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■--放射性廃棄物の地層処分について(その5)
++ 平宮康広 (中学生)…36回          

(16回の連載)
 | 放射性廃棄物の地層処分と地熱問題
 └──── (信州大学工学部元講師)

◎ 現在、イギリスとフランスで使用済み核燃料再処理工場が稼働して
いる。日本では、小さな事故が多発して何度も稼働を延期した青森県
六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場が、2022年に稼働する予定である。
 使用済み核燃料再処理工場が多量の放射性核種を放出することは
すでに述べたが、憂慮すべきことが他にもある。

 多量の硝酸を使用するため、使用済み核燃料再処理工場の稼働は常に
不安定で、大事故が勃発する危険がきわめて高い。
 また、建屋内に多量の使用済み核燃料を保管しているため、大事故が
勃発した場合、放射能被害は3.11東電福島第一原発事故をおそらく
凌駕する。それでも経産省と電力資本は、使用済み核燃料再処理工場の
稼働を強行しそうだ。

◎ そして経産省と電力資本=NUMOは、使用済み核燃料再処理工場
で「製造」したガラス固化体=高レベル放射性廃棄物をステンレス製
キャニスタに実装し、粘土製の緩衝材=人工バリアで保護して地下300m
以深の岩盤層に地層処分=埋設するつもりでいる。
 経産省とNUMOは、ステンレス製キャニスタの耐用年数は1000年
以上、人工バリアはガラス固化体を1万年以上保護する、と
豪語している。
 だが、人工バリアがガラス固化体を保護する期間は数年かもしれない。
 ステンレス製キャニスタの耐用年数も数年〜十数年であると考える
が、それについては後述する。ここでは、人工バリアがガラス固化体を
数年程度しか保護できないと考える理由を述べたい。
.. 2021年03月26日 08:13   No.2155001

++ 平宮康広 (中学生)…37回       
◎ 人工バリアは、水を含むと固まる砂状の粘土=ベントナイトで
つくる。水分が蒸発すると、ベントナイトは砂に戻る。
 すなわち、ガラス固化体を埋設する地下300m以深の地温、および
ガラス固化体そのものの温度が高ければ、ベントナイトの水分が蒸発
し、人工バリアは「バリア」の機能を喪失する。
 地層は、深ければ深いほど地温が上昇する。
 当初、経産省とNUMOは、地下100mあたりの地温上昇温度=地温
勾配を15度Cに想定し、ガラス固化体を埋設する地下300m以深の地温
の上限を60度C前後に想定していた。
 だが、日本の地層は、立坑を1000m掘っても岩盤に届かない場合が
多い。当然、地温勾配が15度Cの場合、地下1000mの地温は150度Cに
なり、ベントナイトの水分が急速に蒸発する。

 私見であるが、地温が60度C前後の場合でも、ベントナイトは数年後
に砂に戻る。そして人工バリアが「バリア」の機能を喪失する。
 おそらくそのため、15度Cでさえ一般基準より低いというのに、
経産省とNUMOは地温勾配の想定温度を3〜5度Cに急遽変更した。
 彼らは、地温勾配3〜5度Cの地域を見つけ出して地層処分する
という。
 だが、どのようにして見つけ出すのか。彼らは説明しない。
                (その6)につづく

.. 2021年03月26日 08:23   No.2155002
++ 井戸謙一 (小学校低学年)…8回       
3・11から10年 復興・帰還政策=「放射線安全神話」に終止符を
 | 「子ども脱被ばく裁判」福島地裁 不当判決
 | 内部被ばくを覆い隠す原子力ムラ
 └──── 子ども脱被ばく裁判弁護団長 井戸謙一弁護士に聞く (中)

「原発安全神話」崩壊寸前
核兵器保持能力に固執

 各論に入ると、まず私たちは、放射性物質について「学校環境衛生基準」
の対象として基準を設けるべきだと言ってきました。
 子どもたちが安全な学校生活を送るために、維持されることが望ましい
基準ですが、放射性物質についてはこの基準が作られていないからです。
 判決は、基準がない状況では「具体的な措置は教育委員会の合理的な裁
量に委ねられている」と述べ、福島県教育委員会が20ミリSvで学校を再開
したことを不合理とはいえないとしました。
 環境法や学校環境衛生基準では、放射性物質のような閾値(しきいち)の
ない毒物の環境基準は、生涯その毒物に晒された場合における健康被害が
10万人に1人以下となるよう定められています。
 しかし、原子力法制下の被ばく限度=「年1ミリSv」は、生涯(70年間)
さらされると、ICRPの計算でさえ10万人中350人がガンで死亡します。
 年20ミリSvだと7000人です。原子力法制の価値判断と、日本国憲法下の
環境法制の価値判断が真っ向から対立する重要論点です。

