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■--島村英紀
++ 信用されない津波警報 (幼稚園生)…1回          

被災地ですら避難せず…
 |  「車で逃げるな」にも問題山積
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その191
 └──── (地震学者)

◎ 驚くべき結果が3月に発表された。昨年11月22日早朝に起きたマグニ
チュード(M)7.4の福島県沖地震で、6割近くが避難せず、避難者の5割
以上が車で避難していたことが分かったのだ。
 東日本大震災で津波の怖さが知れ渡ったはずだし、政府は「車で避難す
るな」と口をすっぱくして言ってきたのに、この結果だ。
 宮城・石巻市で東日本大震災のときの津波浸水域に住む5000世帯を対象
に調査したものだ。調査を行ったのは石巻市と東北大学など。
 津波注意報は朝6時2分、避難指示は8時5分、そして津波警報は8時
9分に出された。地震が発生した5時59分に在宅していた人は約9割。
過半数は就寝中だった。

◎ 逃げなかった人々の67%は「大きな津波は来ないと思った」という。
これは気象庁の津波警報が、まだ信用されていないことを示している。
 信用されなくなってしまったのには長い歴史がある。
 1998年5月に起きたM7.7の「石垣島南方沖地震」のときに出された津
波警報は「沖縄、九州、四国、そして本州の南岸に最大2〜3メートルの
津波」という警報だった。だが、拍子抜けのものだった。実際に来た津波
は、わずか数センチのものだったからだ。

◎ 2003年9月にはM8.0の「2003年十勝沖地震」が起きた。ほとんど同
じ規模だった「1952年十勝沖地震」で6メートルを超える津波で甚大な損
害をこうむった北海道東部の厚岸(あっけし)町でも、勧告に応じて避難し
た人はわずか8%にとどまった。実際の津波は警報よりもずっと小さくて
被害を起こすようなものではなかったから、人々の判断は間違っていな
かったことになる。
.. 2017年03月28日 09:45   No.1172001

++ 島村英紀 (部長)…218回       
◎ 20年も過大な津波警報がくり返されたので人々は警報を信用しなく
なってしまっているのだ。東日本大震災のあとでさえ津波警報が信用され
ていないというのは重大なことだ。
 同じ大きさの地震が同じ場所で起きても、海底での地震断層の動きかた
が違えば津波の高さは大変に違う。
 いまの仕組みは地震の震源と地震の規模だけが最初に分かった段階で
「考えられる最大」の津波を想定して警報を出す。だが地震断層の動きか
たによっては実際の津波の大きさが最大を想定したときの何百分の1にも
なってしまうのだ。

◎ 気象庁は津波警報を信用されるものにすることこそを心がけるべきな
のである。
 「車で逃げるな」にも問題が山積している。
 回答にあった「車を使わないと家族が避難できない」ことや、避難先で
「寒さをしのぐために車が必要」なことを行政は考えていないのだろう。
「車は大切な財産だから失いたくない」というのも4割以上あった。
 石巻では、この警報騒ぎで車で避難するときに渋滞したと答えたのは
17%に過ぎなかった。これは幸いなことだった。だが、いつも、そしてど
こでも、当てはまることではあるまい。
 津波警報には、まだ多くの問題があるのである。

.. 2017年03月28日 09:55   No.1172002
++ 山崎久隆 (社長)…661回       
.「東京電力の闇」第2弾 (その2)
 |  東京電力に原発を動かす資格はない
 |  東京電力が必死に隠そうとする柏崎刈羽原発の大問題
 |  「免震重要棟が基準地震動にさえ耐えられない」
 └──── (たんぽぽ舎)

3.地震で揺れる「免震重要棟」

 一般に免震構造に関しては、いくつかの問題が明らかになっている。
 免震機構の中でも重要な免震機構用積層ゴムを製造している東洋ゴム
工業が、本来の性能を維持できないものを性能データを偽装して出荷し、
集合住宅や防災施設(自治体庁舎)を中心に欠陥免震装置が取り付けられ
る事件が起きた。
 また、大阪など都市部で主に問題になった、高層マンションなどの免震
構造が震度7など設計時の想定を超える地震に耐えられないことが指摘さ
れた。
 免震構造は、揺れを積層ゴムなどのダンパーで逃がす構造なので、設計
段階で想定する揺れの大きさを超えると免震機構が持たなくなる。また、
揺れの大きさにより建物の変位する量が規定値を超えると、擁壁に衝突し
破壊される危険性もある。
 免震は万能ではなく、想定地震を小さくするとこのように耐えられない
危険性が増えるし、あまりに大きな想定地震を取ると、今度は設計・施工
が困難になる。
 重量構造物や高層ビルで震度7でも耐えられる免震機構を設計するのは
まだ難しい。免震機構に揺れが伝わった際にどうなるかが、まだ完全に解
明されているとは言えない。開発途上の技術なのだ。
 柏崎刈羽原発は、変位量が75cmまでの揺れの大きさに耐えられる設計
として建てられた(擁壁とのギャップは85cmあるという)が、これは
2007年の中越沖地震を元にしたものとされる。
 ところが原発の耐震設計の場合は「解放基盤表面」という工学的地盤
に、想定地震動(これがSs=基準地震動やSd=弾性設計用の地震動)
を入れて、解析により地上の構造物の揺れを計算する。
 

