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■--東海第二原発には耐震性なし
++ 山崎久隆 (社長)…816回          

     「その2」
   免震装置に重大な欠陥が明らかに
  「欠陥原発の再稼働を認める規制委員会」
  (たんぽぽ舎副代表)

3.東海第二原発に耐震性なし

 2018年10月25日、衆議院第一議員会館で「東海第二原発の再稼働審査を
問う!原子力規制委員会院内ヒアリング集会 その4」が「再稼働阻止全国
ネットワーク」「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」の共催で開催さ
れた。
 規制委員会は7月13日の第3回のヒアリング集会の後の9月26日、新規制
基準に適合するとの審査書を決定した。
 東海第二原発は11月27日に運転開始40年になるため、今後20年の運転延長
も申請している。その最後の審査会合が11月7日に行われ、延長を許可する
決定を行った。

 これに先立ち、10月25日に開かれたヒアリング集会では、規制庁から17名
が出席、原電が規制委に提出した工事計画書の認可申請の補正書や審査書
案、それに対するパブリックコメントへの回答などを分析して、主催者側が
事前に伝えた質問事項13項目に規制庁が答えた。
 沢山の問題点が指摘されたが、この場で最も大きな問題としたのは「耐震
性の欠如」である。

 原発の耐震設計に使われる基準地震動(Ss)については、東海第二の
場合、数多くの変遷を辿ってきた。
 建設段階、まだ耐震設計審査指針が作られる以前の1972年設置許可申請時
には、わずか270ガルで設計され、その後耐震設計審査指針により380ガル、2006年の指
針見直しで600ガル(3・11震災後のストレステスト時点でも
600ガルを維持)、新規制基準適合申請時点で901ガル、そして最終的には
2014年に提出した補正書では1009ガルにまで引き上げられた。
.. 2018年12月04日 10:32   No.1541001

++ 山崎久隆 (社長)…817回       
 この結果、建設時には余裕があったはずの耐震性能は、大幅に裕度を削
られ、最後には基準地震動の揺れで破壊される可能性が極めて高い原発に
なっていた。
 地震のような複雑系の理論的予測は極めて困難であることは常識であ
り、1009ガルが国内で記録されてきた地震の揺れから考えても、過小評価で
あることは、わずか20年程度の最近の地震観測結果からも明らかだ。
 特に2007年、新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発で1699ガルの地震に遭遇
している。その地震はマグニチュード6.8、国内で最大でもない中規模
地震である。
 理論的予測が困難な場合は、これまでに観測された地震動の全てを超える
最大値を保守的に採用すべきだ。その値は少なくても4000ガルを下回ること
はない。

 その過小評価された基準地震動に遭遇してさえ、耐えられない部分とは、
原子炉圧力容器を上部で支える「スタビライザ」(防振装置)と呼ばれるも
のと格納容器の間の構造部分だ。
 このスタビライザの耐震評価値は、393メガパスカルだが、基準地震動の
発生により生ずる力は実に982メガパスカル。2.5倍にも達するものすご
い力(1平方センチメートルあたり9トンあまり)の荷重がかかるのである。

 これでは変形し破断する危険性が生ずるが、規制委員会に出された評価計
算書「上部シアラグ及びスタビライザの耐震性についての計算書」では、繰
り返し疲労を計算したら地震による揺れで基準値を超える振動の想定回数は
40回、それに対し耐えられる限界の値は48回、その累積疲労係数は「0.8
34」で1を下回るから合格であるという。
 0.834とは、破壊される終局限界のわずか1.2倍であることを意味
している。
 言い換えるならば地震の揺れが2割増し、あるいは基準地震動に達する
地震が2度起きれば破壊は免れない。

 しかも、その破壊が発生するのは、圧力容器を上部で支える重要構造
物だ。
 圧力容器の相対位置が保てなければ、多数の配管に強い力が掛かり、小口
径配管などは瞬時に破断してしまう。特に原子炉圧力容器の真下に取り付け
られている制御棒駆動系の配管185本は、わずか直径3センチ肉厚6ミリあま
りである。

.. 2018年12月04日 10:48   No.1541002
++ 山崎久隆 (社長)…818回       
地震の揺れに伴う圧力容器の変位が発生したらたちまち破断してしまい、
制御棒は入らなくなる。

