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.「決して原発マネーで | 潤うわけではない」 | 「私たちはどんな社会、どんな国をめざすのか | 未来を語るべき」 | なぜ「原発で若狭の振興」は失敗したのか | (著者:山崎隆敏)を読んで └──── (若狭の原発を考える会・京都市)
若狭をくまなく歩いてアメーバデモやチラシ配布をしながら、「原発のない若 狭をめざしましょう」と訴えてきた私は、この本の題名に非常に惹かれて一気に 読んだ。 「国策である原発を受け入れたのは苦渋の選択だった」と若狭の首長たちは口 をそろえて言う。故に「原発マネーで生活が良くなるだろうし、そうであって当 たり前。」そう期待していた。
それがどうだろう、若者はいなくなり、箱物ばかりが建設されるが観光客はど んどん減っていき維持費に窮している。自立できる産業は衰退の一途。 なぜこのような事になったのか、著者はいろんな観点から読み解いている。若 狭の各自治体の財政を数字で表し、決して原発マネーで財政が潤うわけではない ことを「見える化」して示しているのは説得力がある。
「15基もの原発を造らせた福井県は愚かなのか?そうではない」と、原発立地 住民の抵抗の歴史も紹介しているが、高浜の漁村の区長さんの言葉が胸にしみる。 「今のままで十分暮らしていける。平和な村を壊してくれたら困る。土地を売っ て金をもらっても一時的なもの・・・結局は生活基盤を失くすだけ。こういった 投機的な火遊びを取り除くために、今こそ立ち上がって反対しよう。」
この論理が明快ですごく倫理的であるとの指摘はまったく同感だ。経済や科学 ばかりが主張されるが、そこに人の命や生活がある以上、倫理的な面からの考察 が絶対必要だと思う。 そして、「私たちは、どんな社会、どんな国をめざすのか未来を語らなければ ならない。」と提言している。
これは、反原発運動のみならず、私たちが生きていく社会生活において常に基 本として問われる姿勢ではないだろうか。 原発全廃をめざす者にとって、これからの運動へのヒントが盛りだくさんに示 されている。 若狭を愛してやまない筆者の熱い思いも感じられる渾身の1冊である。
.. 2017年04月24日 14:43 No.1185001
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