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■--超スーパームーン
++ 島村英紀 (部長)…201回          

68年ぶりの「超スーパームーン」、地震の引き金か
 |  M7を超えると地震の一部に地球潮汐との関係が見られる
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその175
 └──── (地震学者)

●11月14日は68年ぶりの「超スーパームーン」だった。ただし、スーパームーンとは天文学用語ではなく、近年になって言われはじめた占星術の用語だ。
 月が地球の周りをまわっている軌道は円ではなく楕円だ。このため月と地球の距離は一定ではない。約35万7000キロから40万6000キロまで変化する。このため、月が地球に近くなって14%大きく、30%明るくなったのが今回のスーパームーンだった。
 ところで、スーパームーンが占星術の用語として登場するようになって、同じく占星術の用語である惑星直列とともに、地震など災禍が訪れるという俗説がある。
●じつは地震学の初期のころから、月や太陽の引力が地震を起こすのではないかという学説が根強くある。一方、それを否定する説も強かった。
 月や太陽の引力は、潮の干満、つまり海面潮汐(ちょうせき)を起こす。そして、そのほかにも地球の固体部分である岩全体を30センチも持ち上げる「地球潮汐」を毎日起こしている。
 東日本大震災の震源近くでは、解析した1976年以降の約25年間では地球潮汐と各地震の発生タイミングに相関関係はなかった。だが2000年頃から相関関係が強く見られるようになり、2011年の東日本大震災の発生直前には密接な関係があったという研究が2012年に発表されている。だが、疑っている学者もいる。
●そしてこの10月には、新たな研究も発表された。それによれば、マグニチュード(M)8.2以上の世界の巨大地震12のうち9つは、地球潮汐が最大となる大潮の日だった。この9つの地震にはスマトラ沖地震(2004年、M9.1)や東日本大震災(M9.0)も含まれる。
「大潮」のときは地球と月と太陽が一直線に並ぶ。太陽と月の引力が足し合わされる満月や新月がこれにあたる。スーパームーンもこれに含まれる。
 この研究では過去20年間に起きたM5.5以上の地震1万個以上のデータを調べた。その結果、小さめの地震では地球潮汐との関係はなく、M7を超えると地震の一部に地球潮汐との関係が見られるようになった。
●さて、この研究は本当だろうか。
 だが、強い反論がある。それは統計的有意性を証明するには、12個や9個ではまだ足りないというものだ。つまり数が少なすぎて、偶然だったり、ほかの作用だったりすることを排除できないはずだ、というものである。
 そのうえ、地球上のどこに起きる地震かは分からない。これでは地震予知するには役立たない。
 地球潮汐は地下数十キロにも影響し、断層には数十−数百ヘクトパスカルの力が加わる。だが、地震を引き起こすひずみは、これよりも千倍も大きい。
 しかし、地下に地震を起こすだけのエネルギーが溜まっているときには、この僅かな力が引き金を引いてしまうことはあり得ることなのだ。
 さる13日に起きたニュージーランドのM7.8の地震も、もしかして、その結果として起きたのかもしれない。

.. 2016年12月02日 08:09   No.1126001

++ 柳田 真 (課長)…176回       
最近、地震が多い。原発は大丈夫か?−国民多数の声
 |  福島沖地震(M7.4)で東電福島第二原発の冷却水がもれた
 |  気象庁が警告する「もうひとつ大きな地震・津波」が来たら
 |  福島の原発は「耐えられるか?」
 |  国民の心配・産経新聞の検証記事から考える
 └────  (たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)

1.M(マグニチュード)7.4という大きめの地震(福島沖地震)が11月22日
東北地方をおそった。M7.4は、1995年1月の阪神淡路大震災(M7.3)より
もエネルギーは大きい地震だ。
 しかも、5年8カ月前の2011.3.11の東日本大震災(M9.0)の「余震」で
あること、今後もM8クラス、M7クラスの余震が心配されると気象庁は
いう。島村英紀(地震学者)氏によると、M9の大地震のあとは過去の経験
からみて100年位、M8クラスの余震がおきる可能性があるという。こわ
い。地震列島日本の現実だ。
 それで、ボロボロのあの福島第一原発の4基プラス2基が、そして福島
第二原発の4基(合計10基)が果たしてもつのか、誰もが不安を抱く。新た
なリスクに耐えられるか?

