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特攻精神で五輪に突入する気だろうか 斎藤美奈子(文芸評論家)
東京オリンピック・パラリンピックをめぐる関係者の談話は、先の 戦争末期を連想させる。 「東京大会を開催することに揺るぎない決意を持っている」(山下泰裕 JOC会長)。「人類がコロナに打ち勝って東京大会を実現することは 組織委員会の使命」(森喜朗組織委委員長)。「自民党として開催促進の 決議をしてもいいくらいだ」(二階俊博自民党幹事長)。 「人類がウイルスに打ち勝った証しとして東京で開催する決意だ」 (菅義偉首相)
撃ちてし止まん。ウイルスに打ち勝つ。精神論が先行するのは負けが 込んできた証拠である。 冷静なのはむしろ市民だ。9日・10日のJNNの世論調査では、東京 五輪を開催できると思うかという問いに81%が「できるとは思わない」 と答えた。同日の共同通信の調査でも「中止すべきだ」と「再延期 すべきだ」の合計が80.1%だ。 昨年来の沈滞ムードを払拭すべく、組織委は開催促進の宣伝を4日 からはじめたが、気の毒なことに、このキャンペーンに起用された バドミントンの桃田賢斗選手に陽性反応が出て、日本代表は遠征を 断念した。 特攻精神で五輪に突入する気だろうか。 ワクチンというカミカゼ頼みの五輪大本営。 原爆が落ちる前に中止を決断すべきだよ。 (1月13日朝刊23面「本音のコラム」より)
.. 2021年01月15日 06:55 No.2101001
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