4.欠陥原発の再稼働を認める規制委員会

 スタビライザの性能は、原電が作成した書類でさえ耐震性がないことが
分かった。さらに破断までの裕度は1.2倍。これは規制委員会自らが「
低サイクル疲労に対する裕度は1.5」としている内規にも反している。
 自分たちで決めた規制基準を守れないうえ、公開している文書は重要箇
所が「白抜き黒枠」で知ることさえできない。
 今回は、消し忘れていた(?)箇所から耐震評価の破綻部分が明確に
なった。
 東海第二原発はもはや廃炉にするほかに道はない。

.. 2018年12月04日 11:00   No.1541003
++ 島村英紀氏 (幼稚園生)…1回       
日本列島の最近の地震活動と噴火
 |  その2「大噴火が少なすぎる近年の日本」
 | 日本の地震や火山はプレートが起こす
 |  日本にある二つの火山帯
 | 日本を襲った過去の噴火
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載1」

《事故情報編集部》より
 好評だった11月17日と24日の2回開催された
『日本列島の最近の地震活動と噴火』講師・島村英紀(地球物理学者)氏の
講演レジュメを連載致します。
 先に[その2「大噴火が少なすぎる近年の日本」]を掲載します。
[その1「北海道地震、大阪北部地震ほか」]は、「その2」の連載終了後に
掲載致します。


●日本の地震や火山はプレートが起こす

 日本には地震が多いだけではなく、火山も多い。日本の陸地の面積は世界
の0.25%しかないのに、世界の陸上にある火山の7分の1も日本にあり、
一方、地震もマグニチュード(M)6を超える世界の大地震の22%が起きて
いる。ともに、面積あたりでは群を抜いている。
 プレートの動きは止まることはなく、太平洋プレートは年に約8cm、
フィリピン海プレートは約4.5cmの速さで日本列島に向かって動き続けて
いる。
 このプレートの動きによって、岩が我慢できる限界を超えると起きるのが
地震、そしてプレートが約100kmのところまで潜り込んだところでマグマ
が作られ、それが上がってきて起こすのが火山噴火だ。地震はプレートの
動きの直接、火山は間接的な反映になる。

日本にある二つの火山帯

 海洋プレートが日本列島の地下に潜っていったときに、上の図のように、
深さ90〜130kmのところでプレートの上面が溶けてマグマが生まれる。
 生まれたマグマはまわりの岩よりも軽いから、上に上がってくる。途中に
いくつかの「マグマ溜まり」を作り、最終的に火山の噴火を起こす。
 第一回の講演のときにお話ししたように、日本には4つのプレートがあ
る。これらのプレートはおたがいに衝突している。太平洋プレートが北米
プレートやフィリピン海プレートと衝突してそれらの下に潜り込む事件は
千島列島から東日本、そして西之島新島の先まで続いている。

.. 2018年12月07日 09:24   No.1541004
++ 島村英紀 (社長)…397回       
それゆえマグマが作られている場所は帯状になり、海溝に並行になる。
その結果、火山は日本列島を串刺しにした線上に並ぶ。東日本火山帯であ
る(右の図)。海溝からは西に離れているが、これは衝突した海洋プレー
トが斜めに潜り込んでいるからである。
 同じように西日本ではフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下
に潜り込むことによって西日本火山帯が作られている。日本にある活火山
はすべてこの二つの火山帯のどちらかにある。
 日本には活火山と認定されている活火山だけでも110もある。
 活火山とは過去1万年以内に噴火したことが分かっている火山で、研究
が進むにつれて増えてきている。
 なお、昔、学校でも教えていた「活火山・休火山・死火山」という分類
は、とても分かりやすい分類だったが、いまはない。それは、死火山だと
考えられていた御嶽山が1979年にいきなり噴火して以来、分類そのものが
なくなったからだ。学問的には「死火山」が今後噴火しないかどうか、分
からなくなってしまったのである。

