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■--沖縄を襲った4回の大津波
++ 島村英紀 (社長)…306回          


  石垣島に運ばれてきた1000トンの岩
  警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識その235
   (地球物理学者)

◎日本人が知らない過去の大地震や大津波はまだ多い。
 日本人が日本に住みついてからの歴史は、日本をめぐるプレートの歴史と比べ
て、はるかに浅い。まして、書き残した歴史はさらに短く、京都や奈良でも千数
百年、東日本や北海道では100〜300年もないことが多い。
草津白根山で今回噴火した本白根山(もとしらねさん)でも、じつは3000〜
10000年前までにはさかんに噴火していた。このことは地質学の調査から分かって
いたが、噴火を見て書いた歴史は300年あまりしかなく、その間の噴火は草津白根
山の北部、湯釜付近に限られていた。それゆえ草津白根山の北側だけが監視され
ていて、南部はノーマークだった。

◎このたび、沖縄県・先島諸島で、過去二千数百年に大津波が4回あったことが
わかった。先島諸島とは宮古島や石垣島などの島々である。
 1771年に大津波が襲ってきたことはすでに知られていた。八重山地震による津
波「明和の大津波」だ。日本で知られた最大の津波だった。
揺れによる被害はほとんどなかったところに、いきなり襲ってきた津波の被害
は甚大だった。全滅した村も多く、石垣島が津波前の人口を回復したのは、140年
後の大正時代になってからだった。この津波で宮古・八重山の両列島で死者行方
不明者が12000人以上にものぼった。

◎今回、地質学的な調査から分かったのは、この1771年の津波なみ、あるいはも
っと大きな津波が3回も襲ってきたことだ。調査は海底の砂が陸地深くまで運ば
れていたことを調べた。
じつは、過去に1771年のよりもっと大きな津波があったことはうすうす分かっ
ていた。それは石垣島の東海岸に途方もない大きさの岩が残っているからだ。サ
ンゴが沖合で作った石灰岩である。この岩はかつての大津波が海底から運んでき
たものだ。大きなものは大型バス二台が並列駐車したくらいで、重さは1000トン
もある。
.. 2018年02月16日 08:37   No.1334001

++ 島村英紀 (社長)…307回       
今回の調査では、過去二千数百年間に大津波が4回あったことが分かった。
1771年は最後になる。もし大地震が繰り返すならば、そろそろ次が来ても不思議
ではない時期になっているのだ。

◎さる1月に報じられた北海道の東方沖、千島海溝での過去の大津波も知られて
いなかった。先住民族が文字を持たなかったこともある、
北海道東部でも地質学的な調査から分かった。海底の砂が陸地深くまで運ばれ
ていたのだ。北海道沖の大地震も、近々また襲ってきても不思議ではない時期に、
すでに達している。
 このほか、西日本の日本海側でも、かつては大地震や大津波がないところとい
われたが、それは日本人の知識が足りなかったせいだったことが明らかになりつ
つある。
原発銀座といわれる若狭湾の内陸でも、地質学的な調査がようやく始まったばか
りだ。

◎過去に起きた大地震や噴火を知らなかったことは、将来、また起きる可能性が
大きい大地震や噴火を知らないことでもある。

.. 2018年02月16日 08:45   No.1334002
++ 島村英紀 (社長)…308回       
活発化する火山活動 噴火予知はなぜ難しいのか? (上)
 |  富士山や箱根山もいつ噴火してもおかしくない活火山です
 └──── (地球物理学者、武蔵野学院大学特任教授)

 各地で火山活動が活発化がみられます。先月23日には草津白根山(群馬・長野
県境)が噴火。30日には蔵王山(宮城・山形県境)、2月に入ると、霧島連山
(宮崎、鹿児島県境)の御鉢、硫黄山が相次いで噴火警戒レベル2に引き上げら
れました。
 桜島(鹿児島県)では19日に爆発的噴火が起こっています。一方で、草津白根
山の噴火は、2014年9月の御嶽山(岐阜・長野県境)の噴火と同じく、はっきり
とした前兆がなく起こったことが注目されました。
 噴火予知はなぜ難しいのか。地球物理学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英
紀氏に寄稿してもらいました。

