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■--敦賀原発2号機の審査終了
++ 山崎久隆 (社長)…1120回          

規制委に「敦賀原発2号機の審査終了」を要求しよう
 | うそつきデタラメ日本原電に原発を再稼働させる資格なし
 | 規制委は「東海第二原発のデータ」も徹底して検証せよ
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

1.審査会合で審査打ち切り検討へ

 日本原電(原電)敦賀原発2号機の審査を巡り、規制委員会は7月
28日の審査会合でデータ捏造問題について事務局の報告を中心に
議論した。
 原電はすでに作成、提出済だった資料のデータを削除し、書き換えた
所について、一部上書きもしていたが、その経緯の調査を巡っては
更田豊志委員長、石渡明委員などから異論が続出。
 別の資料にも疑惑があるとして再稼働への新規制基準適合審査を今後
も継続するかどうか、8月18日の定例会合で再度議論し判断することに
した。
 特に石渡委員(専門は地質学)は、資料の書き換えや誤った記載が
少なくとも一昨年以降相次いでいるとして「資料が適切なものか、正し
いかどうかについて非常に疑問がある」と指摘、また、東海第二原発に
ついても触れて「同じ会社なのになぜこうした違いが生じたのか明らか
にする必要がある」として、審査を止めるべきとの意見を表明した。
(NHK7月28日)

2.地質柱状図の書き換え

 原電がデータを書き換えたのは、地質柱状図。地震活動の痕跡が残る
とされていたボーリングコアの観察データを、「未固結」から「固結」
に書き換えるなどして、破砕帯の地震活動の痕跡とされたものをなかっ
たことにした。これは「書き換え」ではなく、科学データの偽造という。
 これについて規制庁が原電に立ち入り調査を行い、「書き換えのいき
さつ」を調査し、誰が、何のために、何時、おこなっていたかなどの
情報を聴取していた。
 そのまとめ文書が「日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機ボーリング
コア柱状図データ書換えの原因調査分析に係る原子力規制検査の実施
状況(経過報告)」(検査の実施状況)として会議に提出された。
.. 2021年07月31日 06:21   No.2252001

++ 山崎久隆 (社長)…1121回       
3.検査の実態に指摘

 更田委員長は、規制庁事務局の現地調査の報告について次のように
指摘をしている。
 「検査の実施状況」で記載されている「把握された事実関係」には、
随所に「認識」や「確認された」という言葉が記載されている。
 これは規制庁の職員が原電への聞き取りにより「把握した」もので
あり、「事実とはいえないのではないか」と。
 事務局の検査と報告の仕方に異論を述べた。
 そして「聞き取りしたものは本当のことなのかどうか確認できて
いない。原電がこう言っているということにすぎない。(表題は)
「聞き取り」としなければおかしい。」「把握された事項と言う書き方
は受け入れられない」「役人は直ぐに確認したというが、事実を確認
したということとは別だということを理解していない」
 事務方の検査が原電の都合の良い結論の聞き取りになっているの
ではないか、との指摘だった。

4.科学データのねつ造動機を解明しない規制庁

 敦賀2号機原子炉建屋直下の断層は、規制委の専門家チームにより
2013年5月に地震を引き起こす活断層と認定された。
 原電は、これを否定しなければ原発が廃炉になることから、規制委の
見解を覆そうとしてきた。その中でも地質データは審査の行方を左右
する最重要資料である。
 審査で活断層と確定すれば廃炉を免れないことから、それを回避する
ためにデータの偽造、ねつ造まで行っているとすれば、動機として
わかりやすい。
 それに対して規制庁の事務局の聞き取り調査は、原電の言い分をただ
並べただけで、聞き取り相手も不明確。審査会合での規制庁事務局と
更田委員長とのやりとりだと、職責さえ委員に伝えられておらず、聞き
取った先の「責任者」が、過去に審査会合に出席したことがあるかすら
事務局は即答できない。
 さらに中間報告では、原電の聞き取り内容が事実かどうかさえ明確に
出来ておらず、原電の主張についても何ら具体的根拠を示しておらず、
検査の体を成していない。
 これに対して更田豊志委員長以下、異論が続出。検査手法についても
見直すべきとされたのである。

