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■--街に広がる危険な建築物
++ 島村英紀 (社長)…330回          

 建て替えか閉館か、迫られる決断
 | 地下でプレートが3つも衝突している首都圏では
 |  地震の悩みが尽きない
 | 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その245
 └──── (地球物理学者)

◎ 3月末に東京都が震度6強以上の地震で倒壊する恐れがあるビル名を
初めて公表した。耐震診断の調査対象になったうちの3割もの249棟で倒壊
の恐れがあるという。
 そのひとつは、紀伊国屋書店の新宿本店が入るビルだ。新宿駅東口から
伊勢丹に向かう目抜き通りにある。1964年の完成で、建築家の前川國男が
設計した。
 また、いつも人が多い「渋谷109」や中野区・中野ブロードウェイの商業
ビルや、ニューオータニ(東京・千代田区)の本館に隣接するビルや、千
代田区・北の丸公園にある科学技術館ビルも倒壊する危険があると発表された。

◎ 東京都以前にも、これまでに診断結果を公表した自治体がある。南海
トラフ地震に襲われる可能性が高い静岡などだ。
 静岡県は2017年1月に伊東市の「サザンクロスリゾート」ホテル棟など
の名前を公表した。静岡県では公表の対象となった県内のホテルや旅館
29施設のうち、震度6強以上で倒壊の危険性が「ある」または「高い」と
判定されたのは16施設と半数を超えている。
 倒壊の恐れがあると自治体によって発表されたホテルや百貨店では、営
業を休止したり閉店したりする動きが相次いでいる。
 2016年には和歌山・串本町で老舗の「浦島ハーバーホテル」が閉館した
し、青森・むつ市でも「ホテルニュー薬研」が営業を断念した。

◎ 都内のビルも今回の公表で改修や建て替えをするか、閉館するかの決
断を迫られる。
 公表は悪いことではあるまい。不特定多数の人々が集まるビルが大地震
で危ないかどうか、人々が知っている必要があろう。
 しかし一方で、今回の調査は限られたものについてだけだということも
知っている必要がある。
 それは、「1981年以前の旧耐震基準で建てられて不特定多数の人が集ま
る一定規模以上の施設のほか、災害時に緊急車両が通る道路の幅の2分の
1以上の高さの建築物」だけが対象になったことだ。
.. 2018年04月25日 08:23   No.1388001

++ 島村英紀 (社長)…331回       
◎ 判定の基準は自治体によって違う。たとえば宮城・仙台市では「不特
定多数の者が利用する大規模建築物」として「病院、店舗、旅館では3階
以上で5000平方メートル以上」「避難上配慮を要する者が利用する大規模
建築物として老人ホームでは2階以上で5000平方メートル以上」「小学校
と中学校では2階以上で3000平方メートル以上」「幼稚園・保育所は2階
以上で1500平方メートル以上」としている。
 つまり大規模で、災害時に緊急車両が通る道路の沿道建築物だけが調査
の対象になっていて、それ以外では調査や公表の対象になっていない。
 小規模のホテルや商業施設や劇場なら安全だということはもちろんない。
公表していないだけだ。

◎ そのうえ都心部には木造住宅密集地帯が多くある。個人の住宅がほと
んどのこれらは大地震で大きな被害を生むのではないかと心配されている。
費用のかかる耐震診断や耐震補強の義務はないので、していない家は多い。
 地下でプレートが3つも衝突している首都圏では地震の悩みが尽きない
 のだ。

.. 2018年04月25日 08:32   No.1388002
++ 山崎久隆 (社長)…761回       
原子力規制庁はいつから「社会通念」を論ずる組織になったのか
 |  自ら作った「火山ガイド」を無効化
| 原子力規制庁の推進庁ぶりますます
 └──── (たんぽぽ舎)