1.草津白根山は最も警戒された火山の一つ

 群馬県の草津白根山が1月23日に噴火しました。気象庁からは事前に何の警告
もない噴火だったので、噴火口から100メートルあまりしか離れていないスキー場
にいた15人ほどが死傷する事故になってしまいました。
 しかし火山学的には、この噴火は2014年の御嶽噴火の1/10以下という小さなも
のでした。水蒸気噴火だったと思われています。たまたま人がごく近くにいたの
で大きな被害を生んでしまったのです。
 実は草津白根山は、日本にある活火山110あまりのうちでも、最も警戒されてい
た火山で、現に2007年に気象庁が「噴火警戒レベル」を設定し始めたときにも、
一番初めに設定されたグループに入っていました。

 草津白根山は標高2160メートルの大きな山で、山頂である白根山(しらねさん)
は北部にあり、中央に逢ノ峰(あいのみね)、南部に本白根山(もとしらねさん)
の3つのピークがあります。
 観光地としても有名な湯釜(ゆがま)は白根山の山頂近くに位置し、直径は約
300メートル、深さは30メートルあります。水温は約18度と、それほど高くはあり
ませんが、ここの水は白く濁ったエメラルドグリーンという不思議な色で、これ
は火山ガスが溶け込んでいるせいです。

.. 2018年02月26日 08:11   No.1334003
++ 島村英紀 (社長)…309回       
 湖水のpHは約1で、世界でも有数の酸性度が高い湖で、これは火山ガス中の
塩化水素や二酸化硫黄が水に溶け込み、塩酸や硫酸となったためです。
 このほかにも火口湖があり、山頂部には北東から南西に並ぶ水釜、湯釜、涸釜
(かれがま)の3つの火口湖があります。
 いままで草津白根山は、もっぱら火山性の有毒ガスを出す火山として活動を続
けてきたので、その火山ガスが出ている北部の白根山だけを警戒していました。

 地震計をはじめ、火山ガスや地殻変動の観測器は、北部に集中していました。
つまり、今回の噴火が起きた南部はノーマークだったのです。また噴火の様式と
しても、今回の噴火のように、ほとんど火山ガスを出さず、爆発的な噴火を起こ
すとは想定されていなかったのでした。

2.前兆らしい変化示すことなく噴火

 この草津白根山では2014年に湯釜周辺で火山性地震が増加し、山体の膨張を示
す地殻変動が観測されたほか、いろいろな火山活動の活発化を示す兆候が現れて
いました。これらのことから、噴火警戒レベルが1から2に上げられ、火口周辺
規制が敷かれました。
 しかし、これらの変化は次第に収まってしまい、2017年夏には噴火警戒レベル
が1に引き下げられていました。その7か月後に噴火が起きてしまったのです。

 噴火した南部はノーマークとはいっても、地震計や地殻変動の観測器がカバー
する範囲には入っていました。このため、火山性地震や火山性微動、マグマが上
がってきたことが分かる山体膨張は、例え南部の地下で起きていたとしても、十
分感じられるはずだったのです。
 しかし、そのどれもが前兆らしい変化を示すことのないまま、噴火が始まって
しまったのです。

.. 2018年02月26日 08:17   No.1334004
++ 島村英紀 (社長)…310回       
しかも、やはり予告なしの御嶽山噴火の後、導入されたはずの「噴火速報」も
出されませんでした。これは噴火してから登山者などに携帯メールで流す情報で
すが、今回は噴火したという情報が気象庁に入ったのが遅く、出せなかったので
す。した

 噴火したときの噴火警戒レベルは1でした。噴火警戒レベル1とは、かつて
「平常」とされていたもので、2014年の御嶽山噴火の後に、表現だけ「活火山で
あることに留意」に変えられましたが、一般の人にとっては「規制は解除された。
山頂まで行ってもいい安全宣言が出た」と思われても仕方がないのが、この噴火
警戒レベル1ということでした。
 この噴火警戒レベルは、科学的なものでも日本の火山に一般的に決められるも
のでもなく、経験とカンだけに頼って気象庁が出しているものです。あえて言え
ば、その上に観光で生きている地元への配慮という政治的な判断も入っています。
幸い、噴火はしなかったものの、箱根で2016年の年末に噴火警戒レベルを下げた
のも、政治的な判断と言えるでしょう。

