返信


■--古生物学研究を阻む化石の高騰
++ 島村英紀 (部長)…195回          

2億円超の出品も
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその169
 └──── (地震学者)

○ 一月ほど前、米国で恐竜ティラノサウルスの頭蓋骨(ずがいこつ)の化石がオンラインオークションに出品された。かつて地球上に存在した最大級の肉食獣である。最低落札価格は180万ドル(約1億8000万円)という。
 これは、ほぼ完全な形で出土した肉食恐竜の頭蓋骨の化石だ。約7000万年前の白亜紀後期のもので、頭蓋骨の94パーセントが無傷の状態で残っていた。横向きの頭蓋骨の全貌が分かる。
○ この化石は米国北西部のモンタナ州でカナダに近い北東部の農場から昨年夏に発掘された。化石の発掘を手掛ける民間企業が発見したものだ。
 この化石は、落札されて、いずれ、金持ちの応接間に飾られることになろう。
 だが、他方、地球科学という学問は、研究の資料をひとつ失うことになる。
 地球科学のなかでは古生物学という地質学のひとつの分野。この種の研究には「モノ」がなければ手も足も出ない。
 しかし、歯のかけらのような小さなものでもなかなか見つからないので、研究資料の入手には多大な困難がある。生物の化石は、化石として残る確率が、そもそも非常に低い。学者が自ら掘り出せる化石は、ごく限られているのだ。
○ 私の知人で北海道在住の地質学の先生にとっての研究の材料は恐竜の化石である。岩の中から、恐竜の骨ひとつひとつを丁寧に掘り出して恐竜の骨格を復元する。ときには化石を砕いて分析することもある。何年もかかる地道で根気のいる作業が彼の研究なのである。
 こうして当時生きていた恐竜について詳しい知識が集積されて、当時の気候や植生など地球のありさまが復元できる。
○ ところが「学問の敵」は意外なところにいた。恐竜ブームである。
 もともと化石を集めるマニアが多かったが、ブームのおかげで、価格に火が着いてしまったのだ。
 そして、このオークションのように、世界中で大型取引が実施されている。民間の展示会は、いままでは米国や欧州、日本で開催されてきたが、中国や中東でも市場規模が拡大している。中国では骨を組み合わせたニセモノの化石まで売られるようになった。
 今回のように、頭蓋骨の全体が出たときは、とても高価になるのが避けられない。
 研究を進めるためには欲しいのはヤマヤマだ。しかしこれでは、乏しい研究費では手も足も出ない。数十万円以上といった値札が着いていれば、とても買えない。
 入手するのはとうてい無理だとしても「せめて写真を撮らせてもらう」とカメラを持って東京の市場へ出かけるのが、先生の悲しい習慣になっているのである。
○ この化石を出品した会社のオークションサイトでは、ほかにも、全身の45パーセントが残ったティラノサウルスの化石が2億4000万円、72パーセントが残った大型の植物食恐竜トリケラトプスの化石が8000万円で出品されている。もちろん、貧乏学者にとっては高嶺の花なのだ。

.. 2016年10月12日 10:23   No.1108001

++ 島村英紀 (部長)…196回       
地震が引き起こした大洪水 地震の被害は震害だけではない
 |  地震によって起きた地崩れが川をせき止めて洪水を起こした例
 |  黄河の大洪水、長野県の犀川(さいがわ)
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその170
 └────  (地震学者)

○今年は、日本に台風が8つも上陸した。洪水や浸水のニュースが飛び
交ったが、じつは、過去1万年で地球上で起きた最も大規模な洪水は地震
が起こしたものだ。
伝説だった黄河の大洪水が実際に起きていて、その原因が地震だったこ
とを示す研究論文がこの夏に発表された。米国の科学誌サイエンスに掲載
された。
この研究によれば、紀元前1900年頃に起きた地震の土砂崩れで、山峡を
通る黄河がせき止められた。
なにせ黄河。中国でも第二の大河。たいへんな水量だ。地震で出来たダ
ムが半年ほどで持ちこたえられなくなり、崩れて水が下流の低地帯を
襲った。16立方キロという途方もない量だった。
 研究のきっかけは「喇家(らつか)遺跡」の発掘が行われたことだ。中
国のポンペイとも言われ、地下に埋まっていた村が発掘され、大規模な地
震後の洪水によってこの村が埋められたことが分かった。
 この大洪水は、その後、中国最古の王朝、夏の成立につながった。王朝
の始祖、禹は黄河の治水に成功して、はじめての王国を作ったとされる。
川岸の浚渫(しゅんせつ)や水路の変更を行ったのだ。

