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≪福島作業員日誌 39歳男性≫
朝晩がぐっと冷え込んできた。イチエフ(福島第一原発)に通う 途中の国道6号から見える山もかなり紅葉してきた。黄色くなった イチョウや真っ赤に染まった紅葉の向こうに青い空が広がる。 福島の空はいい。 今月からイチエフヘの出入りや現場に行くまでの手順が変わって、 毎日ドタバタしている。とにかく複雑。 イチエフに到着後、現場によっては、なぜか持ち物検査や金属探知機 を2回通ることに。2回目は線量計などを借りた後だから、それを全部 外さないといけない。みんなおっくうになっている。
問題は現場に行くまで。事故後ずっと敷地内で使っていたナンバーの ない車が今月から使えなくなった。汚染して外に出せない車は使わない ということなのか。車が使えなくなり、現場まで徒歩か東電のバスで 行かなければならなくなった。 バスは停車場所が決まっているから、そこからは歩き。10分程度の 距離でも、荷物を持ったり重い鉛ベストを着たりしている時はつらい。
バスはいろいろな現場で働く人が使う。高線量域のレッドゾーンや、 汚染水を扱うなどするイエローゾーンで作業をして戻る人は特に大変。 バスを汚染させないよう、現場近くでヘルメットと靴を交換し、 防護服、全面・半面マスクを脱ぎ、新しい帽子と靴下、軍手、医療用 マスクを着けてから乗る。
これまで現場まで片道30分だったのが、1時間近くかかるように なった。放射線管理区域であるイチエフには最長10時間しかいられ ないから、その分、作業時間が減る。何よりも移動時間が倍になり、 被ばく線量が増えた。 年度末に向けて、みんな被ばく線量が厳しい時なのに。 変更の理由は分からないけど、最前線の現場を見てのことじゃない。 毎度のことだけど、何だかなあ。 (聞き手・片山夏子)(11月13日朝刊25面より)
.. 2020年11月19日 08:06 No.2079001
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