.. 2017年03月31日 09:57   No.1172003
++ 山崎久隆 (社長)…662回       
2014年から隠ぺい

 免震重要棟が基準地震動にさえ耐えられないことが分かったのは、2013
年の試検討(1)だとされる。再稼働のために原子炉設置許可変更申請を
行ったのが2013年9月、この準備段階で「試検討」を行った。この際は事
務棟本館の地盤応答解析を元に、減衰効果が大きいと判断して簡易的に免
震重要棟の基礎に直接地震動を入れた。この解析の結果、7つある基準地
震動のうち5つで変位量75cmを超えることが分かったという。
 その後、2014年になって免震重要棟の変位量を小さくするために免震
ゴム、新しいダンパーなどの開発が行われ、その中で一連の「試解析」
(2)を行った結果、2013年の時よりも更に大きな変位量になることが
分かり、全部の基準地震動で75cmを超えてしまう結果になったという。
 2014年の解析は1号機の深地層(西山層よりも深いという)の地質
データを使い、解放基盤表面に地震動を入力する本来の解析手法を採って
計算している。
 簡易的手法が安全側ではなく危険側になっていたのである。いわば最も
やってはいけないことをやってしまい、規制委員会にもずっと黙っていた
わけだ。
 審査会合では、基準地震動Ssどころか、Sd(*)でも持たない可能
性は否定できないのではないか。との委員の問いに対し、東電は否定でき
ないとの趣旨の答えを返していた。これは極めて深刻である。
 試検討(1)と(2)は設置許可変更申請に際して行われた耐震性
評価。建設時に1号機基礎板のデータを代用していたため、本来の耐震
評価をしてみたところ大きく不足していたことが分かった。このような
解析をした背景には耐震強度不足を感覚的に知っていたからだと思われ
る。Ssになんとか耐えられる免震装置を開発、設置するためにデータを
取っていたのであろう。
 東電としては再稼働申請の途中で免震重要棟の耐震性を引き上げ、解決
済みとして報告したかったのだろうが、技術的に困難だった。
 昔から続いているこれまでのデータ改ざん、偽装の手法によく似て
いる。

.. 2017年03月31日 10:12   No.1172004
++ 山崎久隆 (社長)…663回       
(*)Sdとは弾性設計用の地震動のこと。構造設計に用いられる弾性範
囲の耐震設計用地震動だ。Ssとの差は概ね半分ほどとされる。この揺れ
では構造物は弾性範囲に収まっていなければならない。Sdで75cmの変
位量を超えていたとすれば免震重要棟は緊対所どころか今後いっさい使用
出来ないことになる。

5.東京電力の体質と思惑

 東電は何を考えてこのような説明をしたのか。
 説明文書や説明の仕方を見ていると、問題を深刻には捉えていない様子
を見せている。もちろんポーズと思われるが。
 5号機の緊急時対策所は剛構造の建屋にあるので、基準地震動でも十分
耐えられる。
 こちらを「主たる緊対所」として申請し、免震重要棟は「従たる緊対
所」として申請をすれば問題はなく、実質的に目的は達せられると考え
た。「75cmまでの変位ならば免震重要棟を使いそれ以上ならば5号機
を使う」と、さらっと説明している。
 説明では少なくても2014年から性能不足だと分かったことも触れない。
極力問題にならないよう、目立たないように説明をしていた。
 委員から原因を問い質され、答えるのに「プラント建設側と土木側の意
思疎通がうまくいかなかった」などと言い出した。東電の場合これは一度
や二度ではない。まさしく体質といわれても反論できまい。
 原子力規制委員会は後日、廣瀬社長を呼び出して説明を求めている。
そして原子炉設置許可変更申請書を出し直し、申請書に問題がないか総点
検をするよう命じた。
 しかし、これは甘すぎる指示である。これまで審査してきた中にも同種
の問題があるのではないかと疑ってかかるべきだろう。特に新しい施設、
設備や対策に大きな欠陥がないかを見なければならない。
 格納容器ベントや消防ポンプを使ったペデスタル注水など、設計時には
想定されていない過酷事故対策に安全上の問題があるのではないか。
疑惑は尽きない。
 少なくても東京電力に原発を動かす資格があるとは到底考えられ
ない。

