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幣原内閣で、松本委員会が中心になって憲法を改憲しよう、いや明治憲法のままでいいのだ、と議論をしているとき、GHQには、諸外国から「天皇の戦争責任をどうしても放っておくことはできない」という声が突きつけられていました。
そのつもりはまったくないマッカッサーも、さすがに「そんな意見は聞かん」とひとことで抑えてしまうわけにはいきません。もっともアメリカ国務省ではまだ、やはり天皇の戦争責任を追求すべきではないかという意見と、いや天皇は別人格であるという。
なにより戦争を止めるときにどれほど天皇の力が大きかったか、絞首刑にするなんて事になると日本国民は黙っていないだろうという意見とがあって揉めている最中で、マッカッサーは、なんとか天皇を法廷に引き出さないようにする手段はないかと考えていました。
そんなある時、マッカッサーがつぶやくように、待医のエグバーグ中佐に次のようなことを言いました。「天皇の戦争責任を免れさせるためには、日本人の言う天皇は神である、つまり現人神であるという信仰を、天皇自らが否定すれば、連合国も歓迎し、その戦争責任を追及する声もいくつかやわらぐのではないか」
これをエグバーグ中佐が、同僚や民間情報教育局(CIE)のハロルド・ヘンダーソン中佐に話しました。するとヘンダーソン中佐は「いいアイディアかもしれない、日本側でこれについて考えてもらえれば」と、友人でもある学習院大学の英文教授レジナルド・ブライスさんに意向を伝えました。
つまり、天皇が自らの神格否定を詔書で発表できないだろうか。GHQもそれを期待している、というように話したのです。ブライスさんは、その経緯を学習院の山梨勝之進院長―覚えていますか。ロンドン軍縮条約で艦隊派と条約派がもめた時の条約派の旗頭ともいえる元海軍次官です。
のちに艦隊派が天下を取ったために早めに海軍を予備役となり、戦後は学習院の院長を務めていました―に話しました。それからはトントンと話が具体化していき、アメリカがまず原案を作りました。この英文があまりうまくなかったので、英語練達の幣原首相が手を入れ、さらにそれを翻訳する際に山梨さんから体裁を整えて詔勅が出来上がりました。
ただし、これがいかにもひどい日本語なのです。アメリカ人が
.. 2018年05月21日 13:08 No.1407001
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