 12月13日に広島高裁が原発差止仮処分決定において日本で初めて規制庁
の作った「火山ガイド」に基づき、阿蘇第四噴火規模のカルデラ噴火が起
きた場合、伊方原発敷地にも大きな影響を与えることに着目した「運転差
止決定」を出した。
 すなわち広島高裁決定は、火山ガイドの本来の適用結果を明確に示した
ものだ。
 伊方原発から約130キロ離れた阿蘇カルデラで約9万年前に発生した過去
最大の噴火で「火砕流が原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価
できない」と指摘し、規定に沿って「立地不適だ」と結論付けたのである。
 これにショックを受けたのが規制委員会だった。
 自ら制定した火山評価ガイドが運転差止の根拠とされたため、これを無
化しようと、3月7日に巨大噴火についての「見解」を出し、破局カルデ
ラ噴火を「低頻度な事象」と位置付け、巨大噴火に伴う原子力災害のリス
クを「社会通念上容認される水準」としてしまった。
 この見解を出したことで、原子力規制庁が行う規制そのものが、法律や
規則に則ったものではなく、恣意的、政治的に決定されてきたものであり、
今後もそのような観点で評価されうることを名実ともに示してしまった。
 規制委員会の規制基準破壊というほかない。

◇火山と地震と津波

 東海第二原発を所有する日本原電にとって心穏やかではなかろう。
 この原発の基準津波は17.1メートルであり、対策上海抜20メートルの防
潮堤を建設することとされている。ところが規制庁の審査会合では、東海
第二原発を襲う津波に「超過津波」という概念を導入し30メートル超級を
も想定した。
 その結果、敷地の水没は前提となり防潮堤内の海水排出設備の整備、建
屋の水密化、代替電源の確保、代替冷却設備の整備などが要求された。
 超過津波はフラクタイル・ハザード曲線上では1000万年に一回以下の確
率である。しかしそれでも想定することは必要だから規制庁は規制基準に
加えた。

.. 2018年04月27日 08:23   No.1388003
++ 山崎久隆 (社長)…762回       
そのこと自体はもちろん間違ったことではない。むしろ超過津波として
確率的安全性評価で基準津波を超える規制を行うのだから、例えば55メー
トル級などともっと高い津波を想定して良いはずであり、これでも過小評
価の批判を免れないと思う。
(東海第二原発差し止め訴訟原告側書証)
 ところが火山について規制委は全く逆の判断をした。
 津波や地震は実際に起き、福島第一原発事故を引き起こしたため、例え
1000万年に一度という確率であっても無視することは出来ないが、火山は
最近は破局噴火が起きていないから「無視して良い」とはならない。
 阿蘇第四噴火が起きたのは約9万年前、この確率はかなり高い。鬼界カ
ルデラ(鹿児島県薩摩半島沖約50キロの海底火山で、最近噴火した口永良
部島の近傍)の噴火となるとわずか7300年前、火山学的な時間としては、
つい最近のことだ。
 基準津波と火山ガイドで、全く異なる考え方を持ち込んでしまったこと
で、自然災害への備えの基準はますます曖昧になった。
 津波と同様に、地震についても所によっては厳しい想定をしておきなが
ら、一方では依然として甘い基準のままで放置されているところも多々ある。

◇耐震性にも重大な欠陥

 耐震評価についても極めて危険な事態が進行中だ。
 東海第二原発は、建設時270ガルの地震想定が、累次にわたり想定変更が
行われた結果、現在は1009ガルとなっている。4倍ちかい増大だが、建屋
の耐震壁が4倍の厚さになったわけではないし、圧力容器を支えるボルト
の直径が4倍の太さになったわけでもない。
 これまで使ってきた設備、装置類はそのままで、地震の想定だけがかさ
上げされた。耐震設備例えば防振装置などは強化されたところもあるが、
基本構造はそのままである。
 結果、クリフエッジ(破壊される力の掛かる点)までの余裕が食い潰さ
れてきた。
 事業者も規制庁も「まだ裕度があるから持つ」というが、最初のころは
3倍以上の裕度が、現在は1.何倍と、微妙な余裕。計算を少し変えれば
簡単に覆る程度が残っているだけである。

