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■--関東地震の“先祖”をたどる…
++ 島村英紀 (社長)…461回          

1703年「元禄関東地震」
 |  警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その298
 └──── (地球物理学者)

 1923年に関東地震が起きた。「関東大震災」と呼ばれるように、10万人
を超える死者を生んだ大災害である。
 これは首都圏を襲う海溝型地震のひとつで、フィリピン海プレートが
神奈川県沖の相模トラフから首都圏の下に潜り込むことで起きる。
ほかの場所では太平洋岸の沖にしか起きない海溝型地震が陸の直下で
起きるのは、日本ではここにしかない。
 海溝型地震ゆえマグニチュード(M)が8クラスと内陸直下型地震よりも
大きいし、プレートが動くにつれて地震のエネルギーが溜まっていく
から、いつかは起きてしまう地震だ。

 そのほかに首都圏では、日本の各地で起きる内陸直下型地震も起きる。
げんに安政江戸地震(1855年)は、日本で起きた内陸直下型地震としては
最大の死者1万人を生んだ。首都圏は海溝型地震も内陸直下型地震も
起きるところなのだ。
 海溝型地震は1923年に起きた関東地震の「先祖」として、1703年に
起きた元禄(げんろく)関東地震が知られている。

 今度、いつ海溝型地震が襲ってくるのかが大問題である。そのために
は、過去の海溝型地震の繰り返しを知らなければならない。
 首都圏は京都や奈良ほどではなくても、千年以上も人が住んでいて、
地震の歴史も残っている。
 しかし問題は、歴史上の記録は、地震による被害が書かれているだけ
で、被害のありさまや拡がりから海溝型地震と内陸直下型地震を見分け
るのは不可能なことなのである。

 元禄関東地震は大きな津波が襲ってきたので海溝型地震だったことが
分かった。つまり津波と津波が運んできた堆積物が決め手になったのだ。
 だが、そもそも首都圏では沿岸部まで開発が進んでいるから、陸上
では、津波堆積物が残りにくい。このため、津波があったかどうかが
分からないことが多い。
.. 2019年05月29日 08:44   No.1669001

++ 島村英紀 (社長)…462回       
 このたび室町時代の先祖がひとつ見つかった。これは神奈川・三浦市
の南部の海岸にある洞穴から津波堆積物が見つかったものだ。たとえ
地上が開発されても、海岸沿いの地下にある洞窟には津波堆積物が
残っている可能性がある。東大などの学術調査団が2014年から発掘
調査を続けていた。

 この洞窟は白石洞穴遺跡。海側から押し流されてきたとみられる
火山灰などの層が含まれていた。厚さは約60センチ。この地層は洞穴
内の標高7メートルほどのところにあったから、高潮ではなく大津波に
違いない。この地層は、洞穴の中でなければ風雨による浸食の影響を
受けて見つからなかったに違いない。

 地層の堆積時期は15世紀後半〜16世紀だった。これは1495年に起きた
「明応関東地震」である可能性が強い。文献に記述はあったものの、
海溝型地震だとは分からなかった地震だ。
 こうして、関東地震の先祖がひとつ遡れたことになる。
 また、この堆積層の下側に、もっと古い時代の津波が作った地層が
確認されている。さらに先祖が遡れる可能性もある。

.. 2019年05月29日 08:49   No.1669002
++ 増尾 誠 (小学校低学年)…6回       
原発より一般住宅の方が安全
 |  電力会社が最も国民に知られたくない情報
 | 多くの原発が家や会社のビルよりも弱い
 |  樋口英明元裁判官の講演を聴きました
 └────  (京都市在住)

◎ 大飯原発再稼働差止め判決を出した樋口元裁判官が、6月1日(土)
に京都地裁大飯原発差止訴訟第7回原告団総会で「原発裁判と裁判官の
責任」の題で講演されました。
 会場のハートピア京都の大会議室(定員200席)は補助いすが出るほど
の超満員でした。大変良い講演でしたので少し紹介します。

◎ 原発差止訴訟で地震を理由として差し止めを認めたのは、樋口裁判
長と大津の山本義彦裁判長の二人だけで、止めなかったのは15人にも
なるが、この違いは原発の怖さを心底知っていたかどうかだと云って
ました。
 樋口さんは、温厚な語り口で、伊方のように高度な専門技術訴訟とし
てのつじつま合わせの先例に習う必要はなく、社会通念としてのものの
道理にかなっているかで判断されるべきだと語っています。
 この判決が圧力に屈することなく特別に勇気あるものなどという評は
全くの見当違いで、いかに「当たり前」の結論であるかを平易に説明
してくれました。

