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噴火警戒レベルは「現段階での防災情報」にすぎない | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その355 └──── (地球物理学者)
鹿児島・桜島火山で騒ぎが持ち上がっている。民家の屋根に噴石が 飛んできて大きな穴が開いたのに、気象庁は「噴石が人家まで飛んで、 噴火警戒レベルを上げる」ことを認めなかったからだ。 民家の屋根に穴が開いたほか、海岸沿いに点在する集落から100 メートルほどの林の中で大きな穴が見つかった。直径6メートル、深さ 2メートルの穴だ。火口から出た推定50センチ~1メートルの噴石が 地面をえぐった穴だった。6月4日の早朝、暗いうちだ。
ともに火口から3キロほど離れたところ。桜島では火口から2.5キロ 付近に集落があり、噴石が到達すれば人的被害のおそれがある。島内の 別の地域でも直径5センチほどの噴石が飛んでいた。明らかに住民の 避難が必要な「レベル5」にあたる事態だった。気象庁の「噴火警戒 レベル」はレベル3の「入山規制」で、火口から2キロ以内は立入禁止 だったが、この中に民家はなく、住民の避難は必要ではなかった。
大きな噴石の飛んだ距離は火口から3キロを超えていた。こんな遠く まで噴石が飛んだのは34年前の1986年11月以来のことだった。 だが気象庁は「レベル5に引き上げる判定基準の『大きな噴石が火口 から2.5キロ以上に飛散』とは複数の噴石が飛ぶことを指している。 今回は噴石が1つなので、レベル5に上げる対象ではない」「レベル5 の見逃しではない」と言い張って、レベルの引き上げを拒否した。
しかし、公開されている判定基準のどこにも「複数」という言葉は ない。複数でなければ該当しないというのはおかしい。1つでも人は 死んでしまうのだ。 この気象庁の決定には、研究者や気象庁のOBから批判が相次いだ。 気象庁は見逃しを認めたくないために基準をねじ曲げたとしか 言えまい。火山山麓の住民の安全よりは自分たちのメンツにこだわる 気象庁の体質なのではないかというわけだ。
さすがに気象庁も、これらの批判を受けて、噴火から8日後の6月 12日になって「噴石が1つでも飛散とみなし、今回の噴火で、噴火 直後に噴石を確認できていればレベル5に引き上げていた」と それまでの説明を修正した。
.. 2020年07月08日 05:47 No.1977001
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