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資源問題と「もんじゅ」
「もんじゅ」の運転開始に伴い、報道で取り上げられる機会も増えた。 NHKクローズアップ現代など、多くの報道番組では「もんじゅ」の目的を「プルトニウムサイクルの確立による先端エネルギー技術の開発」としている。 もちろん原子力長期計画や原子力研究開発機構(位下機構)の主張がそうなっているからなのだが、クローズアップ現代のように時間をかけて報道している番組をのぞきほとんどはその定義づけに何の注釈も加えないため、あたかもそれが事実であるかのように表現されている。 「高速増殖炉」の意味は、「高速中性子を核分裂反応に利用しながら、炉心燃料とブランケット燃料部でウラン238をプルトニウム239に変化させ、核分裂を起こしたプルトニウムよりも多くのプルトニウムを蓄積する炉」である。このうち「プルトニウムの増殖」については掛かる時間を無視してトータルで1倍を超えると増殖したとするので、たとえ100年掛かろうとも1.0倍を超えれば良いことになる。そのため、非現実的な想定がまかり通っている。 壮大なウソの羅列の前に、一般には「もんじゅ」は危険でも必要なものと捉えられている現実があるが実際には危険な上に無駄なのだ。 「もんじゅ」が作り出すプルトニウムは、核分裂を起こしたプルトニウムの2倍になるためには90年かかる。二倍かかる時間のことを「倍増時間」という。 最も楽観的な計算でも45年というから、ほとんど炉心寿命ほど動かしてももう一つの炉心を作る能力はほとんど無い。しかも炉心を作るためには使用済の燃料を再処理し、プルトニウムを取り出さなければならず、そのための再処理施設が必要なのだが、その施設は現在存在しないし、計画中のRETF(リサイクル機器試験施設)も、高速炉常陽と「もんじゅ」のブランケット燃料という、核分裂をしている炉心ではなくその周辺燃料の再処理をするための試験施設であり、「もんじゅ」や常陽以外の原子炉の燃料を再処理することも出来ない。 理屈と現実の間には大きな溝があるのは常のことだが、高速炉は核融合炉と同様に困難を極め、最終的には実現しないだろう。 高速増殖炉に発電能力をつける場合、現状ではタービンを回す他はないので、水系統が必要だ。これにより危険性が急激に高まってしまう。 ナトリウムと水を、薄い金属を介して接する構造をとらざるを得ないため、水とナトリウムの反応事故が軽水炉にはないリスクとなってふりかかる。 これを回避できない限り、ナトリウム炉を量産することなど到底不可能なのだが、見通しも全くない中で高速炉が軽水炉に取って代わるなどと勝手に想定されている。 少なくても資源的に何らかの意味がある規模まで高速炉を造るとしたら現状の比率を維持するためだけでも400基以上の高速炉を建設しなければならず、3割や4割といった主力電源となるためには2000〜4000基は必要となろう。それ自体が経済的にも到底不可能な上、毎年どこかでチェルノブイリ原発事故に見舞われるかもしれないリスクを抱える。そのようなものが資源対策になるはずはない。
.. 2010年06月17日 07:08 No.219001
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