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「原発輸出政策破綻」のうっぷんを国民への挑戦で突破するつもりか 中西経団連会長発言「再稼働をどんどんやるべきだ」
鎌田 慧(ルポライター)
「再稼働をどんどんやるべきだ」。中西宏明経団連会長の進軍ラッパだ。 原発存廃の勝負はついた、あとは一日も早い終戦と撤退だ、とわたしは考え ている。ところが日本財界の最高司令官は、まるでヤケのヤンパチ、玉砕 覚悟の突撃命令だ。 そのわずか前、報道各社とのインタビューで中西会長は「国民が反対す る(原発)はつくれない」と仰っていた。福島第一原発事故のあと、厭戦 (えんせん)気分が蔓延(まんえん)している市民と自治体にいらだち、むり やり反対意見をねじ伏せたいこころ。 しかし世界を見てほしい。賢明なるドイツ政府はすでに急速な脱原発を すすめ、核からの脱却と自然エネルギーへの転換が、あらたな経済成長と 希望の道となっている。 それにひきかえ、日本政府の原発輸出政策は、東芝、三菱重工業、日立 製作所ともに軒並み採算がとれず敗退、破綻。中西氏が会長の日立はアラ ブ首長国連邦、リトアニア、台湾、そして英国と海外戦線は全滅。すでに 勝敗はあきらかなのに、敗北の鬱憤(うっぷん)を国民への挑戦で突破する つもりか。 経団連会長の再稼働至上主義は、かつての軍部の戦闘至上主義を思い起 こさせる。被爆地は疲弊し物資は欠乏。国民の戦意喪失は深い。が、どん どん往け、と兵士を戦地に送り込んだ。その無謀、無責任のDNAが財界 指導者に残っているようだ。ついに本土決戦の悪夢か。 (1月22日朝刊27面「本音のコラム」より)
.. 2019年01月23日 08:42 No.1575001
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