 しかし判決は、原子力法制の価値判断を優先させました。理由も全く示
されていません。それでも放射性物質について、「学校の保健安全の観点
からすれば、必要な考慮をすべきことは明らか」と判示させたことは、成
果だと思います。
 放射性物質の基準を定めて子どもを守るのは国の義務です。
 判決はさらに、福島県県民健康調査について、現時点で252人も出ている
小児甲状腺がんの被ばく影響について、「現時点で具体的な影響の証拠は
ない」と退けました。小児甲状腺がんは100万人に1〜2人しか出ないも
ので、被ばくの影響がないなどありえません。

.. 2021年03月28日 08:23   No.2155003
++ 井戸謙一 (小学校低学年)…9回       
 元長崎大の山下俊一氏が、福島で放射能安全講演を繰り返したことにつ
いても、「県が訂正した」「分かりやすく説明するための例え」「住民の
避難を回避させる意図はなかった」などと述べて、全て免罪しました。
 住民の被ばく被害を拡大させた象徴である山下氏を証人尋問できたのは
画期的でしたが、判決は彼の法廷での苦しい言い訳を丸呑みしました。
編…脱被ばくの声が圧殺される理由とは?
井戸…事故によって従来の「原発安全神話」が崩壊寸前になったので、原
子力ムラが、「放射線安全神話」を強力に推し進めようとしているからだ
と思います。
 一部の例外を除いて学者やメディアをてなづけることに成功したので、
住民の間にも浸透してしまいました。
 原子力ムラにとっても背水の陣ですから、彼らは断固として被ばく被害
を認めません。漫画『美味しんぼ』事件(福島に行った人が鼻血を出した
描写が猛批判され、回収に追い込まれた)で明らかになりました。これが
判決結果に表れています。
 こうして今、「患者が多いのは過剰検査だから」という暴論で、小児甲
状腺がん調査が縮小されようとしています。
 縮小されてしまえば、統計上のデータが集まらず、被ばく由来であるこ
との証明ができなくなります。
 他のがんや心臓疾患などあらゆる病気も増えていますが、被ばくではな
く避難生活のストレスのせいだとされています。

 福島県は応急仮設住宅を明け渡さない避難者らを裁判にかけたり、県職
員が避難者の親族を訪問し圧力をかけたりしています。家賃を2倍請求さ
れた避難者もいます。
 そして汚染水の海洋放出と、除染土を全国の農地や公共事業に再利用す
ることが狙われています。
 彼らがこれほど事故の「終息」と「放射能安全神話」に固執するのは、
事故の責任逃れと、核兵器の保持能力が目的だと思います。
 核兵器使用が国際的に許されるには、「核は生物兵器や化学兵器のよう
な、使用禁止された非人道的兵器とは違う」という建前が必要です。
 そのために、ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・チェルノブイリ・フクシマ
の全てで、低線量被ばくや内部被ばくの健康被害は無視や軽視をされてき
ました。

.. 2021年03月28日 08:34   No.2155004
++ 平宮康広 (中学生)…38回       
放射性廃棄物の地層処分について(その6)(16回の連載)
 | ガラス固化体の技術問題
 └──── (信州大学工学部元講師)

◎ 戦前の日本は、国家総動員法の下で黒部川第三発電所の施工を
強行した。ダム建設資材を運搬するトンネルを掘る必要があった。
 当初、トンネルを掘削する黒部峡谷中腹の地温は約65度Cであった
が、掘削を開始してから約10カ月後に100度Cを超え、166度Cになる。
そしてダイナマイトが自然発火した。

 黒部峡谷中腹の地温が166度Cに上昇した原因は今もわからないが、
地温が変動して高温化する場面がある。地温勾配3〜5度Cの地域を
見つけ出しても、ガラス固化体の埋設が可能になるとは言えない(
ちなみに、黒部川第三発電所の施工期間は1936〜1940年で、約300名の
人命を失った)。