○地震によって起きた地崩れが川をせき止めて洪水を起こした例は中国だ
けではない。日本にもある。
 長野県で、地震で出来たダムが決壊して大洪水を起こしたことがある。
 1847年に信州(いまの長野県)で起きた善光寺地震。死者は市中だけで
2500人にもなったが、この地震の震災はそれだけではなかった。
 この地震による山崩れは、4万ヶ所以上にも及んだ。なかでも、犀川右
岸の岩倉山(虚空蔵山)の崩壊は日本史上、もっとも大規模な山崩れに
なった。
 斜面の崩落は、犀川(さいがわ)をせき止めて高さ50メートルにもなっ
た。巨大な堰止め湖が作られ、いくつもの村が水没してしまった。
その後堰止め湖の水は増え続け、地震から20日後には、ついに決壊して
洪水を起こした。
洪水の高さは、犀川が善光寺平に出る長野市付近で20メートルにもなっ
た。このため下流の集落がこの洪水に襲われて、流失家屋810棟、死者100
人余りを生んだ。
決壊は予想されていたので下流域の人は避難していたが、それでも、こ
れだけの被害を生んでしまったのだ。

○マグニチュード(M)6.8を記録した新潟中越地震(2004年10月23日)のと
きも、この堰き止めが起きた。だが土木工事で必死に水を抜いたので、大
規模な二次災害は防がれた。
しかし、そのほか山崩れや土砂崩れが起きて鉄道や道路がいたるところ
で分断されてしまった。
2004年は夏から秋にかけて台風が過去最多の10個も上陸して例年になく
雨が多かった。7月に新潟県一帯で大規模な水害が起き、雨のせいで地盤
が緩んでいた。
もともと地滑りが起こりやすい地形だったうえに、地震の前に雨が多
かったために、地震で多くの土砂崩れが起きたのだ。
 間の悪いときに地震が起きてしまったのだが、地震の被害は震害だけで
はないのだ。

.. 2016年10月25日 08:35   No.1108002
++ 島村英紀 (部長)…197回       
米国の被害から学べなかった日本  大規模な視察団を派遣も
 | 「日本では高速道路も橋も倒れるはずがない」と保証した
 | 1年後 阪神淡路大震災(1955年)では、高速道路があえなく横倒
|  「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」コラムその172 
 └──── (地震学者)

○いまからちょうど27年前の1989年10月17日、米国サンフランシスコを大きな地震が襲った。ロマ・プリータ地震である。マグニチュード(M)は7.1。都市直下型で、死者63人。湾をまたぐ橋が破損するなど、大きな被害が出た。
米国での地震被害としては1906年のサンフランシスコ大地震(M7.8)以来のものだった。1906年の地震では約3000人が死亡し、発生した火災が3日間燃え続けたこともあって22万人以上が家を失った。
1989年の地震で破損したのはサンフランシスコと対岸にあるオークランドを結ぶ橋ベイブリッジの一部だ。瀬戸大橋が開通するまでは世界一長い吊り橋で、高速道路が通過し、一日に27万台の通行量がある。
東京のレインボーブリッジのように、橋が上下に重なっている。上層の高架が崩壊して下層を走行していた自動車を押し潰し、上層を走行していた自動車も高架道路から投げ出された。下敷きになった高速道路だけでも41人の死者と多くの負傷者を出してしまった。
○この4年あまり後の1994年1月に今度はカリフォルニア州のもうひとつの大都市、ロサンゼルスを地震が襲った。ノースリッジ地震である。
Mは6.7だったが、米国史上最も経済的損害が大きい地震になった。これはサンタモニカ高速道路とアンテロープバレー高速道路の二つの高速道路があちこちで崩壊したせいだ。高速道路の崩壊は震源から42キロのところまで及んでいた。
米国やニュージーランドには「活断層法」があり、活断層の近くには病院や学校など公共の建物は建てられない。だが、この地震は10月21日に起きた鳥取の地震と同じく、活断層がないとされているところに起きた地震だった。ちなみに日本では分かっている活断層だけでも2000以上もあるので、法律が制定できない。
他方、ロマ・プリータ地震はサンアンドレアス断層という、世界でも最長、1200キロにも延びた活断層の上で起きた。
この両方の地震とも、日本政府が大規模な視察団を派遣した。
視察に行った当時の建設省関係の専門家たちは、帰国後、「日本の道路や橋は関東大震災にも耐えることになっているから、日本では高速道路も橋も倒れるはずがない」と保証した。
だが、日本でも阪神淡路大震災(1955年)では、高速道路があえなく横倒しになってしまった。地震は奇しくもノースリッジ地震のちょうど365日後に起きた。