.. 2018年04月27日 09:11   No.1388004
++ 山崎久隆 (社長)…763回       
圧力容器を下で支えるボルト、原子炉圧力容器の基礎ボルトは、規制基
準改定前の保安院によるバックチェック時点と1009ガルまで基準地震動が
かさ上げされた現在とでは大きく余裕を食い潰し、ギリギリになっている。
 また、圧力容器を上部で支え、水平方向の揺れを吸収する役割を持つ圧
力容器スタビライザは、もはや限界を超えている。
 原電は自らのホームページで次のように主張する。
『安全裕度評価結果の概要』『設計上で想定している地震(基準地震動600
ガル)の1.73倍大きい地震(約1038ガル相当)に耐えられることを確認。
 安全対策の強化前と変わらず、耐えられる地震の大きさは「原子炉圧力
容器スタビライザ」が損傷するまでの地震の大きさであり、想定の1.73倍
です。』これはストレステストでの評価だ。
 クリフエッジが1038ガルで、基準地震動が1009ガルに引き上げられた結
果、裕度が1.03倍にまで食い潰されてしまった。実際に地震が起きたら、
基準地震動を超える地震に遭遇しなくても圧力容器スタビライザは破損す
るだろう。基準地震動を下回っても揺れの評価が誤っていれば同じことが
起きるからだ。
 東海第二とは、そんな原発である。
<火山影響評価ガイド>
 原子力規制委員会が策定した審査の内規。(1)原発から160キロ圏内にあ
り、将来の活動可能性がある火山について、原発運用期間(原則40年)に
活動する可能性が十分小さいかどうかを判断する(2)判断できない場合
は運用期間に発生する噴火規模を推定する(3)推定できない場合は、対
象火山の過去最大の噴火規模を想定し、火砕流が原発に到達する可能性が
十分小さいかどうかを評価する―と定めている。火砕流到達の可能性が十
分小さいと評価できない場合は「立地不適」となる。
(大分合同新聞3月30日より)
            (月刊たんぽぽニュース4月号より)

.. 2018年04月27日 09:20   No.1388005
++ 今井孝司 (中学生)…39回       
政府の地震調査委員会「長期評価の手法」の有効性について
 |  海溝型地震(8件)を検証
 └──── (地震がよくわかる会)

○初めに
 前回の4/6(【TMM:No3334】)で地震調査研究推進本部の地震調査委員会の長期評
価(活断層帯の地震)の手法の有効性についてアップしました。
 今回は、海溝型地震の長期評価の手法の有効性を検証したものです。
 私は、地震の専門家ではありませんので、厳密な検証はできないかもしれませ
んが、専門家まかせにするのではなく、自らの手で、検証することは意義がある
と考え、当会HP(こちら )特集コーナーにタイトル名「長期評
価(海溝型地震)」で記事をアップしました。
 よろしかったら、ご覧ください。

○長期評価の手法の有効性を検証した海溝型地震(8件)
(1)2001/03/24 芸予地震(M6.7)
(2)2003/05/26 三陸南地震(宮城県沖地震・2003年)(M7.0)
(3)2003/09/26 十勝沖地震(M8.0)
(4)2004/11/29 北海道釧路沖での地震(M7.1)
(5)2005/08/16 宮城地震(8.16宮城地震)(M7.2)
(6)2011/03/09 宮城県北で地震(M7.3)
(7)2011/03/11 東日本大震災(M9.0)
(8)2016/11/22 福島県沖地震(M7.4)

○まとめ
 私見ですが、海溝型地震の長期評価の手法の有効性に関して、8件の地震中、
有効性無しが3件、一部有効性有りが3件、有効性有りが2件という結果となり
ました。詳細は当会HPでご覧ください。


.. 2018年05月07日 08:21   No.1388006
++ 山崎久隆 (社長)…764回       
原子力規制庁はいつから「社会通念」を論ずる組織になったのか
 | 自ら作った「火山ガイド」を無効化
 | 原子力規制庁の『原子力推進庁』ぶりますます
 └──── (たんぽぽ舎副代表)

 2017年12月13日に広島高裁が原発差止仮処分決定において日本で初めて規制庁
の作った「火山ガイド」に基づき、阿蘇第四噴火規模のカルデラ噴火が起きた場
合、伊方原発敷地にも大きな影響を与えることに着目した「運転差止決定」を出
した。
 すなわち広島高裁決定は、火山ガイドの本来の適用結果を明確に示したものだ。
 伊方原発から約130キロ離れた阿蘇カルデラで約9万年前に発生した過去最大の
噴火で「火砕流が原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価できない」と
指摘し、規定に沿って「立地不適だ」と結論付けたのである。

 これにショックを受けたのが原子力規制委員会だった。
 自ら制定した火山評価ガイドが運転差止の根拠とされたため、これを無効化し
ようと、3月7日に巨大噴火についての「見解」を出し、破局カルデラ噴火を
「低頻度な事象」と位置付け、巨大噴火に伴う原子力災害のリスクを「社会通念
上容認される水準」としてしまった。
 この見解を出したことで、原子力規制庁が行う規制そのものが、法律や規則に
則ったものではなく、恣意的、政治的に決定されてきたものであり、今後もその
ような観点で評価されうることを名実ともに示してしまった。
 原子力規制委員会の規制基準破壊というほかない。