2.気象庁が警告・予測する「もうひとつ大きな地震・津波」=2011.
3.11のM9地震より1ランク下のM8クラスの地震・津波が発生したら、
果たして、東京電力福島第一、第二原発(10基)はもつのか、耐えられる
か?を産経新聞(11月26日)がのせている。
 その紹介と私見を述べたい。(他の新聞ではこういう記事はみなかった)
 産経記事は、4つの視点から検討している。
 1つは、原子炉建屋は壊れない? 2つは、燃料の冷却は? 3つは、
再臨界の可能性は? 4つは、最大のリスクは汚染水流出。全体として
は、東京電力のいい分(いいわけ)を多く紹介して福島原発のリスク=「心
配を減らそう」としているが、それでも文章のはしはしに「地震・津波再
び…福島第一は新たなリスクに耐えられるか?−かなり心配だ」と読める
内容だ。
 とくに4番目の一番リスクがあるのは(津波による)地下滞留水(汚染水)
の流出問題だと規制庁の安井正也審議官が断言している。福島第一の地下
などにたまった(放射能)汚染水は計約6万トン。


.. 2016年12月09日 08:07   No.1126002
++ 柳田 真 (課長)…177回       
3.安倍政権=体制側にぴったりで、東電のいい分を大きく紹介の「大
甘」の産経新聞記事ですら、これだけの心配・不安をあげている。実態は
M8クラスの地震・津波が来たら福島第一、第二原発は大事故−大惨事に
なる。(東京も人が住めなくなる可能性が大きい−放射能で)どう防ぐの
か?
 許せないのは、福島原発の防潮堤が5年8カ月たってもいまだに「仮
設」ということだ。東電の安全経費をケチる体質のあらわれである。
 

.. 2016年12月09日 08:17   No.1126003
++ 島村英紀 (部長)…202回       
次々に起きている人為的地震 石油と天然ガスの掘削活動が原因
 |  人間が地球に何かをすれば地震が起きる
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその176
 └──── (地震学者)

◎米国カリフォルニア州南部にロサンゼルス盆地が拡がっている。ここで
昔起きた大地震5個のうち4つは、石油と天然ガスの掘削活動が原因だと
いう論文が11月に発表された。権威のある米国地震学会誌だ。
 最近、シェールガスや石油の採掘が地震を起こすことが明らかになりつ
つあって、米国で社会問題になっている。だが今回の発表は、シェールガ
スや石油の掘削技術が開発されるより前、20世紀の前半に起きた地震だ。

◎シェールガスや石油の採掘は高圧の化学薬品を地下に圧入して岩に割れ
目を入れて取り出す。他方、従来の石油掘削は、地下の原油やガスを深い
井戸から取り出すだけの仕組みだ。
 ロサンゼルス盆地では、いくつもの地震が起きて被害を生んだことがあ
る。1920年のイングルウッド地震、1929年のウィッティア地震、1930年の
サンタモニカ地震、1933年のロングビーチ地震だ。
 どれもマグニチュード(M)6前後の地震で、学校が大きく損傷するなど
の被害が出たが、なかでもロングビーチ地震がいちばん大きく、M6.4。
120人の犠牲者を生み、被害総額も当時の金で約52億円にもなった。

