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聖火リレーの偽善と危険性とばかばかしさ 「新型コロナウイルスに打ち勝った証し」は虚偽発言
孫崎 享(外交評論家)
「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、 人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」 五輪憲章にこう掲げられている通り、五輪は崇高な目的を持っている。 ところが、東京五輪は出発点から歪んでいた。安倍前首相は2013年、 ブエノスアイレスで招致演説し、「福島にお案じの向きには、私から 保証をいたします。状況は、制御されています」とあいさつ。
その後、招致をめぐり、東京五輪の招致委員会がIOC(国際オリン ピック委員会)委員に賄賂性の疑いのある金銭を渡していたことも 発覚した。 政府は五輪開催を政治的に利用し、菅首相は今年1月の施政方針演説 で、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、また、 東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と語った。
「新型コロナウイルスに打ち勝った証し」と言っていたが、新型 コロナは今もなお世界に蔓延(まんえん)している。誰もが東京五輪が 開催する時に新型コロナが収束しているとは思っていない。 つまり、「新型コロナウイルスに打ち勝った証し」は虚偽発言と 言っていいだろう。
さらに現在、廃炉作業が進められている福島原発では、<福島第一 原発で見つかった「桁違い」の高濃度汚染原子炉格納容器の上ぶた、 デブリに匹敵の4京ベクレル>との報道があったばかりだ。 安倍前首相の招致演説から約8年たった今日でも、全く「制御」 されていないのである。 日本政府は世界に「嘘」を発信し続けている。 そして、その欺瞞(ぎまん)を世界が暴露し始めた。 3月3日の英タイムズ紙は、日本政府やスポンサー企業が五輪開催を 推進していることについて、<止まらない暴走列車>と批判。<今、 日本政府はお金と名声のためにこれらを犠牲にしようとしている>と 報じた。
.. 2021年04月15日 07:54 No.2171002
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