●日本を襲った過去の噴火

 2014年9月に起きた御嶽山の噴火は60人以上という戦後最多の犠牲者を
生んでしまった。だが、噴火の規模からいえば日本で過去に起きた噴火に比
べると、この噴火はマグマが出てきたわけではなく、ごく小さなものだった。
 御嶽山が噴出した火山灰や噴石の合計の容積は東京ドーム(容積は124万
立方メートル)の1/3〜1/2ほどの量だった。
 ところで、19世紀までの日本では、各世紀に4〜6回の「大噴火」が起き
ていた。「大噴火」とは火山学で東京ドームの250杯分、3億立方メートル
以上の火山灰や噴石や熔岩が出てきた噴火をいう。御嶽山の噴火よりもは
るかに大きな噴火である。
 この「大噴火」は17世紀には4回、18世紀には6回、19世紀には4回
あった。
 ところが20世紀になると「大噴火」は1913〜1914年の桜島の噴火と1929年
の北海道・駒ケ岳の噴火の2回だけで、その後100年近くは「大噴火」は起
きていない。 

.. 2018年12月07日 09:35   No.1541005
++ 島村英紀 (社長)…398回       
日本列島の最近の地震活動と噴火
 |  その2「大噴火が少なすぎる近年の日本」(11/24講演)
 | 文明を途絶えさせた「カルデラ噴火」
 |  いままでが「静かすぎた」日本
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載2」

●文明を途絶えさせた「カルデラ噴火」

 過去の日本では、「大噴火」よりもさらに大きな「カルデラ噴火」も
あった。放出されたマグマは東京ドーム10万杯分にもなる噴火だ。噴火の
後、大きなカルデラが出来る。阿蘇ではカルデラの中に鉄道が二本も走って
いるほど大きい。

 だが、日本にはもっと大きなカルデラがある。北海道東部の屈斜路カルデ
ラで、これは日本最大のカルデラだ。
 カルデラ噴火は日本では過去10万年の間に12回ほど起きた。九州に多
かったが、北海道でも本州でも起きている。

 カルデラ噴火が日本でこれから先ずっと起きないことはあり得ない。間隔
は不揃いながら、数千年ごとにこれからも起き続けるに違いない。
 最後のカルデラ噴火が7300年前だったから、いつカルデラ噴火があっても
おかしくはない時期に来ているというべきであろう。

 ところで、いちばん近年のカルデラ噴火だった7300年前の九州南方にある
鬼界カルデラの噴火では、九州を中心に西日本で先史時代から縄文初期の文
明が断絶してしまった。
 縄文初期の遺跡や遺物が東北地方だけに集中しているのはこの理由からで
ある。
 世界でも火山の大噴火で滅びてしまった文明はいくつもある。たとえば
インドネシアのクラカタウ火山は西暦535年に大噴火して地元にあった高度な
文明が滅びてしまった。

 だがそれだけではすまなかった。この噴火で舞い上がった火山灰が成層圏
に上がって地球を広く覆ったために世界的な気候変動と冷害が起き、東ロー
マ帝国の衰退が起き、イスラム教が誕生し、中央アメリカでマヤ文明が崩
壊し、少なくとも四つの新しい地中海国家が誕生し、ネズミが媒介するペス
トが蔓延したことなど、人類にとっての大事件が次々に引きおこされたので
はないかといわれている。

.. 2018年12月10日 08:28   No.1541006
++ 島村英紀 (社長)…399回       
 いままでの100年ほどは、日本の火山活動も、首都圏の地震も「異常に」少
なかった。
 しかし、これらが東北地方太平洋沖地震という巨大地震をきっかけに「普
通」に戻りつつある。
 大きな不安材料は、2011年の東日本大震災(地震の名前は東北地方太平洋
沖地震)である。この超巨大地震は日本列島の地下にある基盤岩全体を動か
してしまった。それゆえ、首都圏直下地震も、以前よりは「起きやすく」
なっている。

 このM9.0という大地震は東日本全体を載せたまま北米プレートを東南方向
に大きく動かした。この種の地殻変動の測定は陸上に固定してあるGPS測
地によるものだから、海底部分では測定はできていないが、震源に近い宮城
県の牡鹿半島では5.4m、震源から遠くに行くにつれて小さくなるが、それで
も首都圏で30〜40cmもずれた。この変動は東日本だけではなく、広く日本
列島全体に及んでいる。このために日本各地に生まれたひずみが、それぞれ
の場所での地震や噴火のリスクを高めている。

 この東北地方太平洋沖地震は地震だけではなく、火山にも影響を及ぼして
いる。これから数年、あるいは数十年かかって、じわじわ影響が出てくるの
である。
いままでM9を超える地震は世界で7つ知られているが、日本以外では例外
なく火山の噴火が、地震後(翌日から数年後)に、近く(1000km以内)で
起きている。なかには数百年以上の休止期間の後、噴火した火山もある。