◎じつは、20世紀初めから、この盆地で石油ブーム時代が訪れていて、各
地で石油の掘削が始まっていたのだ。
 最近までは、まさか石油の掘削が地震を起こすとは思われていなかっ
た。米国でもカリフォルニア州とアラスカ州にだけは地震があることが知
られていて、その仲間の、自然に起きる地震だと思われていたのである。
 今回発表された研究は、これまでの地質調査や石油業界のデータをはじ
め、当時の政府機関の記録や新聞記事などを詳細に調べたものだ。その結
果、当時起きていた5つの大地震のうち4つの嫌疑が深まったのである。
 1960年代に放射性廃棄物の液体を4000メートルの深井戸に圧入して、い
ままで地震のなかった米国コロラド州で地震が起きた。

◎また、世界各地でダムが地震を起こしたことも知られるようになった。
大きな被害が出たものに1967年にインド西部でM6.3の地震が起きて一説
には2000人もが死傷

.. 2016年12月18日 07:05   No.1126004
++ 島村英紀 (部長)…203回       
三原山に迫る“次の噴火”全島避難から30年
 |  36〜39年の周期で中規模の噴火を繰り返してきているから
 |  次の噴火が近づいている可能性
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその177
 └──── (地震学者)

●伊豆大島の火山・三原山が噴火して全島避難をしてから11月末で30年に
なった。
 三原山はこの200年間、36〜39年の周期で中規模の噴火を繰り返してき
ているから、次の噴火が近づいている可能性がある。全島避難を想定し
て、住民4000人が参加して避難訓練が行われた。
 伊豆大島は東京から南西へ110キロ、直径10キロほどの楕円形の島だ。
 最高峰三原山は758メートルだが、見えていない海中部分を入れれば
2000メートルを優に超える火山の頂上部分だけが顔を出している島なので
ある。
 関東地方から南へ「東日本火山帯」が延びている。富士山や箱根もその
一部だが、伊豆大島、三宅島、八丈島といった離島をはじめ、西之島新島
など、多くの火山がこの火山帯に属している。

●火山の山頂部分だけが海上に顔を出している島は、どれも噴火があった
ら逃げ場がない。
 東京から580キロ南にある鳥島では、かつて島民125人全員が噴火で死亡
しているのが見つかったことがある。1902年8月のことだ。島民は、アホ
ウドリを捕獲するために移住していた。
 そのあと鳥島は無人になり、気象庁の観測所が置かれて、その職員だけ
が常駐する島になっていた。ここは南方海域での重要観測点だったのだ。
 だが1965年になって地震が頻発しはじめた。また火山が噴火するのでは
ないかとの恐れが強まった。ここでは、記録に残っているものだけでも
1871年、1902年、1939年に噴火した。その後も1998年、2002年に噴火して
いる。
 このため気象庁の気象観測船「凌風丸」が荒天の中を近づき、気象庁の
職員全員を救出した。大変な作業だった。鳥島はコップを伏せたような形
で断崖に囲まれていて、大型船が着ける埠頭はない。
 その後も安全が確認されないので観測所を廃止して、以後、島は再び無
人になっている。職員が退避したときに置き去りになっていたニワトリが
野生化して、空を飛ぶようになっているという。

●話は伊豆大島に戻る。1986年当時約1万人いた全島民は都内23区の避難
所などに分散して島外避難を余儀なくされた。この避難は約1カ月間続いた。
 じつは11月に始まった噴火の初期には、噴火を見ようと5000人を超える
観光客が伊豆大島に押し寄せた。観光以外には目立った産業がない島は歓
迎ムードに包まれた。立ち入り禁止区域に指定されて営業できなかった商
店では、営業許可を求めて町役場に陳情したほどだった。
 だが、このとき噴火はたまたまの小康状態だった。そして11月20日には
科学者も予測できないまま、爆発的な噴火が始まった。犠牲者が出なかっ
たのは幸運だった。
 そもそも、中規模の噴火を繰り返してきたというのも、近年だけのこと
だ。
伊豆大島では過去、もっとずっと大きな噴火もあった。
たとえば1777〜1778年に起きた「安永の噴火」は火山からの噴出量が東京
ドーム250杯分を優に超える大規模な噴火で、1986年の噴火よりもはるかに
大きかったのである。