◎ ところで、全国各地の温泉井戸の深さから察するに、日本の地層は
1000m掘削しても立坑が岩盤層に届かない場合がある。
 したがって、経産省と電力資本=NUMOが、岩盤上層にガラス
固化体を埋設する場合があるかもしれない。
 経産省とNUMOは、今のところ「岩盤にガラス固化体を埋設する」
との表明を撤回していないので、ここで岩盤上層でのガラス固化体埋設
の危険をしつこく論じるつもりはないが、しかし特定放射性廃棄物の
最終処分に関する法律=最終処分法は、地下300m以深だけを地層処分
の条件にしている。

 すなわち、最終処分法は「岩盤」での地層処分を条件にしていない。
むろん地温は変動して高温化する場面があるので、深度の浅い地下に
ガラス固化体を埋設しても対策になるとは思えないが、岩盤上層での
ガラス固化体埋設は法的に可能であるということを、軽視できない。

◎ ガラス固化体を埋設する場面で直面する温度問題は、地温問題の
他にもうひとつ、ガラス固化体の崩壊熱問題がある。
 説明会で、経産省とNUMOから、ガラス固化体の初期温度は280
度Cで、熱は1500ワットであるとの説明を得た。
 そして製造後30〜50年経過したガラス固化体の熱は350ワット程度に
なり、埋設可能な温度にまで下がる、との説明を得た。
 他方、ガラス固化体の重量は100kg前後で、大部分がセシウム137
とストロンチウム90である、との説明も得た。

.. 2021年03月30日 06:07   No.2155005
++ 平宮康広 (中学生)…39回       
 だが、ストロンチウム90の崩壊熱は1kgあたり460ワットである。
ストロンチウム90の含有量が10kgだとしても、ガラス固化体1体の
初期熱はストロンチウム90だけで4600ワットになる。
 そして、崩壊熱が放射能半減期に比例して低減すると仮定した場合、
30年後のガラス固化体の熱は2300ワット弱になる(ちなみに、プルト
ニウム238の崩壊熱は1kgあたり540ワットである。セシウム137
の1kgあたりの崩壊熱は分からないが、電子ボルトレベルでの崩壊熱
はストロンチウム90の約2倍である)。

.. 2021年03月30日 06:20   No.2155006
++ 平宮康広 (中学生)…40回       
放射性廃棄物の地層処分について(その7)(16回の連載)
 | 放射性廃棄物を地層処分する地域数問題
 └──── (信州大学工学部元講師)

◎ 経産省とNUMOが想定するガラス固化体の初期熱と30〜50年後の
熱が小さすぎる。経産省とNUMOは、ガラス固化体の発熱について
現実離れした説明をしている、と思った。
 そこで友人の物理学者に尋ねたところ、ガラス固化体の重量100kg
前後のうち約3分の2が廃液で、残り約3分の1が放射性核種である、
しかも大部分が放射能半減期の短いもので、実際に問題となる放射性
核種の量は10kg程度と考えてよい、との返答を得た。

 ガラス固化体1体あたりのストロンチウム90含有量が1kgだと
すれば、経産省とNUMOの説明は妥当であるといえる。
だがその場合、彼らは別の説明で別の現実離れした説明をしている
ことになる。

◎ 経産省とNUMOは、多くの説明会で、ガラス固化体2万7400体
相当の使用済み核燃料がすでに存在する、と述べている。
 他方、ガラス固化体1体あたりの放射性核種の量は広島型原爆30発
分である、と述べてもいる。
 だが、広島型原爆30発分のストロンチウム90の量が1kgである
とは考えにくい。

 私見であるが、ガラス固化体の製造技術はまったく不完全で、ガラス
固化体1体あたりの放射性核種の量はおそらく広島型原爆3〜4発分
である。
 経産省とNUMOは、全国1カ所の地域でガラス固化体4万体を地層
処分=埋設する、と述べている。

 だが、全国複数カ所でガラス固化体を埋設することになるかも
しれない。
 なぜなら、使用済み核燃料全体の放射性核種の総量は正しく推定
できると考えられるので、ガラス固化体1体あたりの放射性核種の量が
広島型原爆3〜4発分であるとすれば、ガラス固化体20万〜30万体相当
の使用済み核燃料がすでに存在することになるからである(ちなみに、
最終処分法はガラス固化体を埋設する地域を全国1カ所と
定めていない)。

