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■--南海トラフ地震のカギを握る駿河湾
++ 島村英紀 (社長)…415回          


   駿河トラフという海溝が駿河湾の中を走っている
 |  警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その278
 └──── (地球物理学者)

 今年はサクラエビがとれない。地元静岡の漁船は11月から出漁禁止に
なっている。
 漁業組合は自主規制を既に設けていた。とても厳しいもので、出漁漁船数
を3分の1以下に削減、引き網の時間は10分以内、0歳エビが全体の3分の
1以上の群れには投網しないというものだった。
 だが、それでもサクラエビが減って、漁が全面中止となった。全面中止は
今回が初めてだ。サクラエビは「駿河湾の宝石」といわれ、日本では駿河湾
だけしかとれないだけに、地元漁師にとっては大変な痛手だ。

 サクラエビ漁の歴史は古くはない。19世紀の終わりに漁師が、アジの網引
き漁をしていたときに網が深く潜ってしまい、そのとき偶然に大量のサクラ
エビがとれたことが始まりだった。
 駿河湾は日本ではいちばん深い湾だ。深さが2000メートルを超える。陸か
ら漁船で2時間も出たところにこんな深い海があるところは他にはない。
たとえばドイツの領海は、いちばん深いところでも60メートルしかないか
ら、陸からごく近いところでこんなに深いのは世界的にも珍しい。
 このため、どんな魚も豊富にとれる。浅い海の魚から、深い海の魚やサク
ラエビやタラバガニである。もちろんアジやサバやイワシなどの回遊魚も
多い。このほか、ときどき上がってくる深海魚が大地震の前触れなのかと
騒ぎになる。

 この湾が深い理由は海溝が駿河湾の中を走っているからだ。海溝の名前は
駿河トラフという。
 海溝の東側には伊豆半島がある。伊豆半島はフィリピン海プレートに
載ってきて、日本に最後にくっついた火山島なのである。約100万年前のこ
とだ。それゆえ、伊豆半島は西側に駿河湾、東側に相模湾を従えている。
 駿河湾は、南海トラフ地震のカギを握っている。南海トラフ地震がここを
東端にして起きるのではないかと思われているからだ。予想される地震の
西端は足摺岬の沖か九州東方沖までだ。

.. 2018年12月21日 05:54   No.1554001

++ 島村英紀 (社長)…416回       
駿河トラフは南西方向に南海トラフ、そして琉球海溝にまで続いている。
この一連の海溝からフィリピン海プレートが西日本の地下に潜り込んでいる
のだ。このフィリピン海プレートの衝突と潜り込みが、南海トラフ地震を起
こす。
 南海トラフ地震はいままで13回知られている。ひとつ「先祖」は2年おい
て二つに分かれて起きた。1944年の東南海地震(マグニチュード(M)7.9)
と1946年の南海地震(M8.0)だった。
 しかし、この二つをあわせても、歴代の「先祖」よりも小さかった。この
地震の震源は、東端が遠州灘で止まっていて、なぜか、駿河湾に入ってこな
かったのだ。
 このために地震エネルギーがまだ残っていて、今度来る南海トラフ地震
は、もっと大きいのではないかと考えられている。げんに、遠い「先祖」
である1707年の宝永地震は二つに分かれずに一挙に起きて、ずっと大きな
地震だった。
 駿河トラフは、次の、つまり来るべき南海トラフ地震のカギを握っている
のである。

.. 2018年12月21日 05:59   No.1554002
++ 今井孝司 (高校生)…52回       
「科学を信頼するな」の碑文の内容に共感しました
 |  島村英紀さん講演「大噴火が少なすぎる近年の日本」の
 |  まとめを「地震がよくわかる会」HPにアップ
 └──── (地震がよくわかる会)

〇11月24日に行われた島村英紀さんの講演「日本列島の最近の地震活動と
噴火 その2 大噴火が少なすぎる近年の日本」については、個人的な感想を
たんぽぽ舎メルマガ(【TMM:No3520】)に書きました。
 今回は講演の内容を当会HP( こちら )にアップしたとい
うお知らせです。

〇当日使用されたパワーポイントの画面数は84枚(重複あり)でした。
文中に【島村】とあるのは島村さんの発言をまとめたもの、【補足】とある
のは当会の判断で補足的な情報を付加したものです。
 当日参加された方は、【補足】部分等で内容を補って、理解を深めていた
だければと思います。
 参加できなかった方は、画面と発言部分から講演会の雰囲気を感じとって
いただければと思います。