○視察団の目的は日本が得るべき教訓はなにか、文明が進んだ国の地震被害がどんなものなのかを知るためだったはずだ。
しかし、この視察は「教訓」にはならなかった。米国でスリーマイルの事故(1979年)や旧ソ連でチェルノブイリの事故(1986年)が起きても、日本の原発では事故が起きるはずがない、と言っていた専門家の話とよく似ている。

.. 2016年10月31日 10:19   No.1108003
++ 島村英紀 (部長)…198回       
地球の外の星にも地震はあるのか
 |  地球のような環境やそこに住む高等生物を探す試みは
 |  これからも続けられる
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその171
 └──── (地震学者)

 95光年先の宇宙からの信号を受信したことが8月30日に報じられた。
かつては地球上の生命が、地球だけにたまたま起きた事件だと考えられて
いた。だが、条件さえ揃えばどこでも生まれるということが分かってきた。
 それゆえ、地球と同じような環境の星や地球外生命を探すことに科学者
の関心が移っている。人類よりも高度の文明を持った地球外生命を探すこ
とさえ行われるようになっている。「能動的な地球外知的生命体探査」と
いう計画だ。
 95光年離れたところからの信号は、ロシア西部にある科学アカデミー特
別天体物理観測所の電波望遠鏡が受信した。
 ヘラクレス座の方向から来たと報じられた信号は11GHz(ギガヘル
ツ)の周波数だった。受信した信号の強さから、もしこの信号が、四方八
方へ向けて出されたものだったら、そのエネルギーは10の20乗ワットとい
う莫大なものと計算された。これは太陽光よりも数百倍強い。この強さの
信号を出せるのは地球文明よりもはるかに進歩した文明でなければありえ
ない。
 ところで、見えているヘラクレス座は太陽に近い大きさの恒星群で自ら
光っているから、温度は数千度Cもあるはずで、もちろん生物は住めない。
だが、この恒星系には少なくとも1個の惑星「HD164595b」があ
る。大きさは海王星くらいで、40日間で軌道を1周する。この惑星や近く
の未知の惑星になにかが住んでいるのだろうか。
 しかしその後、世界各地の電波望遠鏡を動員して探したが、この電波は
二度と見つからなかった。現在ではこの宇宙からの信号は、地球のどこか
らか出た信号を誤って捉えたものではないかと考えられるに至った。
 地球で発せられた電波を宇宙からの信号と勘違いする例は、じつはよく
ある。電波望遠鏡は非常に微弱な電波を観測する性能を備えているから、
たとえばオーストラリアのパークス天文台では天文学者がレトルト食品を
温めたところ、電子レンジが発するマイクロ波を宇宙からの信号と間違っ
て観測したこともある。
 だが、地球のような環境や、そこに住む高等生物を探す試みはこれから
も続けられるだろう。
 じつは過去にも1972-73年に打ち上げられた米国の宇宙探査機パイオニア
10号と11号に、人類からのメッセージを絵で記した金属板が取り付けられた。
1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機にもメッセージが書かれ
た「ゴールデンレコード」が搭載された。このレコードにはピアニスト、
グレン・グールドの名演奏、バッハの「平均律」録音も含まれている。
 この9月末には中国南部の貴州省で直径500メートルもある世界最大の電
波望遠鏡が完成した。目的の一つは地球外生命の探査だ。そのうちに、高
度な地球外生命やその文明が解明されるのだろうか。
 もし通信が可能になったら、私としてはいちばん訊いてみたいことは、
その星に地震や噴火は起きるのだろうか、ということだ。太陽から近くて、
まだ内部が熱いゆえ起きていると考えられている事件が地球だけのものか
どうか、知りたいからだ。


