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科学的に因果関係を完全に証明することは難しいのですが、野生生物に 起きた生殖異変と環境ホルモンとの関連はもはや疑いようがありません。 化学物質には、たとえばDDT(有機塩素系殺虫剤)やPCB(ポリ 塩化ビフェニル)のように環境中で長い間分解されずに残留し続ける物質 もあります。 その様な物質が、植物連鎖を通じて生態系ピラミッド上位の生物に 高濃度に濃縮されます。生態系の頂点に位置する人間にもっとも大きな 影響を及ぼすのです。
4.人間の生殖にも影響が現れ始めた
今日、世界のカップルを悩ませている「不妊症」と「不育症」。 日本でもいまや7組に1組のカップルが不妊に悩んでいるといわれ、 私たち人間は子どもを作るために生殖補助医療の助けが必要になって きました。 日本産婦人科学会は、2012年に国内で約35万件の体外受精が行なわれ、 3万7,953人が生まれたと発表しています。
最近注目されているのが、妊娠はしても流産や死産、早期新生児死亡を 繰り返す不育症です。 さまざまな生殖異変で野生生物が個体数を減らしていることを考える と、人間にも環境ホルモンの影響が現れている可能性があります。 その要因の一例がプラスチックの原料として使われているビスフェ ノールA(BPA)です。 この15年の研究の蓄積により、BPAはマウスの卵細胞の成育を妨げ たり、染色体を損傷させることが明らかになりました。 人間にも「メス化」の兆しが現れています。その指標といわれる男児の 先天奇形には、尿道下裂や停留精巣があります。 (その2)に続く
講師:中下裕子弁護士 NPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」代表、 「グリーン連合」共同代表
.. 2019年03月20日 08:29 No.1618005
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