◎ 原発の耐震強度は大飯の設計基準では建設当初は405ガル(稼働中の
現在でも856ガルにすぎない)でしたが、実際に観測された我が国の
記録では4022ガル(宮城内陸地震2008)を最高に、1000ガルを超える
ものも多数あります。
 東日本大震災では宮城県で2933ガルが観測されていますが、震源地
から離れている福島第一原発では600―700ガルでそれほど揺れていない
のに、この大参事です。

◎ ところで、三井ホームの耐震基準は5115ガル、住友林業は3406ガル
だそうです。それに、住宅メーカーは何十回となく実験をしており、
机上の空論でコンピューターに数字を入れているのと違います。
 だから原発より一般住宅の方が安全です。原発容認派の理論の強振動
予測理論などによる「大飯には700ガル以上は来ません」などというのは
全くの仮説にすぎず、考慮するに値しない。


.. 2019年06月08日 07:37   No.1669003
++ 増尾 誠 (小学校低学年)…7回       
◎ 裁判官の伝統に反して、高裁で破られた自分の判決の中味について
裁判官を辞めた後で話をするのは、これが普通の事件でなく、国の存続
の問題であり、その危険性を知ってしまった以上はそれをしゃべるのが
私の責任だと云ってました。
 その他、最高裁の裁判官になる人かどうかは経歴を見ればわかる(定
年までの40年ほどのうち、裁判官としては20年以内だけで、法務省など
に出向した人)などなど盛り沢山でした。

◎ この論旨は、岩波の「世界」2018.10月号(p.58-69)に載っていま
すが、その中の一文「多くの原発が自分が住んでいる家や自分の勤めて
いる会社のビルよりも弱いということ、そしてその根拠が不可能と
される地震予知に基づくものであることは、間違いなく電力会社が最も
国民に知られたくない情報である」はなかなか説得力あります。

.. 2019年06月08日 07:43   No.1669004
++ 島村英紀 (社長)…465回       
プレートの沈み込みが始まり…大西洋がなくなる!?
| 解明できない1755年「リスボン大地震」
| 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その300
 └──── (地球物理学者)

 プレート・テクトニクスでは説明のつかない地震が世界でいくつか知ら
れている。
 1755年にポルトガルのリスボンの沖に起きたリスボン大地震もその仲間
だ。マグニチュード(M)8.5ー9.0の巨大地震で、大津波が首都リスボンを
襲った。震源はリスボンの南西約250キロの海底だった。
 地震の揺れや地割れによる被害に加えて、40分後に襲ってきた大津波が
市街地を呑み込んで被害を拡げ、さらに火事が燃え広がって、ほとんどの
建物が廃墟になった。約6万人もの死者を生んだ欧州史上最大の自然災害
だった。
 ポルトガルは多くの教会を援助し、海外植民地にキリスト教を宣教して
きた。その首都リスボンが、万聖節というカトリックの祭日に地震に襲わ
れてしまったのだ。

 当時、地震とは自然現象というよりも神罰だと考えられていた。しかし、
なぜ祭日に地震に襲われて多くの聖堂もろとも町が破壊され、悪人だけで
はなくて善人も子供も、みんな死ななければならなかったのか。当時の
神学者や哲学者は途方に暮れた。

 この地震は欧州の政治や経済だけではなくて、哲学や思想にまで大きな
影響を及ぼした。地震の衝撃はヨーロッパの精神にも及んだのである。
 じつは、この地震がなぜ起きたのかは、現代でも解けないナゾなのだ。
 1969年になって、近くでまた地震が起きた。M7.8の大地震で、津波が
起きて13人が死亡したほか、多くの負傷者を生んだ。同年に起きた世界最
大の地震だったが、1755年の地震よりも小さかった。

 ここはプレート・テクトニクスから見ると地震が起きそうもないところ
なのだ。大西洋の「ホースシュー深海平原」というところだ。なんの変哲
もない水深4800メートルの海底の大平原が拡がっている場所である。
 日本で巨大な地震を起こすのは、大陸プレートが海洋プレートと衝突し
て海洋プレートが地球の中に沈み込んでいる海溝(かいこう)である。と
ころが、この深海平原には、海溝はない。


