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押し出し 鎌田 慧
3月12日。福島原発爆発事故5周年「県民大集会」が、福島県郡山市の陸上競技場でひらかれた。毎年この時期、福島集会に参加すると、寒さのなかを放射能雲に追われ、逃げ惑っていた人たちの、いのちが凍るほどの恐怖をすこしながら体感できる。 5年たって田畑は雑木林と化し、イノシシの大群が闊歩(かっぽ)する。いくつかの地域を転々、いまだ故郷に帰還できない感情を、「浮遊感」と表現した被災者の声が心に残った。古里が地図から拭い去られてしまう、との訴えも切実だった。「公害の原点」足尾鉱毒事件の農民とおなじ棄民である。 わたしは、この郡山集会の壇上から「さようなら原発署名運動」は13日、東京の政府東電へ抗議にむかう「押し出し」を実施すると報告した。 120年前、明治30年代初頭、鉱毒に苦しむ群馬、栃木の渡良瀬川農民が、政府にむかった「大挙上京行動」に倣った運動である。さすがに寒い道を、かつての農民のようにわらじばきで踏破するには無理がある。 鉱毒農民のこころと被ばく住民のこころを「フクシマ連帯キャラバン」の横断幕に結びつけ、数台のクルマで東京を目指す。いわき、水戸、東海村、旧谷中村跡・渡良瀬遊水地を歴訪し、各地で交流集会。東電、経団連、環境省などに抗議し、26日午後1時からの「代々木公園大集会」に合流する。(ルポライター) (3月15日朝刊29面「本音のコラム」より)
.. 2016年03月17日 08:52 No.1027002
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