◎火山と地震と津波

 東海第二原発を所有する日本原電にとって心穏やかではなかろう。
 この原発の基準津波は17.1メートルであり、対策上海抜20メートルの防潮堤を
建設することとされている。ところが規制庁の審査会合では、東海第二原発を襲
う津波に「超過津波」という概念を導入し30メートル超級をも想定した。
 その結果、敷地の水没は前提となり防潮堤内の海水排出設備の整備、建屋の水
密化、代替電源の確保、代替冷却設備の整備などが要求された。
 超過津波はフラクタイル・ハザード曲線上では1000万年に1回以下の確率であ
る。しかしそれでも想定することは必要だから規制庁は規制基準に加えた。

.. 2018年05月09日 08:26   No.1388007
++ 山崎久隆 (社長)…765回       
そのこと自体はもちろん間違ったことではない。むしろ超過津波として確率的
安全性評価で基準津波を超える規制を行うのだから、例えば55メートル級などと
もっと高い津波を想定して良いはずであり、これでも過小評価の批判を免れない
と思う。(東海第二原発差し止め訴訟原告側書証)

 ところが火山について原子力規制委員会は全く逆の判断をした。
 津波や地震は実際に起き、福島第一原発事故を引き起こしたため、例え1000万
年に一度という確率であっても無視することは出来ないが、火山は最近は破局噴
火が起きていないから「無視して良い」とはならない。
 阿蘇第四噴火が起きたのは約9万年前、この確率はかなり高い。鬼界カルデラ
(鹿児島県薩摩半島沖約50キロの海底火山で、最近噴火した口永良部島の近傍)
の噴火となるとわずか7300年前、火山学的な時間としては、つい最近のことだ。
 基準津波と火山ガイドで、全く異なる考え方を持ち込んでしまったことで、自
然災害への備えの基準はますます曖昧になった。
 津波と同様に、地震についても所によっては厳しい想定をしておきながら、一
方では依然として甘い基準のままで放置されているところも多々ある。

◎耐震性にも重大な欠陥

 耐震評価についても極めて危険な事態が進行中だ。
 東海第二原発は、建設時270ガルの地震想定が、累次にわたり想定変更が行われ
た結果、現在は1009ガルとなっている。4倍ちかい増大だが、建屋の耐震壁が4
倍の厚さになったわけではないし、圧力容器を支えるボルトの直径が4倍の太さ
になったわけでもない。
 これまで使ってきた設備、装置類はそのままで、地震の想定だけがかさ上げさ
れた。耐震設備例えば防振装置などは強化されたところもあるが、基本構造はそ
のままである。
 結果、クリフエッジ(破壊される力の掛かる点)までの余裕が食い潰されてきた。

.. 2018年05月09日 08:35   No.1388008
++ 山崎久隆 (社長)…766回       
 事業者も原子力規制庁も「まだ裕度があるから持つ」というが、最初のころは
3倍以上の裕度が、現在は1.何倍と、微妙な余裕。計算を少し変えれば簡単に
覆る程度が残っているだけである。
 圧力容器を下で支えるボルト、原子炉圧力容器の基礎ボルトは、規制基準改定
前の保安院によるバックチェック時点と1009ガルまで基準地震動がかさ上げされ
た現在とでは大きく余裕を食い潰し、ギリギリになっている。
 また、圧力容器を上部で支え、水平方向の揺れを吸収する役割を持つ圧力容器
スタビライザは、もはや限界を超えている。

 原電は自らのホームページで次のように主張する。
 『安全裕度評価結果の概要』『設計上で想定している地震(基準地震動600ガル)
の1.73倍大きい地震(約1,038ガル相当)に耐えられることを確認。
 安全対策の強化前と変わらず、耐えられる地震の大きさは「原子炉圧力容器ス
タビライザ」が損傷するまでの地震の大きさであり、想定の1.73倍です。』
これはストレステストでの評価だ。
 クリフエッジが1,038ガルで、基準地震動が1,009ガルに引き上げられた結果、
裕度が1.03倍にまで食い潰されてしまった。
 実際に地震が起きたら、基準地震動を超える地震に遭遇しなくても圧力容器ス
タビライザは破損するだろう。基準地震動を下回っても揺れの評価が誤っていれ
ば同じことが起きるからだ。
 東海第二原発とは、そんな原発である。

