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東京ガス「電力参入」で大誤算
電力小売全面自由化の台風の目として注目を浴びる東京ガスに暗雲が立ちこめている。昨年12月に電力会社の託送料金が決定したのを皮切りに、新規参入者が相次ぎ電気料金メニューを発表。東ガスは新規参入者の先陣を切って顧客獲得合戦に名乗りを上げたが、肝心の客足の伸びは極めて鈍い。 東ガスの障壁となって立ちはだかっているのは旧勢力の電力会社だ。東京電力は東ガスの天敵である首都圏のLPガス会社を囲い込み、中部電力は東ガスのお膝元である首都圏の都市ガス会社の切り崩しに成功した。(中略)
「電力会社の本気度を読み誤った」
首都圏需要の1割を獲得するという東ガスの野望の大きな障害となっているのは、東電と中部電の存在だ。東電は電力小売全面自由化に向けた戦略の柱として、大手LPガス会社とのアライアンスを掲げている。(中略) 「中部電は自社販売ではなく都市ガス会社に電気を卸す作戦に出た。東ガスには真似できない、名を捨て実を取るやり方だ」と前出の大手都市ガス幹部は舌を巻く。
ただの消耗戦に陥る可能性
生き残りへ手段を選ばない東電と中部電とは対照的に、東ガスはあくまで自社ブランドに固執し、自らの供給エリアである首都圏での籠城を決め込む。東ガスも都市ガスとLPガスの計42社と提携を結んだが、東電と中部電の提携先と比べると、いずれも顧客基盤や営業力では劣る顔ぶれだ。 残された道は、値引き競争しかない。(中略) 当然ながら、電力小売全面自由化に参入するのは電力会社と都市ガス会社だけではない。前出の東急パワーサプライをはじめ石油、通信、不動産メーカーとあらゆる業界が名乗りを上げているが、彼らにとっての電気事業は本業の付加価値という位置づけだ。電気で儲けが出なくとも客を引き込むことができればそれで御の字といった程度に過ぎない。 一方、電気とガスしか商材のない東ガスは、赤字の電気を売るわけにはいかない。この構造的な差は永遠に埋まることはなく、これ以上の料金競争はただの消耗戦に陥る可能性がある。東ガスには電力会社のような原子力発電という隠し球もない。 東ガスの希望は、ガス小売全面自由化が電力小売全面自由化より遅れて実施されることだろう。(中略) 電力小売全面自由化を踏み台に国内最強のエネルギー企業にのし上がろうとする東ガスが、皮肉にも電力小売全面自由化によって蹉跌(さてつ)を味わう日が来るかもしれない。 2016年3月号より抜粋
.. 2016年04月05日 08:14 No.1035001
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