.. 2021年03月31日 05:33   No.2155007
++ 平宮康広 (中学生)…41回       
◎ 現実に、経産省とNUMOは、北海道の寿都町と神恵内村で地層
処分のための文献調査を開始した。
 経産省とNUMOは、両町村でガラス固化体を埋設するかもしれない。
 全国複数カ所でガラス固化体を埋設することになれば、全国複
数カ所の地域に使用済み核燃料再処理工場を建設することにもなる
かもしれない。

 たとえば、小笠原諸島父島列島の婿島で使用済み核燃料再処理工場を
建設し、弟島でガラス固化体を埋設する場面があるかもしれない。
 小笠原諸島は東京都である。東京都だけでなく、他府県にとっても、
北海道や青森県の「苦痛」は他人事ではない。
 運動等の場で、全国複数カ所(おそらく10カ所前後)で地層処分を
実施しなければならなくなると発言するには、ガラス固化体の放射性
核種の種類と量を詳しく知る必要がある。
 そこで、説明会に何度も出席し、ガラス固化体の中身の開示を何度も
要求した。だが、経産省とNUMOは開示しない。(その8)につづく

.. 2021年03月31日 05:42   No.2155008
++ 平宮康広 (中学生)…42回       
放射性廃棄物の地層処分について(その8)
 | 放射性廃棄物の地層処分と地下水問題
 | (地層処分を開始してから10〜30年後に大惨事が勃発する)
 └──── (信州大学工学部元講師)

◎ 経産省とNUMOは、ガラス固化体=高レベル放射性廃棄物、
および再処理工程で生じる放射性残渣を詰めたドラム缶=低レベル
放射性廃棄物を全国1カ所の地域で地層処分しようとしている。
 だが、地熱が大きな障害になり、またガラス固化体の製造技術が
不完全なため、ガラス固化体も「ドラム缶」も深度の浅い岩盤上層に
埋設することになりそうである。
 しかも全国複数カ所で埋設することになりそうである。それについて
はすでに述べたが、より大きな問題がその先にある。

◎ 経産省とNUMOは、直径数10m(ひょっとして直径100m前後)の
巨大な立坑を掘削し、地下300m以深に巨大な地下施設(面積10平方
km)を建設した後、50年の歳月をかけて、4万体のガラス固化体を
地下施設に埋設するつもりでいる。
 だが、巨大な立坑の掘削と巨大な地下施設の建設、そしてそれらを
50年維持するのは困難で、「大惨事」が勃発する危険がある(
ちなみに、経産省とNUMOは、エレベータで地上施設と地下施設を
別途結び、「ドラム缶」を地下施設に埋設するつもりでいる)。

◎ ところで、ヨーロッパの平野部はおおむね洪積層で、日本の平野部
はおおむね沖積層である。
 地表から礫層下位層までの深度=礫層の「厚さ」は、ヨーロッパの
場合50m前後、日本の場合150m前後で、500m以上の場合さえある。
礫層の中を地下水が流れているが、どこをどう流れているかは
不明である。
 したがって、掘削中の立坑が地下水系とぶつかる危険が大いにある
(ちなみに、日本の降雨水量はヨーロッパの約2倍で、地下水の水量
はおそらく2倍以上である)。

◎ 経産省とNUMOは、トンネルの止水技術等を応用して地下水の
浸水を防ぐ、と述べている。だが、地下水系は地下を流れる「川」
である。地下水系の高低差は1000m以上ある場合が多いと考えられ、
水のパワーは強い。トンネルの止水技術等で浸水を防ぐことはおそらく
できない。

.. 2021年04月03日 07:05   No.2155009
++ 平宮康広 (中学生)…43回       
 運よく、地下水系と衝突することなく立坑を掘削し、地下300m以深に
地下施設を建設できたとしても、その後ガラス固化体と「ドラム缶」を
埋設する50年間、立坑と地下施設は「大水害」の危険にさらされる。
 地下水系は年間10〜20m移動する。豪雪や豪雨の後、新しい
地下水系が生じる場合もある。

◎ 立坑を掘削して地下施設を建設してから10〜30年後に地下水系が
立坑の壁を突き破り、地下施設が水没して「大惨事」が勃発する危険が
大いにある。
 ちなみに、経産省は「科学的特性マップ」と称するものを作成して
全国各地で地層処分の説明会を開催しているが、科学的特性マップには
火山や活断層に関する記載があっても地下水や地下水系に関する記載が
まったくない。経産省にとって、「科学」とはそのようなもので
あるらしい。      (その9)に続く

.. 2021年04月03日 07:12   No.2155010


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