.. 2018年02月26日 08:25   No.1334005
++ 島村英紀 (社長)…311回       
活発化する火山活動 噴火予知はなぜ難しいのか? (下)
 |  富士山や箱根山もいつ噴火してもおかしくない活火山です
 └──── (地球物理学者、武蔵野学院大学特任教授)

3.「見逃し」はないとされてきた噴火予知(まちがいだった)

 草津白根山で噴火した本白根山は3000年前から1万年前までは、さかんに噴火
していたことが、火山地質学の調査から分かっています。ただ最近に至る約300年
間は、噴火はもっぱら草津白根山の北部、つまり白根山の山頂付近で起きてきま
した。

 人間にとっては3000年というのはとてつもなく前の歴史ですが、火山や地球に
とっては、ごく短いものなのです。現に活火山かそうでない火山かを見分けるの
は「1万年」が境になっています。

 草津白根山の場合には、この近年の噴火だけを反映して、ハザードマップが作
られていました。そして、このハザードマップを下敷きにして、地域の防災計画
が作られるので、草津白根山の場合には、南部での爆発的な噴火は忘れられてい
たのです。
 1月の草津白根山の噴火は小さな水蒸気噴火だったということで、前兆はほと
んどなかったのではないかと思われています。大規模にマグマが上がってきて、
大規模な山体膨張が起き、それが地殻変動の測器に捉えられれば、前兆としてわ
かる可能性があります。

 「見逃し」があって不意打ちになる地震予知と違い、かつて噴火予知は「見逃
し」はないが「空振り」はあると言われました。地震予知は2017年の秋に政府が
“白旗”を揚げたように「現在の科学では不可能」ということが明らかになって
います。
 それに比べて、なんの前兆もなくていきなり噴火することはなく、何かの前兆
があって噴火しない例はあっても、前兆も観測されずに噴火することはないと言
われていたのです。
 しかし残念ながら、御嶽山噴火に続いて、この草津白根山の噴火も、噴火警戒
レベル1という噴火から遠いと思われたときに噴火して、大きな被害を生んでしま
いました。

.. 2018年02月26日 11:56   No.1334006
++ 島村英紀 (社長)…312回       
4.火山ごとの噴火データがほとんどない

 火山は、その火山ごとに性質が大きく違います。いくつかの火山は、機械観測
が始まってから何回も噴火があったので、噴火に至る過程も比較的よく分かって
います。例えば、浅間山(群馬・長野県境)や桜島(鹿児島県)です。
 火山の観測には、火山体の中で起きる火山性地震の観測や、火山性微動の観測、
地殻変動、火山から出てくるガスや水の火山化学の観測などがあります。日本の
活火山は110あまりありますが、その半分以上では、この種の観測が行われていま
す。

 しかし、浅間山や桜島以外のほとんどの火山はこれらの観測を展開してから噴
火が繰り返されていません。つまり噴火予知のデータとしては不十分なのです。
 火山ごとに性質が違いますから、機械観測を展開してから、その火山で少なく
とも1、2回の噴火がないと噴火予知の知識は蓄積されないでしょう。
日本にはいつ噴火しても不思議ではない活火山がいくつもあります。次の噴火は
どの火山かを言うことは難しいのですが、蔵王山(ざおうざん)、吾妻山(あず
まやま)、日光白根山(にっこうしらねさん)などは火山性地震も増えているの
で、噴火がそう遠くない可能性があります。

 それ以外に、富士山や箱根山(はこねやま)も、いつ噴火してもおかしくない
活火山です。しかもこれらの火山が噴火したら、観光客など、周囲に多くの人が
集まっているだけではなくて、首都圏にまで大きな影響を及ぼすでしょう。
 例えば富士山の一番近年の噴火は1707年の宝永噴火でしたが、そのときには、
噴火後2時間で江戸に火山灰が降って、江戸中が暗くなったことが分かっていま
す。次の噴火では、文明が進歩しただけ、いままでにない災害になる可能性が大
きいのです。

 そして、まずいことに富士山の場合はこの噴火の前に何が起きて噴火に至った
かが、なにせ300年以上前のことですから、何もわかっていないことなのです。
 箱根山は最後の噴火以後1200年も経っています。しかも、もっと前の箱根の噴
火では横浜まで火砕流が到達したことが分かっています。今後起きたら、大災害
になるでしょう。
 もちろん、富士山や箱根はいつ噴火してもおかしくない活火山なので、各種の
機械観測が行われています。