.. 2019年06月09日 08:20   No.1669005
++ 島村英紀 (社長)…466回       
 最近の研究で、この平らな平原の地下には、まわりよりも密度が高い物
質が隠れていることが分かった。これは海洋プレートが深いところで変質
したものだと考えられている。つまり、まわりより重いこの部分が、いず
れ沈み込んでプレートの衝突が起きるという学説が出された。
 この学説が正しければ、世界で初めて、目の前でプレートの沈み込みが
始まろうとしているのだ。1755年や1969年の地震は、その始まりを示して
いるのである。沈み込みが起きれば、大西洋は小さくなる。

 地球が生まれてから46億年、その間に少なくとも3回は大陸同士が集ま
って巨大な超大陸を作り、その後分裂していったことが分かっている。今
回ポルトガル沖で見つかった「始まり」が、大西洋がなくなるという将来
の大事件につながるものかもしれない。

.. 2019年06月09日 08:27   No.1669006
++ 上岡直見 (大学生)…80回       
6月18日に発生した山形県沖地震(仮称)と柏崎刈羽原発
 |  「原子力災害対策指針」は改正のたびに
 |  自民党が内容を後退させた
 └──── 〔環境経済研究所(技術士事務所)〕

 2019年6月18日に発生した山形県沖地震(仮称)では、柏崎刈羽原発
では「特に異状なし」で済まされてしまったが「ああよかった」では
済まない。

 柏崎刈羽原発の原子炉は停止しているが、使用済燃料がプールにある
ため、緊急時防護対策の対象になる。
 「原子力災害対策指針」では立地市町村で震度6弱以上が発生した
場合は「警戒事態」が適用される。5km圏では避難時要配慮者の避難
準備が求められる。今回は柏崎市で震度5弱・刈羽村で震度4のため
警戒事態に該当しなかった。

 しかしこれは「原子力災害対策指針」を2017年7月5日に改正し震度
の適用条件を「立地都道府県」から「立地市町村」に縮小した結果で
あり、村上市で震度6強だから改正前なら本当に「警戒事態」に該当
する条件である。

 「原子力災害対策指針」は2012年10月31日に制定されたが、自民党が
政権に復帰してから改正のたびに次々と内容が後退し、事故想定を福島
第一原発事故の100分の1(セシウムの放出量として)に引き下げたり、
30km圏内では緊急事態でも避難せず屋内退避を原則とするなど「でき
るだけ住民を避難させない」、言いかえれば被曝のリスクが高まる方向
に変化してきた。

 その背景として、住民を避難させると何らかの補償が必要となる
ため、それを避けるための思惑が働いているのではないだろうか。

.. 2019年06月20日 07:41   No.1669007
++ 上岡直見 (大学生)…81回       
6月18日に発生した山形県沖地震(仮称)と
 |  柏崎刈羽原発「その2」
 |  柏崎刈羽原発でまたもや東電の不祥事
 |  昨年の「ケーブル火災事故」で長時間にわたり火元の特定が
 |  できなかったトラブルについてもその対策が
 |  完了したという成果はなく
 └──── 〔環境経済研究所(技術士事務所)〕

◎ 東電柏崎刈羽原発から地元自治体に対する状況報告の中で、燃料
プールを冷却する電源に実際には異常がないのに「異常あり」と記載
していた。
 原子力災害対策指針では「警戒事態」の条件の一つとして「使用済
燃料貯蔵槽の水位が一定の水位まで低下すること」という項目がある。
この誤報に柏崎市の桜井市長が激怒したと各社が報道している。

◎ これは原子炉が停止中でも同じである。「空振りで良かった」では
なく桜井市長の激怒は当然である。
 なぜなら「警戒事態」に該当すれば、PAZ(5km)圏内では避難時
要支援者(高齢者や障害者など)の避難準備に実際に動かなければなら
ないからである。
 福島第一原発事故の際に問題となったように、要支援者の中には
移動すること自体が危険を発生させる場合がある。

◎ 今回は使用済燃料プールの電源が異常という誤報であり、直接的に
水位低下の情報ではなかったが、異常が解消されなければ水位低下に
発展する可能性があるのだから、深夜に職員を召集し準備にかかる
ことになる。それだけでも大変な負担である。
 桜井市長は再稼働については「条件付き容認」と伝えられているが、
今年1月には自分で車を運転して降雪時の避難路を点検するなど住民の
安全に真剣な姿勢を示している。
 一方で疑問なのは、刈羽村も全域がPAZに該当し、原発に近いぶん
だけ柏崎市より深刻であるが、同じ誤報を受けながら特に反応は
なかったのか。