.. 2016年11月07日 08:08   No.1108004
++ 岩上安身 (幼稚園生)…1回       
今回の地震は東日本大震災の余震!?
 |  「M8くらいまでのクラスは余震としてこの先100年は続きます」
 |  −武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が岩上安身の
 | 単独取材で指摘!
 |  東北地方を、再び大規模地震が襲った。津波で原発も止まる
 └────  記事公開日:2016.11.22 テキスト

○2016年11月22日午前5時59分頃、福島県沖を震源地とする地震が発生。マグニチュード7.4、震源の深さは約30kmで、最大震度は5弱を観測した。この地震で、岩手県、宮城県、福島県、茨城県で津波が到達した。
 岩上安身は発災直後、地震学の世界的権威である、武蔵野大学特任教授の島村英紀氏に取材をした。以下に、岩上安身のツイートを掲載する。
 島村氏には、熊本・大分大地震が発生した直後の2016年4月25日にも、岩上安身がインタビューをしている。
「原発安全神話」には御用“地震”学者の陰!地震学世界的権威が証言!熊本・大分大地震はさらなる巨大地震の前兆か!?岩上安身による島村英紀教授インタビュー 2016.4.25

○岩上安身による島村英紀氏への電話取材の模様(岩上安身のツイートを掲載)
 武蔵野大学特任教授の島村英紀氏に、たった今(11月22日午前9時)、電話で直撃取材。「今回の東北沖地震は、アウターライズ(揺り返し)型の地震ですか?」という質問に、島村教授は、「そうではない。これは余震です」と断言。
「余震?最近、そんな大きな本震がありましたか?」と聞くと、「5年前の3.11東日本大震災の時の地震が本震で、今回の地震がその余震」
 「5年も経っているのに、そんなことがあるんですか?」と私が驚くと「100年は続きますよ」と島村先生。

○「余震は、マグニチュードでいうと一段階くらい低いレベルくらいまでは起きるんです。3.11の時は、M9だった。ですから、M8くらいまでのクラスは余震として起こりえますよ。今回の規模のものは珍しくない。これから先も、ずっと起こりえます」
 では、アウターライズが起きたらどうなるのか。
島村氏「今回、津波で原発も止まるようなことは起きていますが、たいした高さの津波ではなく、被害も小さいですよね。ですが、アウターライズが起きたら津波はもっとずっと大きくなります。警戒が必要です」
 つまり、東日本の沿岸部では、3.11の記憶も生々しく、復興もままならないのに、あの3.11の余震に100年悩まされ続け、それとはまったく別に巨大な津波を伴うアウターライズ型の巨大地震が、同じ東北沖を必ず襲うと覚悟しておかなければならないのだ。

○問題はそれだけではない。川内原発のある鹿児島から熊本、大分を経て、愛媛の伊方原発、四国、関西、さらに東に伸びて浜岡原発、そして東海から関東圏まで伸びる中央構造線上での地震が頻発している。これは南海トラフの予兆とは考えられないか。
島村氏「これは中央構造線に沿って、内陸型地震が起こる可能性があることを示す。南海トラフには直結しないが、仮に大きな地震が中央構造線上に起きれば、原発事故に直結しかねない。危険な兆候である」


.. 2016年11月28日 08:26   No.1108005
++ 柳田 真 (課長)…173回       
大地震・噴火はいつ来てもおかしくない(地震学者)
 |  それらの前に危険な全原発を廃炉にさせたい
 |  当面の最重点−我々と子・孫のために努力しよう
 └──── (たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)

1.米国民の分断と世界の不安定をもたらすトランプ新米大統領の登場
で、世間の話題がそちらに集中しているが、日本列島の本当の危機に目を
向けたい。いやな話や悪い未来予測の話は人間は本能的に避ける。が、先
送りすると、破局がもっと大きくなるばかりだから。日本列島の本当の危
機は何か。

2.このところ地震が多い。熊本地震、鳥取地震…と、日本一の活断層・
中央構造線が火をふいている。
 日本列島は地震・津波・噴火の三大リスクの島だが、三大リスクのせい
で、その分、美しい風景が日本列島に多い、プラス面である。その日本列
島が、今、活発期に入っていると思われる現象が多く発生している。