〇講演の中で「科学を信頼するな」という石碑があるという話題がでてきま
した。
 私個人の認識では、「科学はまず疑う」ということから始まると考えてい
ます。
 噴火予知の科学についても同様です。
 気象庁、火山学者の考えについて、そのまま鵜呑みにするのではなく、
まず疑う、その上で納得できることは認めていく姿勢をしていきたいと考え
ます。
 その点からも、今回の講演の内容は「疑う」という考え方が多く含まれて
いますので、皆さんの参考になるものと思います。

〇以下にアップした内容の構成を紹介します。

(1)全講演資料(スライド)を表示順にひとつのHTMLファイルにしまし
た。当会HPからは「日本の火山噴火(島村英紀氏講演)」でたどれます。
 直接リンクは以下の通りです。
こちら

.. 2018年12月21日 08:35   No.1554003
++ 今井孝司 (高校生)…53回       
(2)使用したスライドを1枚づつ表示し、右矢印を押すことで次ページに
移動するHTMLファイルを作成しました。
 当会HPからは「日本の火山噴火(画面単位に表示)」でたどれます。
 直接リンクは以下の通りです。
こちら

(3)今回メルマガでレジュメの連続投稿がありました。テキスト化された
方ありがとうございました。
 これらを1ファイルにまとめて、画像も貼付けたものを作成しました。
 直接リンクは以下の通りです。
こちら

.. 2018年12月21日 08:45   No.1554004
++ 島村英紀 (社長)…417回       
日本列島の最近の地震活動と噴火
 |  その1「北海道地震、大阪北部地震ほか」
 |  ・信用できない「日本列島地震危険地図」
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載2」

●信用できない「日本列島地震危険地図」

 この二種類の地震はまったく別のものだ。海溝型地震は「起きる場所が決まっ
ていて、いずれは起きる」ものだが、内陸直下型地震は「日本のどこで起きるか、
そもそも、そこで起きるかどうか」が分からない地震なのである。

 政府が予想して毎年発表している「日本列島地震危険地図」というものがある。
毎年春に発表されているが、そこでは「地震危険度」を政府の地震調査委員会が
見積もって色分けしている。黄色がもっとも地震危険度が低いところ、赤やえん
じが地震危険度が高いところで、南海トラフ地震が起きると影響が大きい西日本
の太平洋岸や首都圏地震が心配な首都圏が地震危険度が高いところとされている。
 この地図に基づいて動いている政府や自治体にとっては、ノーマークの地震が
相次ぐことになっている。

 北海道胆振東部地震も、大阪北部地震も黄色のところ、つまり政府にとって起
きるはずのないところで起きてしまった。
 この種の地図が作られるようになったのは阪神淡路大震災以後だが(それと同
時に地震予知関連の組織は地震調査研究に変わった)、その後に起きた大地震、
たとえば 2000 年の鳥取県西部地震(M7.3)、2004年の新潟県中越地震(M6.8)、
2005 年の福岡県西方沖地震(M7.0)、2005年の首都圏を直下型地震として襲った
千葉県北西部の地震(M6.0)、2007年の能登半島地震(M6.9)と中越沖地震(M6.
8)、2008年の岩手・宮城内陸地震(M7.2)、2016年の熊本地震(M6.5 とM7.3。両
方とも震度7)などはすべて、ノーマークだったところで起きてしまった内陸直下
型地震である。

 なお、千葉県北西部の地震は首都圏でエレベーターが64000台も停止して多くの
人が閉じ込められたほか、交通が止まるなど、首都圏に大混乱を起こした地震で
ある。
 

.. 2018年12月21日 09:45   No.1554005
++ 島村英紀 (社長)…418回       
 図は東大にいた地震学者ロバート・ゲラーさんが「日本列島地震危険地図」に
2011年までの地震を書き足した図で、近年に起きた地震のすべてが黄色のところ
で起きたことを示している。このゲラーさんの地図にはないが、熊本地震も、大
阪北部地震や北海道胆振東部地震も、黄色のところだった。
 それぞれの内陸直下型地震は、それぞれの地元では甚大な被害を生んだ。たと
えば2007年に起きた中越沖地震(M6.8)では柏崎刈羽原発が大被害を受けて、11年
たったいまでも止まったままだ。