.. 2018年02月26日 12:02   No.1334007
++ 島村英紀 (社長)…313回       
しかし、機械観測で前兆を捉えたことはないので、観測データがどこまでいっ
たら危ないのか、が分かっていないのです。
 もちろん観測器が今よりも多くて、現在はごく手薄な火山学者が多ければ、前
兆をもっと捉えられるようになるはずですし、噴火に至る過程もずっと分かるよ
うになるでしょう。
 しかし現状では、気象庁や大学の火山観測の予算はごく限られていますし、論
文を書いて活発な研究活動をしている火山学者は、全国でも20人前後しかいない
のです。 

.. 2018年02月26日 12:50   No.1334008
++ 島村英紀 (社長)…314回       
台湾の大地震は日本にとってはひとごとではない
 |  南海トラフ地震と同じ海溝型、耐震基準引き上げ前の建物の多さ
 | 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その236
 └──── (地球物理学者)

◎ さる6日夜、台湾で大地震が起きた。襲われたのは台湾東部の花蓮県。花蓮
市では4棟の十数階建ての高層ビルが大きく傾いた。死者17名、負傷者は280名を
超えた。
 震源は台湾の東方沖18キロのところで、マグニチュード(M)は6.4。100キロ以
上離れた台北市や沖縄県南西部でも揺れが感じられた。
 このほかにも、ちょうど2年前の2016年に台湾南部でM6.4の地震で100人以上
が死亡している。マンションが倒壊するなどしたのだ。

◎ じつは、台湾で起きている地震は、日本の南西部で起きる地震の兄弟である。
フィリピン海プレートがユーラシアプレートに潜り込むことによってひずみが溜
まっていき、やがて起きてしまう海溝型地震だ。その意味では、日本で発生が恐
れられている南海トラフ地震と同じものなのである。
 この地震による現地での震度は7と報じられている。震度としては一番強いも
のだ。
 台湾中部では1999年の集集地震(M7.3)で死者行方不明者2500人を超える犠牲者
を生むなど大きな被害が出た。この地震のあと、それまでは震度6までしかなか
った震度階に7を足した。

◎ 台湾では日本と同じ震度階を使っている。厳密に言えば、震度6までは日本
でかつて使われていた0から6までの震度階で、その後に台湾独自に震度7を足
したものだ。日本は大被害を生んだ福井地震後の1949年に震度7を加えた。

◎ 日本の気象庁の震度階は1995年の阪神淡路大震災後、震度5と6にそれぞれ
強弱を分けて、合計10段階になっている。台湾ではこれらの強弱はなく、8段階
だ。日で
 一方、世界の多くの国では「国際震度階」を使っている。これは12段階で、日
本の震度階とは違う。地震としての大きさを表すマグニチュードは国によらず共
通だが、震度はその場所での揺れの強さを示す数値で、国によってスケールが違
う。ue

.. 2018年02月26日 14:11   No.1334009
++ 島村英紀 (社長)…315回       
◎ もともとは日本の植民地だった台湾と朝鮮に日本の震度階を「押しつけ」た
歴史がある。このため、台湾と韓国は戦後も長らく、日本と同じ震度階を使って
いた。
 だが韓国は2001年に日本式の震度階をやめて1から12までの12段階の国際震度
階にした。国際震度階はメルカリ震度階とも言われ、1884年にイタリアの火山学
者ジュゼッペ・メルカリによって考案されたもので多くの国で使われている。

◎ つまり、0から7までの日本と台湾の震度階は、世界では日本と台湾だけに
なってしまったのである。
 1999年の大地震のあと、台湾では耐震基準を引き上げた。しかし、それ以前に
建てられたビルは地震に弱いままだ。今回の地震で傾いてしまったビルは、いず
れも耐震基準の引き上げ前に建てられたものだった。

◎ 大地震が起きてから建築基準法が強化されたのは日本も台湾と同じだ。日本
は1995年の阪神淡路大震災で建築基準法を強化した。
 だが、それ以前の建物が多く残っていることは台湾と同じだ。日本にとっては
ひとごとではない。

.. 2018年02月26日 14:18   No.1334010


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