.. 2016年12月20日 11:50   No.1126005
++ 渡辺寿子 (中学生)…43回       
福島沖地震が警告 燃料プールの怖さ (下)
 |  M8余震100年続く予測 使用済み燃料増やす再稼働
 └──── (原発いらない!ちば)

 ※今回は、
  5.燃料プールを大地震が襲ったら?
  6.再稼働で使用済み燃料増え続ける
  7.地震で原発排気筒倒壊リスク
   を掲載いたします。
  前回、(上)では
  1.燃料プールの冷却一時停止
  2.冷却停止の原因は不明
  3.使用済み燃料プールとは
  4.原子炉本体に比べ脆弱な燃料プール
  を12月22日発信の【TMM:No2964】に掲載しました。

5.燃料プールを大地震が襲ったら?

 11.22福島沖地震はM7.4で阪神淡路大震災よりも大きいものでしたが、
3.11東日本大震災の「余震」であり、気象庁は今後もM8、M7クラスの
余震が心配されるといっています。地震学者の島村英紀さんは、M9クラ
スの大地震の後は100年位はM8クラスの余震が続く可能性があるといい
ます。
 燃料プールは、システムとして脆弱であり、また施設自体の強度もな
く、大きな地震で倒壊してしまう可能性があります。プールが倒壊すれば
破滅的事態が予想されます。冷却水が失われるとプール周辺の何100メー
トルもの範囲が人が近寄れないほどの高いガンマ線に曝され、何もなすす
べがなく、プール内の核燃料はメルトダウンする危機に直面します。プー
ルの使用済み燃料が異常に加熱されれば、燃料被覆管のジルコニウムと水
が反応して生じる水素の爆発、ジルコニウムの酸化による火災発生の恐れ
もあります。
 燃料の間隔が変形や溶融によって狭まれば臨界に達し、核分裂連鎖反応
が起きかねません。いずれにしても厖大な放射性物質が放出され、福島第
一原発事故かそれ以上の大惨事になる恐れがあります。

6.再稼働で使用済み燃料増え続ける

 今,国内の原発は,川内2号、伊方3合を除いて停止しています。3年
以上停止している原発の使用済み燃料の放射線量と発熱量は燃料をキャス
クに入れて空冷で貯蔵、移送できるまでに減衰しています。使用済み燃料
発生初期に比べれば、危険性が格段に低くなっているのです。
 しかし,原発再稼働を促進すれば、放射線量、発熱量の高い使用済み燃
料を次々と生み出し続け、それがプールに搬入され、過酷事故の確率は格
段に高くなります。
 現在,日本の使用済み燃料は17000トン以上貯まり、原発の燃料プール
と六ヶ所再処理工場の保管スペースを合計した貯蔵容量の73%が埋まっ
ていて、再稼働が進めば数年後には満杯となります。
 再処理工場完成の目途が立たず、再処理の操業ができないので再処理工
場の一時保管スペース(容量3000トン)の貯蔵量は2954トンで殆ど満杯に
達しています。
 福井県にある原発13基が持つ燃料貯蔵施設の容量は5290トンで、その7
割近くが埋まっています。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば7年
程度で貯蔵限度を超えるのです。
 高浜3,4号機運転差し止め、大津地裁仮処分決定に対する抗告審の決
定が来年2月にも出されようとしています。
 使用済み燃料の各原発サイトでの保管が限度に近づきつつあります。
むつ市に中間貯蔵施設を作っていますが、たとえこれが操業開始をしても
原発が稼働し続ける限り、使用済み燃料処分問題は永遠に解決しません。
 使用済み燃料問題、つまり放射性廃棄物処分問題は原発のアキレス腱で
す。この観点からも再稼働に反対していかなくてはなりません。


