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中国が初の原発白書 新たな原子力強国宣言 | “もしもの時”に命がけで対策に当たる「原発教育とシステムの | 構築」が不可欠という魂が、見えてこない └──── (ジャーナリスト) 「食品と暮らしの安全」No.323(2016.3.1発行)より転載
福島原発事故の直後から原発建設に慎重だった中国が昨年来、発展途上国を巻き込む形で原発推進に拍車をかけている中で、この1月末に初の「原子力白書」を発表しました。
◎初めて発表された原子力白書 「本物なの?」…。中国の国務院新聞弁公室が1月27日、中国で初めてとなる原子力白書を発表すると、日本の関係者から衝撃の声が上がりました。これまで、中国が原発の全体状況が判るような情報を公表するようなことは、なかったからです。 さらに、発表が国家原子力機関主任・国家国防科学技術工業局長・国家原子力事故緊急調整委員会副主任委員の要職に就く許達哲氏によるものとわかると、「発表は本当だ」と、秘密に覆われていた中国原発のベールが薄れていくような期待を与えました。 これまで中国は、原子力発電の全貌が判るような情報を公開したことがありません。 どこで原発建設を始めたとか、世界最新の設備が完成したとか、発電能力がアジア最大であるとか、国威発揚を狙った発表がほとんどで、原発の運営で最も大事な放射能が漏れたなどの事故情報は、ほとんど表に出てきませんでした。放射能漏れなどの事故情報が外に出るのは、香港でのモリタリングで発覚するパターンだったのです。 中国が、世界で30番目の原子力発電国となったのは、1995年に泰山原子力発電所1号基(32万kW)が商業運転を開始したとき。 少し遅いように思われますが、中国の原子力開発は、世界で有数の歴史があります。 軍事利用では、1964年に核実験を成功させた核保有国です。原子炉の研究は1973年にスタートさせ、1985年に商業炉を建設し、1991年には試運転にこぎつけ、1995年に泰山原子力発電所の商業運転を始めました。 この商業運転を皮切りに、原発を「段階的に建設する」方針を掲げ、2000年に入ると、「積極的に発展させる」と方針を転換、さらに2009年には「強力に発展させる」と政策を格上げし、原発大増設に乗り出しました。 ところが2011年の福島原発事故で原発建設をいったん凍結しました。中国の原発技術はフランス、日本、ロシア、米国と多岐にわたり、技術思想が統一されていないなど、安全面が危惧されたからです。
◎「原子力強国」を宣言 中国の原発は国産を自称していても、基本設計や、最も重要な圧力容器、蒸気発生器などは、フランスのアルバ、ロシアのアトムネフチ、東芝・米ウエスチングハウス、カナダのCANDUなどと外国製です。 しかも、その技術をベースに開発した、別々の原子炉技術の良いとこ取りをした原子炉を開発。これを純国産として、力を入れていたのです。 そうした問題の見直しを経て建設が再開されて、2015年10月までに27基、2550万kWの原子炉が稼働。さらに、建設中の原子炉は25基、2751万kWと、原子力発電大国になっています。 これでも、世界第2位となった中国経済の規模とエネルギー消費量から見れば、電力の供給力は十分でなく、原発の大増設が必要だと言います。 原子力白書によると、2020年までに原発を5800万kWにまで拡大し、2030年には、世界最大の「原子力強国」になると宣言しています。
.. 2016年03月09日 10:00 No.1023002
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