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“イメージ”流されてはいけない 藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)
筆者はブログやフェイスブックやツイッターなどの、いわゆるSNSに手を付 けない。一番の理由は、思い込んだままにうそを書くのを避けるためだ。(中略) しかるに世間にはファクトチェックなきネット言論の形成する“イメージ”を 信じ、それに反するマスコミの記事を「マスゴミ」呼ばわりする本末転倒の傾向 が見受けられる。(中略)
〇「日本経済は中国に圧倒されている」という世の“イメージ”と正反対の事実 を書いただけで、原数字の確認もなしに筆者の方が間違っていることにされたの は、勉強になった。(中略) 昨年、自民党のある参議院議員が、「藻谷さん、中国は対日黒字ですよ」と語 るので、「香港を足さなくては」と指摘したら、スマホで数字を確認して納得さ れていた。しかし政治家の多くはそういう確認もせず、「日本は中国に負けてい る」という自虐的“イメージ”にのっとって、バイアスのかかった政策判断を下 したりしているのではないだろうか。
〇 沖縄県名護市長選で、辺野古沖海上への軍用滑走路新設反対を明確にした現 職が「経済活性化」を掲げた新人に敗れた。これだけ聞くと「名護の景気はさぞ 悪いのだろう」と感じられる。だが、実際には同市の人口増加率(10年→15年)は 人口5万人以上の全国市町の中で上から64番目、三大都市圏を除いた市町の中で は22番目であり、「これが“不振”なら“活性化”とは何か」と聞きたくなる。 (中略) 付け加えれば「新設予定」の海上滑走路は大地震の巣・沖縄トラフに正対する。 「津波リスクのある沖縄東岸の洋上に、軍用滑走路を設けるのは無謀だ」と指摘 しているのは筆者だけではないが、なぜか大きな話題になったことがない。(中略) 〇 筆者は今年も“イメージ”に反する事実を書き続ける。 「事実は提示されたが“イメージ”に負けた”」という事実だけでも、後世に 残すために。(2月11日より抜粋)
.. 2018年02月26日 09:20 No.1341001
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