.. 2016年12月28日 08:27   No.1126006
++ 渡辺寿子 (中学生)…44回       
7.地震で原発排気筒倒壊リスク

 福島沖地震で燃料プールの冷却が一時止まり、再び大きな原発震災が起
きる可能性をつきつけられました。廃炉作業中の福島第一を再び大きな地
震が襲ったら、3.11以上の惨事になりかねません。燃料プールを含め、す
でにボロボロのあらゆる建屋、設備が崩壊する危険があります。
 1号機と2号機の間にある高さ120メートルの排気筒が倒壊するリスク
も大問題です。「」女性自身12月5日号」がこの問題を取り上げました。
 福島第一原発事故の際、この排気筒から高濃度の放射性物質を含む蒸気
を放出(ベント)したため現在も内部は高濃度(100兆ベクレル)に汚染
されたままです。
 この排気筒を支えている骨組みの溶接部分5カ所が破断(地上66m)、
さらに3カ所が変形していることが2013年東電の調査により判明。これ以
来大地震が来れば倒壊するリスクが懸念されてきました。排気筒は、日々
潮風にさらされるため腐食が進んでいます。配管付近の地表面は2011年8
月の調査で最大毎時25シーベルトを記録し、人間が近付けません。
 排気筒が倒れたら内部の高濃度放射性物質が放出され、所内の作業員は
内部被曝し、粉じんが風に乗って遠方まで飛ばされたら、人や土地、農作
物が再び広範囲に汚染されてしまいます。
 排気筒が倒れる時、1号機や2号機の原子炉建屋を直撃して破壊してし
まう可能性があります。プールが破壊されれば、先述したように冷却水喪
失から過酷事故を招来します。
 東京電力は排気筒について、「解析モデルで耐震性を計算した結果、東
日本大震災レベルの地震動に耐えられる安全性があることを確認していま
す。(破断がある)現状でも同程度の地震動に耐えられることを確認して
います」と何とも矛盾したデタラメなことをいっています。
 東京電力は「比較的線量の低い上層部分のみ、18年度から解体していく
予定」とのことですが、それまでに大地震・大津波が起きないという保障
はありません。
 原発を稼働するということが事故後もあらゆる惨事を招き寄せるという
ことをあらためて思い知ります。
 今、政府・経産省はこんな事故を起こした東京電力に何の責任も取らせ
ていないばかりか、国民全体にツケをまわしてさらなる東電救済、原発保
護策の悪だくみを画策しています。東京電力を破綻させ、責任を取らせる
ことが原発廃止への道です。(了)

 「原発いらない!ちばネットワークニュース」
     2016年12月号より許可を得て転載



.. 2016年12月28日 08:34   No.1126007
++ 島村英紀 (部長)…205回       
2017年の元日は「うるう秒」の日 地震の研究に意外な影響が…
 |  大西洋の真ん中にあるアゾレス諸島での地震
 |  世界の金融市場が緊張
 |  警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 コラムその179
 └──── (地震学者)

◎ こんどの1月1日朝に、1日を1秒長くする「うるう秒」が挿入され
る。日本標準時で午前8時59分59秒と9時0分0秒の間に、「8時59分
60秒」が入るのだ。
 1972年から原子時計が暦に採用された。つまり年や日の長さを、それま
での太陽の観測から決めていたやりかたをやめて、原子時計を採用した。
 ところが、実際の地球の自転の変化は予想を超えて大きかった。それに
合わせて地球上の時計を調整しなければならなくなったのである。
 地球の自転の速さは、一定ではない。一般には少しずつ自転が遅くなっ
ているから、ときどき「うるう秒」を入れなければならない。しかし不思
議なことに、ときには自転が早くなることもある。
 「うるう秒」はたった1秒。よほど気にしている人以外には、ほとんど
の人は気がつくまい。