.. 2017年03月31日 10:35   No.1172005
++ 島村英紀 (部長)…221回       
大惨事を生む水蒸気爆発
 |  御嶽山やイタリア・エトナ山で被害
 |  警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その193
 └──── (地震学者)

 この3月に、また火山で死にかかった。英国の公共放送、BBCの取材チーム。
イタリア・シチリア島にある欧州最大の活火山エトナ(標高3329メートル)での
ことだ。
 エトナはイタリアにある3つの活火山ではいちばん高い火山で、2番目に高い
ヴェスヴィオ山の3倍近くもある。富士山と同じく、世界遺産だ。アルプスを除
いてイタリアでは最も高い山である。
 なお、ヴェスヴィオ山は噴火でローマ時代のポンペイなどを埋めたことで有名
である。
 エトナ山は過去数週間で活動が活発化していたので、取材班が登山していた。
前兆もなく、いきなりこの事件が起きたのであった。このチームによって、すさ
まじい画像が撮られている。

 この事件で、飛んできた岩石や溶岩に当たって10人が負傷した。6人が病院に
搬送されたが、全員、軽いやけどや切り傷、打撲などですんだ。
 噴火としては小規模のもので、その意味では幸いだった。一種の水蒸気爆発が
起きたもので、溶岩と山の表面の間に溜まっていた水が水蒸気として噴出したた
めに起きたものだと思われている。

 水蒸気爆発とは、2014年に戦後最大の犠牲者を生んでしまった御嶽山(長野・
岐阜県境、標高3067メートル)の噴火と同じタイプだ。
 御嶽山では新たなマグマは上がって来ずに、昔噴出した火山灰や噴石を吹き飛
ばしただけだった。火砕流も出たが、このときは低温で、木や森を焼くことはな
かった。それでも、これだけの被害が出てしまったのだ。

 「水蒸気」爆発というと、まるでヤカンから出る湯気のように威力のないもの
に聞こえるかもしれないが、そうではない。
 液体の水は1グラムで1立方センチの体積を占めるが、これが100度Cになると
気体になって約1700立方センチの体積にも膨張する。まわりに溶けた溶岩がある
など、もっと温度が高いと4000立方センチ以上と、さらに体積が増える。閉じた
空間では大変な圧力になって、噴石や溶岩を吹き飛ばしてしまうのだ。

.. 2017年04月17日 11:27   No.1172006
++ 島村英紀 (部長)…222回       
かつて日本で起きて大きな被害を生んだ水蒸気爆発は、1888年の福島・会津磐
梯山(標高1816メートル)の噴火だ。いまでも、空から見ると磐梯山の山頂から
北側には息をのむような巨大な山体崩壊の跡が拡がっている。
 このときは、火山の内部で水蒸気爆発が起き、山体崩壊を引き起こした。この
大規模な崩壊で約500人もの死者を生んだ。また、長瀬川とその支流がせき止めら
れ、桧原湖、小野川湖、秋元湖、五色沼など、大小さまざまな湖沼が作られた。
磐梯山の山の形も大幅に変わってしまった。

 今回のイタリアでも、岩や溶岩を吹き飛ばした。もちろん、大きなものに当た
れば即死である。
 つまり水蒸気爆発は、その名前の優しさとは裏腹に、とてつもない威力になる
のだ。

.. 2017年04月17日 11:45   No.1172007
++ 島村英紀 (部長)…223回       
熊本地震から1年…続く余震、通用しなかった経験則
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その194
 └──── (地震学者)

 熊本地震から1年がたった。
 熊本地震から今年3月末までの約1年間に、同地震の活動域を中心に、人体に
感じない小さい地震も含めた地震回数は九州で13万回、これは2015年に全国で起
きた12万回を上回った。
 余震が熊本地震ほど多かった地震は日本で例がない。つい先月も震度3の地震
に襲われた。余震はまだ続いている。
 たとえば阪神淡路大震災(1995年)では、余震は1−2ヶ月で収まった。かな
り大きな内陸直下型地震でもこの程度で収まってしまう例が多い。