◎ 誤報に関して柏崎刈羽発電所の設楽所長は「全社を挙げて対策に
取り組む」と陳謝したというが、昨年のケーブル火災事故で長時間に
わたり火元の特定ができなかったトラブルについてもまだその対策が
完了したという成果はなく、「全社を挙げて」もいったい何度目かと
いう印象を受ける。
 柏崎刈羽だけでもこのありさまでは、福島の廃炉作業もきわめて
心もとない。

.. 2019年06月21日 11:02   No.1669008
++ 上岡直見 (大学生)…82回       
 ※関連報道の紹介

 原発の地震被害情報 東電が誤送信
 異常「有」通報 柏崎市長が抗議 柏崎市長、廃炉計画議論を凍結

 新潟・山形地震が発生した18日深夜、東京電力が新潟県の柏崎刈羽
原発の状況を自治体などに連絡した文書に記載ミスがあった。柏崎市の
桜井雅浩市長は19日、同原発の設楽親所長を市役所に呼び、徹底的な
原因解明と抜本的な改善を求める申し入れをした。
 市長は同原発6、7号機の再稼働の条件として1〜5号機の廃炉計画
の提出を求めていたが、「今は受け取る状況にない」と述べ、東電が
通報連絡の改善策を示すまで廃炉計画の議論を凍結する考えを
示した。(後略)  (6月19日「新潟日報MORE」)より抜粋

.. 2019年06月21日 11:10   No.1669009
++ 今井孝司 (高校生)…64回       
活火山と原発の分布図の紹介
 |  東京新聞の火山と原発に関する社説を読んで
 └──── (地震がよくわかる会)

◎ 既に読んだ方も多いかと思いますが、東京新聞の6月16日の社説
「週のはじめに考える 火山国に住む心得は」で、火山と原発につい
て、非常に分かりやすい指摘がありました。リンク先は以下の通りです。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019061602000181.html
 冒頭部において社説では珍しくクイズ形式で読者に問い掛けます。
「クイズです。○か×で答えてください。(1)噴火する危険性がある
山を活火山という」というものです。
 正解は社説の文中にありますので、答えが気になる方はそちらをご覧
になってください。

◎ 何故、私がこの社説に注目したかというと、文中で、昨年12月に、
大山(鳥取県にある山、伯耆大山ともいう)の8万年前の噴火により、
京都市で厚さ25センチの火山灰層が見つかり、原子力規制委員会が関西
電力に対して、管内の原発に対する影響を調べて報告するように求めた
ということです。
 その中で、大山は活火山ではないという指摘がありました。私自身は
大山は活火山だろうという思い込みがありましたので、ちょっと驚き
でした。

◎ そこで、唐突ですが、当会HP( こちら )に
気象庁の活火山分布図等を参考にして、活火山と原発の分布図をアップ
しました。
 当会HPトップに当該分布図があります。200%に拡大表示したものは
以下のリンク先にあります。
 こちら

 活火山名をクリックすると、活火山に関する諸情報(当活火山からの
160kmの原発、Wikipedia、気象庁、産総研の解説、地形図への
リンク、関連記事の紹介)が表示されます。
 同時に、原発から160km圏内にある活火山についてのリンク集を
作成しました。リンク先は以下の通りです。
 こちら

.. 2019年06月24日 08:36   No.1669010
++ 今井孝司 (高校生)…65回       
◎ 最も活火山が周辺に多かった原発は柏崎刈羽原発でした。
総数は19山となりました。
 吾妻山・安達太良山・磐梯山・沼沢・燧ケ岳・那須岳・高原山・日光白根山・
赤城山・榛名山・草津白根山・浅間山・横岳・新潟焼山・妙高山・弥陀ヶ原・
焼岳・アカンダナ山・乗鞍岳です。
 東京新聞社説の中にあった大山は、活火山ではないので、残念なが
ら、活火山と原発のリンク集にはでてきません。
 全火山の分布図については、今後の課題としていきたいと思います。
 火山と原発について、皆さんの理解を深める材料として、当HPを
ご活用していただけると幸いです。

.. 2019年06月24日 08:47   No.1669011


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