 政府の地震調査委員会によれば、熊本での地震の発生確率は30年以内に0.9%以
下だった。つまり、けして高くない数値だったのに、大地震が起きてしまった。
 問題はこの種の地図が、一般には「安心情報」として受けとられてしまうこと
だ。つまり黄色のところは「地震が起きない」ところではなくて、「起きるかど
うか、いまの学問では分からない」ところなのである。
 北海道胆振東部地震も、政府が発表する「地震が起きる確率」が30年以内の発
生確率は0.2%以下とごく低いところで起きた。しかも、既知の活断層ではない、
未知の断層で起きた地震だった。私が前から警告しているように、既知の活断層
だけを注意していれば、いいというものではない。

.. 2018年12月21日 09:56   No.1554006
++ 島村英紀 (社長)…419回       
日本列島の最近の地震活動と噴火
 |  その1「北海道地震、大阪北部地震ほか」
 |  ・海溝型の大地震にも大きな問題が
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載3」

●海溝型の大地震にも大きな問題が

 海溝型の大地震についても問題が多い。特定の海溝型地震がクローズ
アップされることによって、「次に起きる大地震」が、この特定の海溝型
地震に違いない、という刷り込みが行われることだ。
 阪神淡路大震災の前には、1976年に始まった「東海地震騒ぎ」があった。
次に起きる大地震は東海地震に違いない、と政府も自治体も、そして一般人
も思い込んだときに、「関西には地震はない」はずのところに襲ってきたの
が阪神淡路大震災だった。

 今回も、似た状況にあった。北海道南東沖の巨大な海溝型地震が起きる
可能性が高い、と政府が発表している足元で、まったく別の内陸直下型
地震、北海道胆振東部地震が起きてしまったのだ。
 これからも、南海トラフ地震が「次に起きる大地震」ではないかも知れ
ない。海溝型地震はいずれは起きる。
 しかし、現在の学問では、いつ起きるか分からない。その間に大きな
内陸直下型地震が大被害を生んでしまう可能性が低くはないのである。

.. 2018年12月24日 06:29   No.1554007
++ 島村英紀 (社長)…420回       
日本列島の最近の地震活動と噴火
 |  その1「北海道地震、大阪北部地震ほか」
 |  ・「地震が起きる理由」が多い首都圏(四つのパターン)
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載4-1」

●「地震が起きる理由」が多い首都圏

 首都圏では、この海溝型地震も、内陸直下型地震も両方が起きる、という
地震学的にはとても特異な場所である。海溝型地震が陸の下で起きる、とい
う特殊な場所は、日本では首都圏と、あとは静岡県の清水、静岡近辺の二ヶ
所だけしかない。

 首都圏はもともと地震が多い場所だ。それは「地震が多い理由」があるか
らだ。
 江戸時代以前から「要石(かなめいし)」の伝説があり、地震を起こすと
信じられてきた、地下に住む巨大ナマズの頭と尻尾を重ねて、その上に石を
置いたという「要石(かなめいし)」が茨城県の鹿島神宮と千葉県の香取神
宮の境内にあるほどで、昔から地震が多いことが知られていた。

 いまでも、首都圏で人体に感じる地震(有感地震)は年に数十回もあり、
日本でも多い方だ。これに対して、札幌も福岡も、年1〜2回しかない。
 都の防災委員会は首都圏に起きる地震として四つのパターンを想定して
いる。

 1)フィリピン海プレートが起こす内陸直下型地震、
 2)立川断層という活断層が起こす内陸直下型地震、
 3)フィリピン海プレートと北米プレートの間で起きる海溝型地震、
 そして 4)内陸直下型地震のひとつである東京湾北部地震だ。
 3)が海溝型地震、あとの3つは内陸直下型地震である。

 どれも局地的には震度7になる可能性があり、首都圏に甚大な被害をもた
らす可能性がある。震度7とは、日本の震度でもっとも高い震度で、いわば
青天井である。これより上の震度はない。
 だが、この想定のそれぞれには、地震学的な問題がある。たとえば 2)の
活断層は、「地震を起こした地震断層が浅くて地表に見えているもの」とい
う活断層の定義からいえば、3〜4kmもの厚い堆積層をかぶっている首都
圏では、たとえ地下に活断層があっても見えない。
 つまり「活断層がない」ことになっている。東京でも西部に行くほど堆積
層が薄くなって、たまたま見えてくるのが立川断層なのである。