.. 2021年07月31日 06:27   No.2252002
++ 山崎久隆 (社長)…1122回       
5.「東海第二原発」の審査も見直すべき

 規制委の委員から「東海第二原発」について言及があったことは
非常に大きい。
 敦賀原発2号機の審査で起きたことが「東海第二原発」の別の
フェーズにおいても発生していた可能性があるとして、「東海第二
原発」で行われた審査の資料を全部見直すべき事を意味している。
 同じ会社だから、同じ事を繰り返してきたと疑ってかかるべきだ。
 この種の審査を「性善説」でしてはならないことは、福島第一原発
事故の重大な教訓のはずである。
 審査において文書の偽造は、明らかな不正行為であり、これだけで
審査打ち切り、敦賀原発2号機は再稼働不許可にすべきだ。

 さらに石渡委員らは「敦賀原発2号機の審査が続けられなくなった
場合、東海第二原発で残っている書類確認などを進めるのはどう
なのか」など、東海第二原発の再稼働に必要な手続きにも影響する
可能性を示唆した。(NHK7月28日)

 審査会合では、「このように、敦賀2号機の審査資料作成において
は、柱状図の位置づけに対する関係者の認識の違いがあったことや、
肉眼観察及び薄片観察による膨大な破砕帯に係るデータを処理するため
に必要な業務管理が適切に実施できていなかったことが確認された。」
とする「検査の実施状況」の結論を含めて、結論は先送りされた。
 私たちも、原電という会社の構造的な問題として、いずれの原発も
審査を打ち切ることを、いろいろな場面を通じて求めていこう。

※事故情報編集部より
 日本原電は、来年の2022年8月か9月に「東海第二原発を再稼働
させたい」と発表している。

.. 2021年07月31日 06:37   No.2252003
++ 上岡直見 (部長)…191回       
高温ガス炉が再稼働−「脱炭素」に便乗して原子力温存政策が加速
 | 実験炉で出力は小さいが、いま首都圏に最も近い稼働原子炉となる
 | 原子力温存のシナリオの一環
 └──── (環境経済研究所代表)

 新型コロナやオリ・パラに隠れて注目されないが、2021年7月30日に、
茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構の高温ガス炉(HTTR)が
再稼働した。(※1)
 HTTRは発生した高温ガスでタービンを回して発電するとともに、
熱の一部を使って水素の製造にも使える。ただし現在の実験炉はタービ
ンや水素プラントは接続されておらず単体での試験である。

 2020年6月に規制委員会から「合格」を受けていながら今まで延期さ
れた理由について、原子力機構は新型コロナの影響で準備が遅れたとし
ているが、商用発電炉のような特重設備や堤防強化などが不要で、準備は
容易であるはずなのに、オリ・パラのどさくさまぎれに合わせた意図も感
じられる。
 実験炉で出力は小さいが、いま首都圏に最も近い稼働原子炉となる。
実験炉ということもあってか明確な反対運動や差止め訴訟等も起きてい
ないが、原子力温存のシナリオの一環である。

 原子力機構では、カーボンニュートラル政策を受けて温暖化対策に不可
欠と説明しており茨城県知事も同調する発言をしている。(※2)
 しかし技術的にはまだ未熟であり「第二のもんじゅ」になる可能性も
高い。(※3)

 たんぽぽ舎でも、10月にHTTRほかいわゆる小型原子炉の問題につい
て学習会が予定されている。

※事故情報編集部より補足
  「幻想の新型原子炉」高温ガス炉(HTGR等)と小型原子炉
 お 話:後藤政志さん (元東芝、原子炉格納容器設計者)
 日 時:10月14日(木)18時より21時(講師のお話は19時より)
 会 場:「スペースたんぽぽ」 予約必要です

.. 2021年08月01日 06:56   No.2252004
++ 上岡直見 (部長)…192回       
(※1)『日経』「原子力機構、高温ガス研究炉の運転再開」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA300BN0Q1A730C2000000/
(※2)原発も脱炭素に有用 カーボンニュートラルで知事
    県、新たな産業振興構想
『東京新聞(茨城版)』
https://www.tokyo-np.co.jp/article/108304
(※3)上岡直見『走る原発 エコカー 危ない水素社会』コモンズ, 2015年

.. 2021年08月01日 07:03   No.2252005
++ 山崎久隆 (社長)…1124回       
中国台山原発の危険性は 中国の原子力運営能力は
 | 燃料損傷でも運転継続 (下)
 | 「福島第一原発事故の教訓」「中国の燃料損傷と運転継続」
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

◎ 福島第一原発事故の教訓

 福島第一原発震災については、これまで多くの裁判で「経営層の津波
評価及び対策の不備」が第一の原因として指摘され、これまでの裁判
でも多くは認定されてきた。
 また、原発の安全維持確保に必要な認識が欠けていたことも指摘され
ている。具体的には次の通り。

