にしては珍しく正しい認識である。 この一年、政府は事実、感染拡大最優先で動いてきたんじゃない のか。パラリンピックだけは大丈夫だと誰が保証できるだろう。 (8月25日朝刊23面「本音のコラム」より)
.. 2021年08月27日 06:31 No.2271002
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