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熊本地震2ヵ月
熊本地震が始まってから14日で2カ月になる。余震は小さい。新しい建物は安全。前震、本震で2度の震度7は、そんな思い込みを覆し、想定しなかった事態が起きた。教訓を防災に役立てたい。 熊本地震は4月14日夜、熊本県益城町で震度7を記録した地震(前震)で始まった。16日未明にはマグニチュード(M)7・3の本震が起きた。 政府の地震調査委員会は先週、地震活動が減っている状況から「M6程度の余震が発生する可能性は低下した」とする評価をまとめる一方、最低1カ月程度は震度6弱以上の揺れに注意が必要とした。実際、12日夜の地震では八代市で震度5弱を記録した。 予知はできないが、前震・本震型の地震や、同規模の地震が連続する双子地震が起きることは知られている。九州では過去にも連続地震があったが、2カ月前は想定しなかった。 気象庁が最初に出した余震情報は「震度6弱」を警告した。6弱は耐震性が劣る建築物は倒壊の恐れがある。だが、政府は避難していた住民を屋内に入れようとした。危険性を想定しなかった。 耐震基準の在り方も問い直されている。基準は「住んでいる間に一度あるかないかの地震の場合は、建物に被害が出ても、中にいる人の安全を確保する」ことが目標で、1回の地震しか想定していない。「最低限の基準」だが、絶対安全と受け取られがちだった。 益城町役場など市町村の庁舎や学校施設などが壊れて使えなくなった。中には耐震補強を施した施設もあった。一方、免震構造の熊本大医学部付属病院は、地震後も平常通りに機能した。 これまでは震源断層が注目され、枝分かれした分岐断層の危険性は軽視されていた。現地調査で益城町では分岐断層のズレが大きいことが分かり、被害との関連性が高いと考えられている。 福井県の敦賀原発2号機では、原子炉建屋の直下に浦底断層の分岐断層が存在するとの指摘がある。原発に限らず、断層の直上には建物を造らないルール作りが望まれる。 地震調査研究推進本部によると、首都直下地震や南海トラフ地震の発生確率は、今後30年以内に70%程度とされる。国も自治体も、施設の新設などに際しては、地盤のよい場所を選び、耐震性を高くするように努力すべきだ。重要施設は免震構造を考えるべきだろう。 (6月14日朝刊5面「社説」より)
.. 2016年06月16日 08:39 No.1063001
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