<火山影響評価ガイド>
 原子力規制委員会が策定した審査の内規。
(1)原発から160キロ圏内にあり、将来の活動可能性がある火山について、原発
運用期間(原則40年)に活動する可能性が十分小さいかどうかを判断する
(2)判断できない場合は運用期間に発生する噴火規模を推定する
(3)推定できない場合は、対象火山の過去最大の噴火規模を想定し、火砕流が
原発に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する−と定めている。
 火砕流到達の可能性が十分小さいと評価できない場合は「立地不適」となる。
(大分合同新聞3月30日より)
(初出:月刊「たんぽぽニュース」2018年4月No26)


.. 2018年05月09日 09:51   No.1388009
++ 島村英紀 (社長)…332回       
都市化に翻弄される気象観測 数十年間に20〜30%の観測点が移転
 | 気象観測は連続性が大事だ。 過去からのデータが重要である。
 | 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識その246
 └──── (地球物理学者)

 「暑さ日本一」を観光資源にもしていた群馬・館林(たてばやし)のア
メダス観測点がこの6月に移動する。
 気温はもともと気象庁のアメダスのデータだったから、観測点が移動す
れば変わってしまう可能性が大きい。
 館林のアメダスはフェンスと低木で囲われている。だが周囲に建物が密
集していて、駐車場やアスファルト舗装の道路と隣接している。そのうえ
地面が本来のアメダスのように芝生ではなく、防草シートで覆われている。
このため高温になりやすいのではないかとの評判があった。
 移転先は館林高校のグラウンド。田畑が点在する場所だ。さて、今夏以
降の「暑さ日本一」がどうなるのだろう。気温が高い日に商店街が行うセ
ールもなくなるのだろうか。
 館林に限らず、まわりに家が建てこんでしまったり、ビルが建って風速
や気温が変わってしまった気象観測点は多い。
 東京の千代田区大手町にある気象庁の観測点も都市化に押されて移転を
繰り返している。地下に地下鉄が5本も通り、まわりを高いビルに囲まれ
てしまったからだ。
 地震計は1977年に近くの北の丸公園に移動した。感度が高い地震計は100
メートル先を人が歩く振動でも感じる。移転先でも、決して十分静かでは
ないが、「東京で観測した」地震計としての価値がある。幸い地震計は、
近くに場所を移しても、雑音レベルこそ違え、観測値に変化はない。
 だが、気温や風速などの観測は「その地点」で継続しなければ、観測値
が違ってしまう。
 風速や日照量の観測は高いビルに囲まれてしまったので、2007年から北
の丸公園の科学技術館の屋上に移した。
 気温や湿度の観測も、2014年末に北の丸公園に移した。だが900メートル
動いただけなのに問題が起きた。周囲が広い草地や木々に囲まれている公
園では、夏は熱帯夜がずっと少なくなり、冬は最低気温が零下の日がずっ
と多くなってしまったのだ。
 

.. 2018年05月14日 10:27   No.1388010
++ 島村英紀 (社長)…333回       
気象観測は連続性が大事だ。世界的な地球温暖化が問題になっている折
り、気象観測の過去からのデータが重要である。
 そのうえ、東京など都会ではヒートアイランド現象の監視も大切だ。
だが、気温の観測値がずれてしまったら、これにも影響する。
 東京だけではない。全国の気象庁の観測点のうち、とくに都市の観測点
は20−30%もがこの数十年間に移転した。主な理由は政府関係の省庁の
「合理化」。合同庁舎への移転のためだ。
 東京の気象庁の本庁も、あと2年で港区虎の門に移ることになっている。
これは「国有財産の有効活用」という政府の方針のためだ。いま気象庁で
東京の気象観測を担当している東京管区気象台は都下清瀬市に移る。
 だが北の丸公園に移した観測点はこれ以上動かしたくない。
 観測点の維持のために清瀬から1時間以上もかけて来るのは大変だ。そ
れゆえ虎の門の新庁舎の一室に東京管区気象台の分室を作って、北の丸公
園の観測点の維持にあたることになった。
 気象観測は都会化の波に翻弄されているのだ。

.. 2018年05月14日 10:52   No.1388011


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