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小林秀雄が「りこうなやつはどんどん反省するがいい。俺は反省などしない」と、たぶん言葉はちがうが、戦後まもなくそういうことを言ったらしい。これは似非反省について言ったものだろう。反省は必要である。友近美晴の「軍事参謀長の手記」にこんな一節があるという。「吾々は徳ということに関し、深刻に教えられもせず、また、真剣に修めもせずに来た結果はどうか。敗戦の陣中にみる、あの醜い姿を暴露してしまったのだ。将も兵も、自我自欲の凝り固まりとなり、全く人間獣の一匹に帰ってしまっているじゃないか。見たまえ、平常は統帥権というもののお陰で、ようやく部下を統率して来ていた将軍が、統帥権のきき目がうすくなってくると、かれ自身の劣等人格を暴露して、真に獣心を発揮するものだから、一朝にして部下に見はなされてしまっている。これというのも、明治維新の志士は、ただ、単に血気のあまり国事に奔走していたのではなくて、松蔭にしろ、西郷にしろ、皆聖学を深く修めていたればこそ、あの尊敬すべき行動に出られたということに気づかないでおるのだ。みな、明治以来の国民教育が方向を踏み違えて来た結果であり、吾々個人がそういう修養を怠って来たせいではないか。ぼく自身、少尉任官以来、何をやって来たかと省みると、実に冷汗三斗の思いがある」これは深刻な反省ではないかと思う。事柄は古いが、今だって、誰でもだが、人の上に立つ人は特に、徳というものを考えないといけない。
.. 2008年03月23日 15:33 No.125001
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