1 安全意識の問題については
 「原子力では継続的に安全性を高めることが重要であるとの認識が
不足していた。規制当局の要求を満たすだけで十分と考え、自ら安全
性を高める意識が不足した。
 過酷事故対策はこれまでに実施したアクシデントマネジメント対策で
十分と過信した。」

2 技術力の問題としては
 「外的事象(自然現象やテロ)によって全電源喪失が発生し過酷事故
に至るリスクが大きいと考えなかった。限られたリソースの活用や
短期間で合理的な安全強化策を考える力が不足した。海外情報や
他発電所のトラブル事例から有益な対策を見つけ出す力が不足した。」

3 対話力の問題としては
 「過酷事故対策の必要性を認めると、現状の原子力発電所が十分に
安全であることを説明することは困難になると考えた。」

 実は、この文章の出典は東京電力のホームページだ。「事故の根本
原因分析」と題してまとめられている。
 現在の東電が、これに準じて対策が出来ているとは到底考えられない
ので、未だに柏崎刈羽原発の再稼働は不可能なままであるのかも
知れない。もっとも、これは「社内の意識において」という意味でだが。

◎ 中国の燃料損傷と運転継続

 さて、中国の原子力運転管理の問題だが、台山原発1号機の燃料損傷
は、中国発で明らかになったものではない。
 台山原発を建設し、発電所運転会社、台山原子力合弁会社の株式の
一部を保有するフラマトムの子会社が燃料損傷のまま運転を継続する
という台山電力の決定に不安を覚え、米国NRC(原子力規制委員会)
に助言を求めたところ、それを察知したCNNがスクープしたものだ。

.. 2021年08月05日 08:39   No.2252006
++ 山崎久隆 (社長)…1125回       
 米中の緊張関係も背景にあり、米国側の報道は「中国が危険な運転を
している」との論調であるのに対抗して中国側は「保安基準内だから
問題ないのに殊更不安を煽っている」と反撃しているという構図だ。
 これは極めて危険な事態だ。
 中国当局からの情報提供は、米国の報道に対抗するものであり、多分
にバイアスがかかっている。つまり安全神話そのものだ。

 フランス紙フィガロによれば、もともとの規制値を倍に引き上げても
運転を強行しているのが中国側の対応だという。
 原発を止めれば威信に関わる、などと中国が思っているのならば、
思い上がりも甚だしいと言わなければならない。

 原発の安全性に最も有害で危険なのは、この思い上がりである。
 実際、燃料損傷が継続しているのに運転を強行しているのだから、
それ自体が「原子炉工学的にも」危険だ。
 燃料損傷が複数の燃料棒(中国側でさえ5本の損傷を認めている)に
わたっている場合、その原因は偶発的な欠陥(製造ミスや溶接ミス
など)とは考えにくく、燃料集合体ごと物理的に損傷を与える何らかの
ダメージを受けたか、炉心の水流が設計とはことなる偏流を生み出し、
それが過度に燃料棒を摩耗させた可能性がある。そのような場合、
燃料棒が連続的かつ大規模に破損する可能性は高まる。
 そうなった場合、未然に検知して停止する余裕がないかも知れない。

 燃料の連続的破断が発生した場合、炉心内部で水蒸気爆発が連続的に
生じ、燃料破損から炉心損傷、場合によっては炉心溶融にも
繋がりかねない。
 まさか「コアキャッチャー等の過酷事故対策があるから大丈夫」など
と過信しているわけではないだろうが、そのような事態になるずっと
前の今、原子炉を止めて点検するという最も基本的な安全対策を取る
べきなのである。

 原発事故により最も大きな影響を受けるのは発電所の職員だ。だから
こそ「現場の運転員に予定外運転停止を含む安全上必要な行動を取る
権限」を与えていなければならないが、果たして中国にそのような対応
が出来ているのだろうか。
 中国には、安全対策情報を速やかに提供させることを求める
必要がある。

.. 2021年08月05日 08:45   No.2252007
++ 山崎久隆 (社長)…1126回       
 ※この原稿を作成した後の7月30日、中国広核集団(CGN)は中国
広東省の台山原発1号機を停止して損傷した燃料を交換すると発表した。
 CGNは、台山1号機の燃料損傷は「技術仕様の許容範囲内であり、
安定運転を継続できる」と付け加えた。
 しかし点検を行って燃料損傷の原因を突き止め、損傷した燃料を交換
することを決定し、運転を停止したと発表した。
 運転停止後に点検を行い、損傷したすべての燃料棒が単一の燃料集合
体の一部なのか、異なる燃料集合体に属しているかを確認すると
している。

