|
「スイスの雪崩保護」 | 地震より防護策とりやすい雪崩 | 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その293 └──── (地球物理学者)
雪崩の被害は春先に多い。日本の積雪地帯でも大きな問題になっている が、欧州北部でも大きな自然災害だ。 秋田の「なまはげ」がユネスコの無形文化遺産に登録された。 しかし、日本では報じられなかったが、同時に「スイスの雪崩保護」も 無形文化遺産に登録された。
日本と同じく山岳国で雪も多いスイスでは、雪崩は「白い死」と言われ て恐れられている恐ろしい災害だ。地震や火山噴火がないスイスでは最大 の自然災害である。 この冬にもホテルが雪崩に襲われた。幸い、死者は出なかったがロビー などがめちゃめちゃになった。 以前では、1951年に起きた雪崩では1300ヶ所で雪崩が起きて100人近くが 雪に巻き込まれて死亡した。
これらの雪崩を受けて「スイスの雪と雪崩研究所(SLF)」は、精力的 に、雪崩の解明と被害の防止に努めてきた。 このため保護林が保全され、ハザードマップも作られ、雪崩のフェンス が設置された。 これらの対策によって、大きな雪崩災害は目に見えて減った。 冬でも鉄道が山岳地帯を安全に横断出来るようになった。ユネスコの 今回の決定は、これらを評価している。
大西洋の北部にあるアイスランドでも、いちばん犠牲者を生むのが雪崩 である。全人口が32万人しかいない国なので、十数人がなくなる雪崩は、 人口比でいえば、1億2000万人の日本で6400人以上が犠牲になった阪神 淡路大震災(1995年)なみの大災害なのである。 犠牲者の数では雪崩は、アイスランドに多い火山噴火や地震の犠牲者 よりも多い。 アイスランド北端の寒村、シグルフィヨルドゥールに海底地震観測の ために行ったことがある。1年を通して平均気温は マイナス4度から 11度で、15度を超えることは滅多にない寒村だ。ニシン漁で暮らして いる。 ここでは1919年に大きな雪崩が起きて水産加工場を海へ押し流して19人 の犠牲者を生んだ。それだけでなくて、雪崩が津波を生み、フィヨルドの 対岸にも被害を及ぼした。
.. 2019年04月22日 08:22 No.1641001
|