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原発事故の責任と真実を明らかにして その教訓をしっかりと伝承する
(ルポライター)
「私たちはいま、静かに怒りを燃やす東北の鬼です」。 福島第一原発事故から半年後、10年前の9月、東京・明治公園での 「さようなら原発六万人大集会」。 福島から参加した武藤類子さんの言葉「鬼」に東北出身のわたしは ハッとさせられた。蝦夷(エミシ)。 中央政府から「征伐」された民の後裔(こうえい)だが、普段は意識 していない。
武藤さんは原発事故によって、阿武隈山系の森の中での、自然と ともに暮らしてきた生活を一瞬にして奪われた。その怒りを岩手県北上 地方の激しい踊りと祈りの「鬼剣舞」に託して発言した。 馬の尻尾でつくったたてがみを、頭に載せた鬼の踊りには、激しい 怒りばかりではない、悲しみと悔恨と絶望が入り交じっている。
最近、武藤さんが上梓した『10年後の福島からあなたへ』にはこう 書かれている。 「ますます困難を極める福島の中で冷静さと明晰(めいせき)さを 持ち、熟成した煥火(おきび)のような怒りを、私たちの生きる尊厳を 奪うもの、命を蔑ろにするものに対して、ぶつけていかなければ なりません」 東京電力の刑事責任を問う「福島原発告訴団」の団長などで、 武藤さんは多忙な日々を送っている。 「原発事故の責任と真実を明らかにして、その教訓をしっかりと 伝承すること」。それが裁判の意味だが、原発はその存在自体に秘密と 不正が多すぎて、継承不能だ。 (3月16日東京新聞朝刊27面「本音のコラム」より)
.. 2021年03月19日 16:57 No.2150001
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