.. 2018年12月26日 08:42   No.1554008
++ 島村英紀 (社長)…421回       
立川断層は埼玉県飯能市名栗から立川を通って東京都府中市まで延びてい
る断層で、もしこれが地震を起こせばマグニチュード7クラスになる。
 この活断層のまわりには、昔と違って、今ではびっしり住宅が建ち並んで
しまっているところだ。それゆえ、もしこの活断層が地震を起こせば、大き
な被害を生じることにもなりかねない。
 だが、活断層の定義から明らかなように、首都圏の地下では「見えない活
断層」あるいは「定義上は活断層ではない地震断層」が、ほかにも多く隠れ
ている可能性が高い。
 たとえば1855年に江戸を襲った安政江戸地震の震源は隅田川の河口近く
だったが、ここには、いくら調べても活断層はない。
 だが、この地震は明らかに内陸直下型地震で、内陸地震としては日本最大
の1万人以上の犠牲者を生んでしまった。現地は柔らかい堆積層におおわれ
ていて、地下の岩盤の中にある割れ目の痕跡は地表にはない。
 これからも、この安政江戸地震のような、「見えていない活断層」が地震
を起こすことは、十分に考えられる。

.. 2018年12月26日 08:53   No.1554009
++ 島村英紀 (社長)…422回       
日本列島の最近の地震活動と噴火
 |  その1「北海道地震、大阪北部地震ほか」
 |  ・「次に」日本列島で起きる大地震を予測することは
 |   現在の学問では不可能
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載4-2」

 そして 4)は、ほかの3つのパターンだと東京23区の中心部や東部に震度
が大きい地区が集中するわけではないので、人々の油断を誘いかねないとい
うので、「政治的な理由」から作って入れた震源だ。
 ここで内陸直下型地震が起きれば、たしかに東京23区の中心部や東部で
震度が大きくなる。最大で7に達する。だが、ここで地震が起きるという
地震学的な根拠はなにもない。
 そして、この地震だけが東京23区の中心部や東部で想定されているため
に、この想定が「一人歩き」してしまう危険がすでに現れている。
 たとえば足立区のある橋は、「東京湾北部の地震」で想定される震度には
耐えられる、という。だが、もしかしたら、将来の地震は、足立区にもっと
近いかも知れないのだ。

 つまり、内陸直下型地震は、将来、どこで起きるかを今の地震学で予想す
ることは出来ないのである。首都圏を遅う地震の厄介さは、ここにある。
 どの種類の地震も、首都圏に大きな被害をもたらす可能性がある。人口
密度が高く、そのうえ、木造住宅密集地帯を多く抱えている首都圏では、
将来の地震被害がとても大きいものになることが心配されている。

 じつは阪神淡路大震災も、その5年後に起きた鳥取県西部地震も、同じ
マグニチュード7.3で同じような内陸直下型地震だった。
 しかし、被害のありさまは大きく違った。これには地盤の善し悪しも
あるが、都会ほど地震に弱いということを如実に表している。

 「次に」日本列島で起きる大地震を予測することは現在の学問では不可能
である。1978年に大規模地震対策特別措置法(大震法)が作られて東海地震
が地震予知できることになった以後、「次に起きる」地震は東海地震に違い
ない、と多くの人が思っていたときに起きたのは阪神淡路大震災だった。
 地震予知は出来ない、ということを政府も認めざるをえなくなったが、
大震法そのものは残っている。このため、矛盾を含んだ多くの問題が残って
いる。

.. 2018年12月27日 08:27   No.1554010
++ 島村英紀 (社長)…423回       
 2016年の熊本地震も、まったく予想できないところで起きた。九州の人た
ちにとって最大の自然災害は毎年のように襲って来る台風で、地震は想定外
だった。
 ちなみに 2005年に起きた福岡県西方沖地震は、日本史上、一度も地震が
起きたことがないところで起きた。九州も、地元の人が信じているほど、
地震が少ないわけではない。
 過去に起きたことが日本史上で知られている地震だけを拠り所にしている
政府の「将来の地震危険度」はじつは危ないものなのである。

.. 2018年12月27日 08:34   No.1554011


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