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地震の影響
志賀原発の耐震評価で想定していたのは、直下10キロ圏内のM6.5の地震であった。その地震により生ずる加速度S1(設計用限界地震)は370ガル、S2(設計用最強地震)は490ガルであった。 それでも、能登半島地震では、想定していた地震動S1を上回った。そのため、耐震設計上の地震想定に誤りがあったということになる。 たとえ地震による直接的な破壊が無かったとしても、原発に危険を及ぼす地震の想定そのものが間違っていたうえ、その基準地震動以上の揺れに見舞われた原発が、運転再開できるわけがない。
耐震補強の謎
北陸電力は、能登半島地震後半年もたたないうちから、「耐震補強」を始めた。 ところがその「耐震補強」の根拠はさっぱり示されなかった。補強工事というのは工学の話であるから、要求される鋼材の強度や構造物の支持力など、厳密に決められている。当然、そういう強度向上の工事をするには、もともと「何の力がどれだけ働くか」を精緻に決めなければ設計できない。つまり、少なくても地震発生直後には補強工事に必要な計算が出来るほどに「隠していた断層」の評価を行っていたと思われるのだ。 その断層名は「笹波沖断層帯」と呼ばれ、長さ約43キロ、最大マグニチュード7.6の地震を起こす可能性があると、北陸電力が明らかにしたのは2008年3月14日のことだった。それにより、基準地震動も600ガルに引き上げられた。しかしこれも、事前に調べていた調査検討の内容をひた隠しにしてきた「隠蔽」と言うべきものだ。 これで、邑知潟断層帯を分断したり、能登半島地震を起こした海底断層を切り刻んだりしたことに対して「もっと大きな断層地震を想定したのだから問題はクリアされた」と主張したいのであろう。だが、そう簡単な話ではない。 この断層が活動した場合の、最大の地震はマグニチュード7.6が妥当なのかどうか、そしてその地震動による開放基盤表面上の地震が本当に600ガル止まりなのか、中越沖や宮城沖地震を見ると、とてもそんな規模で済みそうにないと思われる。また、そのための評価結果は、まだ誰も「審査」を終えていない。中間報告を出しただけで、もう再起動出来るとする発想そのものが理解できない。 耐震設計上の基礎となるべき地震のパラメータも地盤、地質の評価も、耐震設計や設備補強の詳細も明らかにされていない段階から既に自治体などに対して再起動の申し入れを行い、中間報告が出た直後に動かしてしまうようなやり方であったのに、保安院も安全委員会も何も言わない(あえて言えば国がそうさせている)現実は、とにかく既成事実を先行させ、柏崎刈羽原発も含めて「再起動の筋書き」を作り上げてしまおうとする強引さだけが目立つ。 こんなことでは原発震災を防ぐどころか、新たな不当行為をまかり通らせる結果になるだけである。
志賀原発は試金石
全国のBWRで発覚、問題となった「制御棒脱落事故・欠陥放置」「耐震偽装」 「タービン破損」で、重大な役割を果たしてきた北陸電力志賀原発2号機の再起動は、能登半島地震からちょうど一年を経た後の3月26日に予定されている。 それに対して、全国から518,107筆もの運転反対署名が集まった。(2月末現在)そして、2月には北陸電力本社のある富山市で500人規模のデモも行われた。 この声を背景に、志賀、柏崎刈羽原発を始め、全国の原発を止めるためにまた一つ歩を進めようではないか。
.. 2008年03月30日 08:58 No.110005
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