|
復興交付金は「住民の生活再建」「人間の復興」にこそ使うべき | 「復興交付金」は誰のためにあるのか− | 福島県原発被災自治体の財政問題 └──── (たんぽぽ舎会員)
1.2010年度から2014年度決算にみる基金の激増とは
福島第一原発事故は2011年3月だった。つまり2010年度末ということになる。この2010年度決算を平年度の水準としてみると、2010年度決算と2014年度決算の福島県原発被災自治体財政の違いは歴然である。 すなわち、2011年度から復興交付金等が大量に交付され、基金(積立金)として積み上がっているのである。 双葉郡5町の「将来にわたる財政負担」を見てみよう。▲印はマイナスを意味する。将来負担がマイナスということは、基金残高の方が借金である地方債現在高等を上回っていることを意味する。 <2014年度「将来にわたる財政負担」の状況> ・浪江町 ▲ 8,735,022千円( 87億3.502万円) ・双葉町 ▲ 48,695,232千円(486億9,523万円) ・大熊町 ▲ 77,272,011千円(772億7,201万円) ・富岡町 ▲ 6,692,859千円( 66億9,285万円) ・楢葉町 ▲ 4,181,070千円( 41億8,107万円)
その要因は、毎年度の予算を執行できずに基金として積み上げてきたことにある。大熊町をみると、2011年度以降は歳出総額の50%前後を積立金に回してきた。 逆にいえば、予算の半分前後しか執行できていないということになる。 なお、2014年度は、大熊町と双葉町で基金残高が一気に膨張した。この点は次項で述べる。
2.中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金基金
国は、2014年度補正予算として1,500億円を中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金基金として交付した。内訳は、福島県650億円、大熊町461億円、双葉町389億円である。 なお、環境省が提示した事業内容は「生活再建・地域振興等に係る事業」として、 イ.ふるさととの結びつきを維持するための事業、 ロ.風評被害対策のための事業、 ハ.生活空間の維持・向上のための事業、 をあげている。 大熊町は環境省の提示を踏まえて交付要綱を策定した。2016年4月1日から10年間に支出される経費を対象とし、世帯ごとに年間10万円を限度とすることになっている。この要綱による交付金は最大限で100億円程度になると思われる。とすると、残りの361憶円はどうのように使うのか。現時点で使途は明確にされていない。 さらに大熊町には、財政調整基金・特定目的基金等として約238億円、震災関連基金約536億円もの膨大な基金が積み上がっているが、使途は明確でない。
3.基金の使途は住民の生活再建、「人間の復興」に
楢葉町と富岡町には、原発事故にともなう福島県内の指定廃棄物の民間処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」で最終処分する環境省の計画に対して、福島県は地域振興策として計100億円を交付する。「カネで解決する」手法はここでもまかり通る。 少し旧聞に属するが、今年(2016年)2月18日の朝日新聞は「仮設 5年で190人孤独死」と報じた。基金(カネ)ばかり積み上がって、住民は死に至る。 まさに「民を殺す国・日本」なのだ。 復興交付金や中間貯蔵施設関連基金は、住民の生活再建、「人間の復興」にこそ使うべきなのだということを、あらためて声を大にして問いたいと思う。
.. 2016年06月28日 08:14 No.1065009
|