◎ だが、地震の研究に影響が出たことがある。
 ちょうどこの時間に地震が起きたのだ。
 震源の位置や発震時(震源で地震が起きた時間)は、各地に置いてある
地震計が観測した地震波の到着時間を、中央のコンピューターに集めて、
その時間差から計算する。この仕組みは世界各地で動いている。
 間の悪いことに1980年1月1日、世界標準時の0時に、その地震は起
きた。大西洋の真ん中にあるアゾレス諸島でのことだった。震源から出
た地震の波がそれぞれの観測点を通過している、ちょうどそのときに「う
るう秒」が挿入されて、時計が1秒だけ遅らされてしまったのだ。
 このため、震源を計算するコンピューターがパニックを起こしてしまっ
たのだ。
 時計がずれたために、ある観測点では「昨日」の地震になってしまった
り、全然別の観測点で地震の波がふたつ同時に着いたことになってしまっ
たせいだ。
 この地震の震源は結局は決められなかった。
 気象庁では、この前例もあることから、うるう秒の前後15分間は緊急地
震速報に使っている熊野灘沖の海底地震計からのデータを取り込まないこ
とにした。このために、緊急地震速報は最大12秒遅れることになった。

◎ たぶん、影響は地震観測には限らない。
 「うるう秒」の調整は1月1日か7月1日に行われることになってい
る。
 前回は2015年7月1日だった。この日は平日だったために、世界の金融
市場が緊張して警戒を強めていた。
 米国では東部時間で6月30日午後8時直前に挿入された。このためニュ
ーヨーク証券取引所とナスダック市場では、混乱を警戒して、通常は午後
8時までの時間外取引を30分切り上げて早めに終えたほどだ。
 この日は、電子取引が1秒以下の精度で行われるようになってから初め
て、平日にうるう秒が挿入された。それゆえ混乱を恐れたのだ。その前の
「うるう秒」は2012年7月1日だった。このときは日曜日で金融市場は休
みだったのだ。
 幸い、2015年の「うるう秒」には幸い、心配された混乱はなかった。
今度も元日なので、たぶん混乱はないだろう。
 たかが1秒、されど1秒。文明社会では、意外な影響が出るものなので
ある。


.. 2016年12月28日 09:03   No.1126008
++ 島村英紀 (部長)…206回       
自然災害死者の90%が低中所得国の人々
 | 日本では弱者狙い打ち
 | 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」その180 
 └──── (地震学者)

自然災害にはいろいろあるが、ダントツの一位は地震による災害である。
 昨年秋に、国連が過去20年間に世界で起きた自然災害を数えて公表した。
 それによれば、1996年〜2015年の20年間に自然災害で135万人もの人々が死亡し
た。
 自然災害は、地震や火山噴火のほか、洪水や土砂崩れ、熱波、暴風雨といった
気候変動に関連した災害もある。
 だが、地震と、それにともなった津波の死者は自然災害全体の死者のうち半分
以上の75万人にも達していたのだ。
 これには2004年に起きたスマトラ沖地震や東日本大震災(2011年)による死者
も、もちろん含まれている。しかし、これらだけではなくて、地震と津波による
死者は自然災害では、ずっと一番多いものなのだ。
 じつは、そのほかに気になることがある。気候変動に関連した災害による死者
が増えていることだ。この20年間で2倍以上に急増している。
 これは地球温暖化によって、「気象が凶暴化」していることの反映である可能
性が大きい。これからは、もっと増えるかも知れない。日本でも、いままでにな
い大雨や竜巻が起き始めている。
 ところで、これら自然災害による死者は、日本で起きた東日本大震災を別にす
れば、世界の貧しい国に圧倒的に多いのが特徴だ。この国連の統計によれば、こ
の20年間に自然災害の死者の90%もが、低中所得国に暮らす人々だった。
 国別に見ると、いちばん多かったのはカリブ海に浮かぶハイチだった。
 ハイチは南北アメリカ大陸で最も貧しい国だ。そのハイチが2010年のハイチ大
地震の被害から6年以上たってもまだ復興できていないのに、2016年10月はじめに
ハリケーン「マシュー」の直撃を受けた。踏んだり蹴ったりである。
 ハイチの地震はマグニチュード(M)7.0の直下型地震だった。スマトラ沖地震
と肩を並べる犠牲者20万人以上という被害を生んだ。しかも、そのあとでコレラ
が流行して1万人以上の死者を生んでしまった。
 過去20年間のハイチの災害犠牲者数は合わせて23万人、ハイチの人口の6分の
1にも達した。
 災害は貧しい国々を襲って大きな被害を生んでいるのだ。
 だが、日本も例外ではない。東日本大震災では高齢者の死亡がとくに目立った。
60歳以上の死者は全体の65%にものぼった。なかでも70歳代と80歳以上は、ともに
23%もあった。これは人口比よりもずっと高い。
 自然災害は貧しい国で被害が大きく、豊かな国でも、弱者をねらい打ちにする
のである。
 