 M9を超える地震は2004年のスマトラ沖地震を除き、日本からカムチャッ
カを通ってアラスカ、南米までの環太平洋地域で起きている。
 大地震後に起きたこれらの噴火はいずれも2014年に起きた御嶽山の噴火よ
りも大きいもので、しかも多くの場合には複数の火山が噴火した。もし他国
と同様の噴火が日本で起きるとすれば、1000kmとは本州全部を覆ってしま
うほどの大きさである。

 江戸時代から現在までの首都圏の地震活動を見ると、不思議なことに1923
年の関東地震以来の近年の90年間は異常に静かだったことが分かる。たとえ
ば東京では、前に述べたように、この間に震度5は4回しかない。しかしそ
の前の300年間はずっと多かったし、被害地震も多かった。

.. 2018年12月10日 08:36   No.1541007
++ 島村英紀 (社長)…400回       
実は元禄関東地震のあとも70年間、静かな期間が続いたのである。海溝型
地震が首都圏を襲った影響である可能性がある。
 しかし、静穏期はいずれ終わる。東日本大震災のあと、首都圏は一時の静
穏期間が終わって、いわば「普通の」、つまりいままでよりは活発な地震活
動に戻りつつあるのだろう。

.. 2018年12月10日 08:53   No.1541008
++ 島村英紀 (社長)…401回       
日本列島の最近の地震活動と噴火 その2
 |  「大噴火が少なすぎる近年の日本」(11/24講演)
 | 富士山の宝永噴火は宝永地震の 49 日後だった
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載3」

●富士山の宝永噴火は宝永地震の 49 日後だった

 「地震が誘発した」有名な噴火がある。1707 年の宝永地震の 49 日後に富士山
が大噴火した宝永噴火だ。
この噴火は富士山の三大噴火のひとつになった大きな噴火だった。関東地方にも
多量の火山灰を降らせた。この火山灰は、噴火後わずか 2 時間で江戸に達した。
富士山から新宿まで 100km しか離れていないことを忘れてはいけない。
 三大噴火のあとの二つは平安時代に発生した「延暦の大噴火」と「貞観の大噴
火」である。そのほか、平安時代 400 年間に、富士山は 10 回も噴火している。
平安時代のはじめの 300 年の間に 10回(一説によれば 12回)も噴火したのであ
る。まし
 宝永噴火以来、富士山が 300 年間も噴火しない状態が続いているのは異例であ
る。また、世界的に見ても、長い間噴火しなくて、次に噴火したときには大きな
噴火になる例が多い。
 いま恐れられている「南海トラフ地震」は宝永地震が再来するような大きな規
模ではないかと言われている。フィリピン海プレートが年々動いているので、地
震エネルギーも年々蓄積している。じつはひとつ先代の地震、東南海地震(1944
年)と南海地震(1946 年)は歴代の先祖と比べても小さめだった。つまり、残って
いる地震エネルギーが次回に加算される可能性がある。
 もしこの地震が起きれば、以前と同じように火山の噴火を誘発する可能性があ
る。ちなみに、南海トラフ地震の先祖のひとつである慶長地震(1605 年)のすぐ
あとには八丈島の火山が噴火した。

.. 2018年12月10日 10:43   No.1541009
++ 島村英紀 (社長)…402回       
日本列島の最近の地震活動と噴火 その2
 |  「大噴火が少なすぎる近年の日本」(11/24講演)
 | 地震予知や噴火予知の難しさ
 └──── 島村英紀氏のたんぽぽ舎・講演レジュメより…「連載4」

●地震予知や噴火予知の難しさ

 地震や火山も天気と同じように予報ができるのではと思っているかもしれ
ない。
 しかし天気予報は「大気の運動方程式」というものが分かっていて、それ
に日本中で1300地点以上もあるアメダスなどで得たデータを入れると、明日
が計算できる仕組みだ。
 他方、地震にも火山にも、残念ながらまだ方程式は見つかっていない。
そのうえ基盤岩の上に約3〜4kmも柔らかい堆積物をかぶっているので基
盤岩の中の測定データはほとんどない。データも方程式もない二重苦なので
ある。
 それでも地震予知や噴火予知が唯一の頼りにしてきたのは、方程式がなく
ても「確実な前兆」が見つかれば、実務的・経験的に地震予知ができるので
はないかと思われていたからだ。いわば次善の策であった。