なお、この情報は、 World Nuclear News及び時事通信、AFPから
得ている。

.. 2021年08月05日 08:50   No.2252008
++ 山崎久隆 (社長)…1133回       
関西電力美浜3号機再稼働に抗議 (上)(3回の連載)
 | 誰も責任を取れない「原発破局事故」
 | 老朽原発の運転は過酷事故リスクをさらに高める
 | 東電福島第一原発の事故原因は「未確定」
 └──── (たんぽぽ舎共同代表)

項目紹介
1.はじめに
2.東京電力福島第一原発の事故原因は「未確定」
  (上)に掲載
3.国際基準にも達しない規制基準「第4層」
  (中)に掲載
4.防災対策による防護も放棄「第5層」
5.原発を動かして赤字になる電力会社
6.これからも原発の停止を訴え続けよう
  (下)に掲載


1.はじめに

 関西電力は6月23日午前10時、美浜原発3号機の制御棒を引き抜き、
原子炉を臨界状態にする「起動操作」を開始した。
 10年4ヶ月前に当時40年目を迎えていた老朽原発、福島第一原発で
原発震災を経験、未曾有の原子力災害を引き起こし、残酷な現実を突き
つけられた日本で、再び多くの原発を基幹電源として起動させる政策
決定の一環として、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機を再稼働
する暴挙に出たことは、世界に対しても重大な背信行為であり、
強く抗議する。
 その後、起動後に行われる「総合負荷試験」を終了し、経産大臣に
より「使用前検査合格証」が交付され7月27日に営業運転に入った。
震災後、日本で40年を超えて運転する最初の原発になったのである。

2.東京電力福島第一原発の事故原因は「未確定」

 政府は福島第一原発事故の原因調査を最優先で取り組むべきだった。
政府事故調査委員会と国会事故調査委員会の報告書は、事故の原因に
ついてすら見解が分かれている。
 国会事故調査報告書では、津波の前に地震による影響も生じていた
可能性が指摘されている。このことは解明されることなく、その後に
制定された新規制基準(原子炉等規制法の改正)では、その点を全く
無視して行われ、他の原発に要求されている緊急対策でも、ほぼ津波
対策に限定している。
 結果として原因の一部しか対策されない結果となった。

 地震想定を引き上げても、美浜原発3号機の場合は、750ガルから
993ガルへ1.3倍ほど引き上げたに過ぎない。
 この程度では既存の電源設備は大した強化もされていないから、福島
第一原発事故の教訓を生かしたなどとは言えない。
 

.. 2021年08月06日 05:18   No.2252009
++ 山崎久隆 (社長)…1134回       
「特定重大事故等対処施設」など、対策を強化した設備を恒設したと
するが、それはまだ完成しておらず、10月には期限切れで再度停止する
ことが決まっている。
 ならば、「特重」ができるまで動かすべきではない。

 外部電源が1回線でも生き残ったことが、女川原発や福島第二原発を
過酷事故から辛うじて救った。
 福島第一原発でも、耐震性強化や耐津波対策を講じていたら、少なく
ても全電源喪失は免れた可能性が高い。
 また、事故前に実施されていた過酷事故対策が、どのように作用し、
結果として原子炉を守る方向に働いたのか、むしろ破壊する方向に
働いたのかさえも確定していない。
 福島第一原発事故では、数ある分析の中で、現場での応急対策を含め
過酷事故対策として採られた方法に問題があった場面は、いくつか
指摘されている。

 当然これらの分析が確定しなければ新たな事故対策を策定することも
困難である。実際に電力会社が改定した運転規定(保安規定)において
実施される対策にも、大きな誤りのある可能性が指摘できる。(例えば
格納容器への注水などは水蒸気爆発を誘発する恐れがある、など)
 これらも十分に議論をされずに原子炉を起動したのは、新たな事故を
準備する行為であると言わざるを得ない。

 また、一般産業並みの耐震強度でしかない外部電源設備は、
耐震クラスを最強度のSクラスに上げて非常用設備の一部として
位置づけ強化し、安定性の向上を図るべきところ、巨額の費用負担を
嫌がり、これまでどおり脆弱なままで運用されている。
 美浜原発3号機などの老朽原発は、この電源設備に加え、各種
ケーブル類も建設当時の古い基準のまま使われているところが随所に
ある。
 本来は、最新の耐火性能を持ったものに敷設し直さなければ、新規制
基準にさえ適合しないはずが、交換は不可能として難燃シートでくるむ
などの便法を編み出し、古いまま使っている。
 これがまかり通る新規制基準では、過酷事故を防ぐ効果はない。
                      

.. 2021年08月06日 05:23   No.2252010


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