3.島村英紀氏(地震・地質学者)は、いつもは慎重な発言の学者だが、
このところ警告発言をされている。「20世紀は通常の世紀とくらべると統
計的に見て地震が少なすぎた。21世紀は(過去の世紀の統計からみて)大地
震・噴火がいくつかおきる(多発する)とみる」と。おそろしい警告である。
 21世紀の初め(2011年3月11日)に東日本大震災と東電福島第一原発大惨
事がおきた。

4.日本列島が揺れ動く危険な時期に「原発再稼働」が大手電力会社と安
倍政権によってゴリ押しされている。多くの国民の反対(私たちも「再稼働
阻止全国ネットワーク」をつくって4年間努力した)の中で、現在の再稼働
は2基(川内原発2号機と伊方原発3号機)にとどめられている。東電柏崎
刈羽原発の再稼働問題をかかえる新潟県知事選も6万3000票の大差で再稼
働反対の米山隆一さんが当選した。
努力した分がむくわれた。

5.安倍政権の登場で空気が悪化し、原発再稼働がゴリ押しされている
が、しかし「原発いやだ」の声は広く大きい。
 目前に色々な運動課題があるが、「原発をゼロに」を最重点にして、み
んなの力を合わせたい。
 日本列島に大地震・噴火がいつ来てもおかしくない・明日かもしれない(
地震学者の声)中で、生存の基盤が破壊される・原発大惨事をなんとしても
防ぎたい。
 「地震や噴火は止められない」が、「原発は人間の手でとめられる」
 心あるみんなで力を合わせよう、選挙では共通公約で原発ゼロをかかげ
てほしい、原発ゼロを実現させよう。 (2016年11月17日記)
  (初出:月刊「たんぽぽニュース」No251・2016.11月発行)


.. 2016年11月28日 08:49   No.1108006
++ 島村英紀 (部長)…199回       
安政江戸地震と天才絵師・国芳 幕府を風刺
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその173
 └──── (地震学者)

 11月11日(新暦)は安政江戸地震(1855年)が起きた日だ。この地震は
江戸の中心部に甚大な被害を生み、日本の内陸で起きた地震で最大の死者
を出してしまった。震源は隅田川の河口付近だった。
 だが、これだけの大被害を生んだ都市直下型地震だったのに、被害が集
中したのは比較的狭い地域だけだった。
 埋立ての歴史の浅い隅田川東岸の深川などでは、甚大な被害を生んだ。
また、日比谷から大手町、神田神保町、現在の皇居外苑である西の丸下と
いった谷地や川を埋め立てた地域でも、建っていた大名屋敷が軒並み全壊
してしまった。
 現代の地震学の知識からすれば、被害が集中した地域は沖積層が厚いと
ころだったのである。
 他方、山手地区は台地の上なので被害はそう多くはなかった。意外なこ
とに日本橋地区の大半や銀座などでは元は海だったのに被害が小さ
かった。これは埋没した洪積台地が地表面のすぐ下にあったためだと考え
られている。
 これらの「教訓」は、これから襲って来る首都圏直下型地震にも、もち
ろん当てはまるにちがいない。
 ところで、歌川国芳(1798-1861年)がブームだ。庶民に受ける錦絵(
色鮮やかな多色刷りの浮世絵)を多数描いて一世を風靡した。江戸時代末
期の浮世絵師。江戸時代末期のスターだった。
 だが、天保の改革で風紀粛清が謳われて浮世絵も役者絵や美人画が禁止
されてしまった。これは画家にとっても大打撃だった。
 しかしその後も国芳は、いろいろな手法を使って禁令を巧みにくぐり抜
けた。幕府を風刺する国芳に江戸の人々は大きな喝采を浴びせた。
 その国芳を見込んで、新吉原の岡本楼の主人が浅草寺に奉納するための
絵馬を依頼した。出来たのは「浅茅が原(あさじがはら)の一つ家」。
縦228センチ、横372センチの大きなもので、桐板に金箔押し地の豪華な絵
だ。いまでも浅草・浅草(せんそう)寺が持っている。
 江戸浅草の橋場町あたりは、かつては浅茅ヶ原と呼ばれたさびしい場所
だった。旅人たちはここの唯一の人家に宿を借りた。家には老婆と若く美
しい娘の2人がいたが、じつは老婆は非道な鬼婆だった。旅人を泊めて、
寝床を襲って石枕で頭を叩き割って殺害し、亡骸(なきがら)は近くの池
に投げ捨て、奪った金品で生計を立てていた。
 ある日、稚児(ちご)が宿を借りた。老婆は寝床についた稚児の頭をい
つものように石で叩き割った。だが亡骸をよく見ると自分の娘だった。娘
は、自分の命をもって老婆の行いを諫めようと稚児に変装したのだった。
 岡本楼の主人がこの絵馬の礼に国芳を招き、一夜の泊を勧めたが、国芳
は固辞して帰った。
 その晩に起きたのが安政江戸地震だった。岡本楼は倒壊してしまった。
 なぜ、国芳が宿泊を拒否したのか、大地震の虫の知らせがあったのかは
記録に残っていない。
 結局、国芳は難を逃れたことになる。そうでなかったら、国芳の一生は
この地震で終わっていたかもしれない。


