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脱力の町長選 9月末から数日間、私はたまたま愛媛にいた。10月1日の朝、ホテルで 愛媛新聞を見て、一気に眠気が吹き飛んだ。〈伊方町長選あす投票〉 えっ、伊方町って、あの伊方原発の伊方町? 全然知らなかった。それもそのはず。東京のメディアでは、この件はほ とんど報道されていなかったからである。 町長選は山下和彦前町長の病気辞職にともなうもので、自民党県連総務 会長などを歴任した元県議で、原発と共存派の高門清彦氏(58)と、共産党 南予地区委員長で原発の停止・廃炉を求める西井直人氏(59)という新人同 士の一騎打ち。高門氏は前町長と町議16人全員(!)の後押しを受けての立 候補という。 そして2日。投票総数6312(投票率71.45%)。高門氏は5451票。西井氏は 765票で、高門氏の圧勝だった。 伊方原発は日本一危険な原発といわれる。地震の多発地帯である中央構 造線の近隣に位置し、耐震設計に懸念があり、住民の避難路も確保されて いない。8月12日の3号機再稼働の際には、日本中の人が反対した。それ でも選挙ではこのような結果になる。原発に頼らない町づくりから考えな いと、この構図は変わらないのだろう。 にしても、たった六千数百人の民意で日本の命運が左右されるって。 どうにも割り切れない気分である。(文芸評論家) (10月5日朝刊25面「本音のコラム」より)
.. 2016年10月12日 09:04 No.1106001
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