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昭和16年9月7日に東条陸相は東久邇宮に次のように話しした。「・・・・日米国交調整に関する陛下の御考えはよくわかっている。しかし陛下が不利益を忍んでまでも、どうしても日米国交を調整されようと御考えになっているのに対して、東条は、そのことが国家百年の計のために不利であると考えるならば、東条は、どこまでも陛下を御諌め申し上げなくてはならない。それでも陛下が御聴きにならなければ、辞職するほかはない。これこそ陛下に対し奉り、忠節を全うすることと考えているからである」。あえて東条英機を悪くいうのではない、自分を賢い者と考えるのが、いかに危険かということである。それで自分が破滅するならかまわないが、一国のこととなると、よっぽど考えなければならない事柄である。諌めるということは陛下よりも己が、そのことに関して賢であると考えたことになるが、実は浅慮であるのだから、たまらない。そのくせ自分は賢人の言う事をきかないのだ。愚に気づけば、あらためられるが、意外に愚に気づくことはできない。
.. 2008年05月10日 21:02 No.129001
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