.. 2016年11月28日 10:15   No.1108007
++ 木原壯林 (中学生)…48回       
地震に弱い使用済み核燃料プール 地震で倒壊する恐れもあります
 |  原発が再稼働すれば、さらに危険な状態になる(上)
 └──── (若狭の原発を考える会)

○去る11月22日、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の大きな地震が発生しました、被災された方々のご苦労を思い、お見舞い申し上げます。
 この地震によって、福島第一原発3号機の使用済み燃料プールの冷却水循環系統が自動停止したと報じられ、改めて、使用済み核燃料の安全保管の難しさを考えさせられました。

○使用済み核燃料プールとは
 原発を運転すると、核燃料の燃焼が進むにつれて、核分裂性のウランやプルトニウムが減少するので核分裂反応を起こす中性子の発生数と発熱量が低下し、また、核燃料中に運転に不都合な核分裂生成物(特に希ガスや希土類)が多量に蓄積し、核燃料の持続的な燃えやすさ(余剰反応度)が低下します。さらに、核燃料被覆材は、腐食や応力によって変形します。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなります。そのため、使用済み核燃料がたまります。
 一般的に、使用済み核燃料は、交換直後は高放射線、高発熱量で移動させることが出来ませんから、原発内にある貯蔵プール(使用済み核燃料プール)で3年〜5年ほど保管・冷却されます。こうして、空冷で輸送できる状態になった使用済み核燃料は、再処理工場に輸送されて処理されるか、高レベル放射性廃棄物処理場で長期保管されることになっています。ただし、再処理工場稼働の目途は立たず、保管地も決まっていないので、多くは、各原発の使用済み核燃料プールに溜めおかれています。
 使用済み核燃料プールの設置個所は、沸騰水型原発と加圧水型原発では異なります。いずれにしても。燃料は極めて強い放射線を発しており、水で遮蔽する必要があり、燃料交換は常に水中で行ないます。水中から燃料を出したら、作業員が即死します。


.. 2016年11月28日 10:29   No.1108008
++ 木原壯林 (中学生)…49回       
○沸騰水型原発の使用済み核燃料プール
 原子炉上部にある使用済み燃料プールは原子炉と水路で繋がっていて、普段は仕切りで区切られています。
燃料を交換するときは、格納・圧力容器の上蓋を開け、水を満たし、燃料プールとの仕切りをはずします。
 原子炉から燃料を取り出すには、燃料交換機を移動させ、原子炉から約4メートルの細長い燃料集合体を引き上げ、水路の中を移動して、燃料プールのラックに挿入します。新燃料を原子炉に装荷する場合は、逆の作業を行います。