 こうして、「前兆を見つけるための」地震予知は、かなり昔から取り組ま
れてきたテーマになっている。たとえば地震予知計画が始まったのは1965
年で、半世紀以上前のことである。
 前震に限らず、種々の地震活動の変化や、地殻変動観測や、電磁気観測
や、地球科学観測などによる前兆の検出が試みられてきた。しかし、いま
だに、これといった手法は見つかっていない。
 現在の学問では、たとえば中央構造線のどこかで、いずれ地震が起きるこ
とは分かっている。しかし、どこで、いつ、起きるのかは分かっていな
かった。それが、2016年に熊本で起きてしまった。現在の地球物理学の限界
なのだ。
 他方、噴火予知も難しい。火山も、その火山で以前にあったり他の火山
であった「前兆」があっても噴火しない例が多い。予知は地震も火山も難し
いのが現状なのだ。

 1997年のことだ。日本中の火山学者や気象庁がピリピリしていた。岩手県
盛岡市の北西20kmほどにある岩手山が、いまにも噴火しそうだったから
だった。
 それは火山性の地震活動から始まった。1997年12月末から岩手山の西側山
腹の浅いところで群発地震が始まって増加してきた。

.. 2018年12月12日 08:45   No.1541010
++ 島村英紀 (社長)…403回       
そして翌1998年2月になると低周波地震も観測されるようになった。低周
波地震は火山の地下でマグマや熱水が動くことで発生するものだと考えられ
ている。噴火に近づいたに違いない。
 ついで、東北大学や国土地理院が測っていた地殻変動観測データにも変化
が現れた。噴火予知のカギになる山体膨張である。そして4月の末になると
火山性地震がさらに頻発するようになり、傾斜計にも大きな変化が出た。
これだけの「噴火の前兆」が揃った。

 しかし、固唾を呑んで見守っていた火山学者たちや気象庁を尻目に、岩手
山は噴火しなかったのである。 これらの「前兆」だったはずのいろいろな活
動は6〜7月をピークに、8月以降はしだいに下がっていってしまった。
 2014年9月に戦後最大の火山災害になってしまった御嶽山噴火のときに
は、火山性地震が前兆だったから来るべき噴火を警告すべきではなかったか
という議論がある。
 だがこの御嶽山の「前兆」は小規模な群発地震が約2週間前にあったが、
その後おさまってしまっていたものだ。しかもその前の、人的被害がな
かった2007年の小噴火のときは火山性微動が2ヶ月も前から出ていた。

 御嶽山に比べると、はるかに多くのもっともらしい「前兆」があっても、
岩手山のように噴火しないことがよくある。噴火予知は一筋縄ではいかない
のである。
 2015年8月に気象庁で行われた桜島の緊急記者会見も同じだ。いままでに
ない噴火が起きるのではと思われたが、結局、なにごとも起きなかった。
桜島ほど最近の噴火経験が多くて研究者が張り付いているところでさえ、
噴火予知はできなかったのである。

 ところで、気象庁が発表している「噴火警戒レベル」は 2014年の御嶽
山や2015年8月の桜島で明らかになってしまったように、あてにならない
ものであることを知っている必要がある。
 「噴火警戒レベル」には、残念ながらまだ学問的な裏付けはない。いまの
ところ、すべて「後追い」でレベルを上げているだけなのである。

.. 2018年12月12日 08:54   No.1541011
++ 島村英紀 (社長)…404回       
御嶽山が噴火して半年後の2015年春、火山噴火予知連絡会の検討会は「噴
火速報」を新たに導入するほか、「噴火警戒レベル 1」の表現を「平常」
から「活火山であることに留意」と改め、観測機器の増強や火山専門家の育
成を提言した。

 しかし「平常」を「活火山であることに留意」と文言を替えただけでは、
なにも変わらない。噴火口がある山頂まで行っていいことも、噴火警戒レベ
ルが学問的な裏付けがなく、経験と勘に頼ったものでしかないことも同じだ。
 あえて言えば、レベル 1のときに火山災害が起きてしまったときの責任を
登山者に押しつけて、お役人の責任を少しでも軽くしたいだけのものだろう。

.. 2018年12月12日 09:00   No.1541012


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