.. 2017年01月18日 08:19   No.1126009
++ 島村英紀 (部長)…207回       
大量の軽石が沖縄県・西表島に流れ着いた理由
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その181
 └──── (地震学者)

この5日から鹿児島県・硫黄島の噴火警戒レベルが平常の1から2に引
き上げられた。火口周辺への立ち入りが禁止される。地震が多発してい
るせいだ。
南西諸島は群発地震が多いところだ。
鹿児島県・トカラ列島でも地震が頻発している。2015年までは年に数回
から数十回だったものが、昨年は突然、150回にもなってしまった。
かつて、これらの島々の南西にある沖縄県・西表(いりおもて)島ですさ
まじい群発地震が起きたことがある。1992年のことだ。
身体に感じる地震が2000回もあった。なかでも同年10月14日から20日に
かけて最大震度5の地震が5回も発生して、人々を恐怖におとしいれた。
もっと大きい地震が来るのではないかと人々は恐れたのだ。
群発地震のさなか、大きな地震があったあとに、島の波打ち際に軽石が
ズラリと打ち上げられているのが見つかって人々をギョッとさせた。
軽石は火山の噴火から出る。地震に加えて火山も噴火するのか、との恐れ
が広まった。
しかし、この軽石は2000キロも離れた海底火山から来たものだった。岩
石の成分や付着物を分析して分かった。島崎藤村の詩「椰子の実」ならぬ
軽石の長旅であった。
首都圏のはるか南方にある「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」がある。
そこの海底火山の噴火で大量の軽石が噴出して、海流に乗って沖縄近海ま
で運ばれたものだったのだ。
福徳岡ノ場は有史以来何度も噴火したことが知られている。近年では
2010年や2013年にも海底噴火があり、噴煙や変色水が観測されている。
20世紀に3度も海面上に新島を形成するまでに成長したが、現在は島は
なく、山頂の水深が約20メートルの海中の山になっている。
  1986年に福徳岡ノ場が噴火したときも、4カ月ほどして琉球列島に軽
石が流れ着いたことがある。
軽石は水を吸ってしだいに沈む。こうして海底の広い範囲に軽石がばら
まかれた。
だが、沈んだ軽石は、ちょっとした衝撃や地震動で、また浮き上がるこ
とがある。たまたま西表島の近くの軽石が浮き上がれば、島に流れ着いて
も不思議ではない。ずっと昔の、しかも離れた火山からの軽石が、強い震
動で浮き上がって流れ着いたのだった。
 西表島の群発地震はその後おさまったが、一般に日本で起きる群発地震
は、マグマがらみのことが多い。
 たとえば日本最大規模の群発地震だった長野・松代(まつしろ)町の群発
地震(1965-70年)は、6万3千回という途方もない回数の有感地震を記録
した。また1978年に北海道・函館の南方沖で始まった群発地震もあった。
 この両方とも、上がってきたマグマが地表や海底に届く前に凍りついた
ものだと思われている。もし出てくれば、新しい火山が誕生したことに
なる。
 硫黄島やトカラ列島の群発地震がどう推移するのか、地元では固唾をの
んで見守っている。そして、科学者も大きな関心を寄せているのである。


.. 2017年01月18日 11:00   No.1126010


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