○加圧水型原発の使用済み核燃料プール
 使用済み燃料プールは隣の建屋にあり、格納容器内のピットとは、小さなトンネルで繋がっていて、このトンネルを使って、燃料の出し入れを行ないます。
 原子炉から引き上げられた燃料集合体は、格納容器内ピットの水の中で、水平に寝かされ、輸送装置に乗せられ、トンネルを通って、隣の建屋の使用済み燃料プールに送られます。後、燃料集合体は再び垂直にされ、吊り上げられて燃料ラックに挿入されます。燃料を原子炉に装荷する場合は、逆の作業を行います。
 加圧水型では、燃料を立てたまま移動できる大きな穴を格納容器に開けることができないため、このような複雑な作業になりますから、燃料交換作業は、長くかかり、沸騰水型に比べトラブルは多くなります。
 加圧水型の場合、事故時に、燃料の原子炉からプールへの迅速移送は困難です。また、移送中の大地震で格納容器と燃料プール建屋がずれて、燃料が破損する、トンネルの途中で立ち往生する、トンネル部分が壊れ、外へ汚染水が漏れだすなどのトラブルが生じかねません。
 このように、燃料交換一つを取ってみても、加圧水型の方が安全という関電などの主張は偽りです。
   (下に続く)
※使用済み核燃料プールは、極めて脆弱で、
  地震で倒壊する恐れもあります。
  地震多発国に原発はあってはなりません。
 若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090−1965−7102)


.. 2016年11月28日 10:46   No.1108009
++ 島村英紀 (部長)…200回       
最新の住宅も倒壊の危険 2階建て木造住宅、
 |  構造計算の義務なし
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその174
 └──── (地震学者)

 大地震のあとで、壊れた家を丹念に調べている人たちがいる。建築関係
者たちだ。
 その結果、4月の熊本の地震で恐ろしい事実が明らかになった。耐震基
準が最高という最新の住宅でさえ壊れていたのだ。
 阪神淡路大震災(1995年)以降は、新たに「2000年基準」が適用される
ことになった。この基準で柱や梁(はり)の接合部の接合方法や耐力壁の
バランスなどの規定が厳格化された。それゆえ、それ以後に建てられた家
は、以前のものよりも地震に強いはずだった。
 だが、熊本の被災地では「2000年基準」の住宅が熊本・益城(ましき)
町の1割あったが、そのうちの3〜4割が倒壊、大破してしまっていた。
 2000年以降に完成した木造住宅の被害で、なかでも衝撃的だったのは、
性能表示制度の「耐震等級2」で設計していたある住宅で、1階が潰れて
しまったことだった。「耐震等級2」とは、2000年基準よりもさらに強い
1.25倍の強さに相当する。
 それよりもっと前、1981年以降で「2000年基準」が導入される前に完成
した「新耐震基準」の住宅被害はもっと大きかった。約100棟のうち、
6〜7割が倒壊したり大破してしまっていたのだ。これは同じマグニ
チュード(M)7.3の阪神淡路大震災以上の壊れ方だった。
 もともと九州は大地震がないと信じられていた。毎年のように襲って来
る台風が一番の自然災害で、地震は二の次だったのだ。このため、熊本の
場合は、地震に耐えるという施工の慣習が甘かった。
 たとえば外装に使われている「サイディング下地」に「構造用」という
強い合板が使われていない。それゆえ耐震性能は「筋交(すじかい)」だ
けに頼っている。筋交とは柱や梁の間に斜めに入れる補強材だ。
 だが筋交には樹種、無節などの使用規定がない。そのうえ筋交の中間部
が固定されていない建物が多かった。それゆえ筋交が挫屈して、建物が大
破してしまった例が多かったのだ。
 しかし九州には限らない。日本人の多くが住んでいる2階建て木造住宅
のほとんどは、構造計算をしないで建てられている。
 「建築基準法」では3階建ては構造計算が義務だが、2階建てまでは、
しなくても、違法でも手抜きでもない。
 つまり家を建てる「耐震基準」は大地震のたびに強くなってはいるが、
実際の施工は構造計算を行わず、地震に対する強さは建築した業者にまか
されているのである。
 「基準」では、建物の大きさによって筋交や耐震壁の量や金物の使い方
は決まっている。だが、それで本当に足りているのかとか、柱や梁の大き
さは大丈夫かの検証はされていないのである。
 最新の基準だったこの地震で壊れてしまった熊本の家の設計を構造計算
にかけてみたら、ほとんどの項目でアウトになった。
 構造計算をしないで建てた建物でも、構造計算するとアウトになる。
そして、本当に倒壊してしまった、というのが、この熊本での倒壊なの
だ。
 さて、あなたの家は大丈夫なのだろうか。


.. 2016年12月01日 10:08   No.1108010


▼返信フォームです▼
Name
Email
ホームページ    
メッセージ
( タグの使用不可 )
Forecolor
アイコン   ICON list   Password 修正・削除に使用