 一般に余震の数は本震のマグニチュード(M)が大きいほど多い。だが、M7ク
ラスの地震だったのに余震が多い理由は、熊本が日本最大の断層である「中央構
造線」の上にあるからである。中央構造線は鹿児島から熊本・大分を通り、四国
の北をかすめ、紀伊半島を横切って長野県にまで達している長さ1000キロにもな
る大断層だ。

 かつて1596年には九州から京都にかけて、慶長伊予地震、慶長豊後地震、慶長
伏見地震が次々に起きたこともある。これからも、中央構造線に沿って起きる地
震は注意すべきだろう。

 ところで気象庁は4月14日に起きた震度7の熊本の地震のあと、15日には「震
度6弱以上の余震が発生する確率は20%」だと発表していた。震度7はまったく
想定していなかったのだ。しかも、「震度6弱以上の余震は1週間程度続く」と
いったものだった。
 これを受けて、4月14日の地震の後、気象庁や政府が「家に帰れ」と呼び掛け
ていた。だが2日後の16日午前1時25分にもっと大きな地震が起きた。人々が寝
静まっていた時刻だ。この地震で家が潰れて圧死した人数は前の地震の圧死者を
超えてしまった。

.. 2017年05月11日 08:15   No.1172008
++ 島村英紀 (部長)…224回       
 そもそも、余震には経験則しかなく、しかも例外も多い。気象庁が大きな地震
のあとに発表してきた余震の見通しは、たんに平均的な経験例にもとづいている
だけなのだ。余震についての一般的な注意を呼びかけてきたものにすぎない。
 余震が熊本地震の次に多かった例がある。2004年10月23日に起きた新潟県中越
地震のときには、気象庁の予測発表を上回る余震が何度も繰り返された。
 地震後、10月の末までに600回、11月末までに825回もの有感地震(人体に感じ
る地震)の余震があった。気象庁が予想しなかった震度6強という強い余震も何
回も記録された。これは地震断層がひとつではなくて複雑だったためだ。
 幸い、この新潟県中越地震での余震の見通しの間違いは、それほどの被害は生
じなかった。
 だが、熊本の4月16日の地震(M7.3)はM6.5の14日の地震よりも多くの人が
亡くなってしまったのだ。

 気象庁は4月20日になって、余震の発生確率について「今回は過去の経験則が
当てはめられず、発表できない」として発表を取りやめてしまったのである。
 それまでは、余震の発生確率は大地震が起きたときには必ず発表されていた。
気象庁は白旗を挙げざるを得なくなったのだ。

.. 2017年05月11日 08:22   No.1172009
++ 金子 通 (幼稚園生)…3回       
(たんぽぽ舎会員)

柏崎原発・活断層の可能性−食い違う火山灰堆積年代

 東京電力柏崎刈羽原発の敷地内外にある断層が将来活動する可能性が浮上して
いる。原子力規制委員会に活断層だと判断されれば、東電が原発を動かせなくな
ることも想定される。判断の鍵を握るのは、原発周辺の地層から見つかった火山
灰の堆積年代だ。火山灰の年代は断層が過去に活動した年代を測る物差しと言え
る。その重要な年代評価が東電と県内の地質学の専門家グループとで食い違って
いる。なぜなのか。柏崎刈羽原発の安全性にどう影響するのか。食い違う両者の
評価を中心にまとめた。
1.名前2つ−採取地は別、成分一致
 年代の違う2つの火山灰は今まで別の物だと考えられていた。だが、専門家グ
ループの「似ている」との指摘を受け成分分析を行ったところ、今年4月、2つ
の火山灰の成分がほぼ一致したという分析結果を発表した。
2.主張根拠−東電と専門家平行線
 専門家グループが堆積年代を約13万年前と評価する根拠は、「藤橋40」が見
つかった場所だ。東電は、この藤橋地域で詳細な地質調査を行ったわけではない。
3.13万年前−耐震安全性に影響も
 原子力規制委員会の新規性基準では、約13万〜12万年前以降に活動した断層は、
将来も再び動く可能性がある活断層と見なされる。柏崎刈羽原発の敷地内外には
多くの断層があるが、東電は「約20万年前以降の活動はない」として、将来の活
動性を否定している。
 原発の敷地内や周辺に活断層があれば、強い地震に襲われたり、原発直下の地
盤がずれたりして原発の安全性に大きく影響する。規制委は既に、柏崎刈羽原発
6,7号機の審査で技術的な検討を終えたが、一部をやり直す事態にもなりかね
ない。 (5月5日「新潟日報」より)

.. 2017年05月11日 08:27   No.1172010


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