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不動産取得 増加続く 震災5年故郷戻れぬまま 15年末 本紙調査
東京電力福島第一原発事故で住まいを追われた福島県の避難住民が、2011年3月の事故後、政府の制度を利用し県内や首都圏などに新たに土地や住宅を買って移住するケースが、毎年増え続けていることが本紙の独自調査で分かった。累計の移住件数は、15年末現在で約7000件。元の住まいに戻れる見通しが立たず、避難先などで生活再建を図ろうとしている実態が浮かんだ。(小倉貞俊) 移住しても、住民票はそのままにしている避難住民が多いため、どれくらいの人が移住したのか実態はつかみにくい。本紙は、避難指示区域の住民が移住先で不動産を買うと不動産取得税が軽減される特例がある点に着目。福島県のほか、避難者の多い11都道県に適用件数を聞き取りし、主な状況を調べた。 その結果、11年度末では66件だったが、12年度末には累計で745件に増え、13年度末は2190件、14年度末には4791件にまで増えた。15年度は昨年末時点ながら、6909件にまで増えた。このほか、他の府県での制度の適用例や特例を使わないケースもあるとみられる。 (中略) 5年近い避難の中で、新たな仕事や通学の関係から、避難先に根づき、生活再建しようとする住民も多い。 福島県の担当者は「避難先での基盤が固まってきた一方、故郷に戻ろうにも生活の厳しさがある。事故後5年を迎え、帰る、帰らないの判断をする時期に来ており、今後も移住が増えていくのでは」と分析している。 大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授(環境政策論)は「元通りの暮らしを期待して故郷に戻りたい住民、人口減を何とか食い止めたい避難元の自治体、避難者の数を少しでも減らしたい政府、と三者で思惑にずれがある。避難者のニーズにそったきめ細かい施策が必要だ」と強調している。 (1月31日1面より抜粋)
.. 2016年02月03日 08:35 No.1011001
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